A Strong Jobs Report Shows How the U.S. Economy Has Learned to Live with the Coronavirus
雇用統計で強い数値が示された。米国経済は新型コロナに打ち克つ術を習得した!
Despite the Omicron wave, employers have been hiring across the economy, and more Americans are returning to the labor force.
オミクロン株の感染拡大にもかかわらず、雇用は幅広い業種で増えています。多くのアメリカ人が職場に復帰できているようです。
By John Cassidy March 4, 2022
米国で新型コロナの感染拡大がはじまってから2年が経とうとしています。企業活動に制約がかかり、工場や学校も閉鎖され米国経済は前例のない規模の影響を受けました。米国経済は、ようやく新型コロナウイルスを克服して復活して活発に動き出したようです。金曜日(3/5)に発表された雇用統計によると、2月は季節調整済みで70万人近く雇用者数(NFP)が増加していました。失業率は3.8%まで低下しました。これは、パンデミック発生以降で最低の水準でした。オミクロン株の感染が収束しつつあったので、多くのエコノミストが雇用統計の数値は悪くないだろうと予測していました。発表された数値は、市場予想をはるかに上回るものでした。雇用は幅広い業種で増えており、労働力人口も30万人以上増加しています。多くのアメリカ人が職場に復帰できているようです。
雇用統計の数値は、月ごとの変動がかなり大きいということに留意する必要があります。とはいえ、2月の雇用統計の数値は、間違いなく米国経済の持続的な強さを示すものでした。ちなみに、12月と1月の雇用統計の数値は上方修正されています。修正後の数値は、この3ヶ月で175万人近い雇用が創出されたことを示しています。毎月60万人弱の雇用が増えているわけで、パンデミックが始まる前の約3倍のペースで雇用が増えているのです。11月以降、労働市場全体の力強さを示す指標とされている就業率(employment-to-population ratio)は、0.6ポイント上昇し59.9%となり、パンデミックが始まって以降で最高の数字となりました。その数値はオミクロン株の感染が全国で広がっていた時期のものだけに、非常に明るい兆しだと言えます。(雇用者数の動向を把握する上で NFP を外すことはできませんが、遡及修正の大きさなどを踏まえると、NFPに過度に依存することは避けなければなりません。そのため、補完的に就業率を用いることが有用です。)
直近で雇用者数が増えている業種は、旅行業、レジャー産業、娯楽産業などです。新型コロナの影響を最も大きく受けたセクターで雇用者数の増加が顕著です。2月だけで、バーやレストランで12万4千人の雇用者数が増えました。過去3ヶ月で30万人以上も雇用者数が増加しています。雇用の力強さが、他の業種にも広がりつつあります。2月の雇用者数の増加は、製造業で3万6,000人、小売業で3万7,000人、建設業で6万人、医療関係で6万4,000人でした。派遣従業員、経営コンサルティング、技術者などを含む幅広く定義されている「専門・ビジネスサービス」部門では9万5,000人増えました。これはかなり驚異的な数字です。
雇用者数の増加の詳細を見てみると、6ヵ月以上仕事を持たない人の数が減り続けていることが分かります。これは、とても良い兆候であると言えます。長期失業者は、失業期間が長くなればなるほど再就職の可能性が低くなります。それゆえ、景気後退の影響を最も受けやすいのです。新型コロナのパンデミックが始まった年、長期失業者数は400万人以上に上りました。この数字は、現在では6割ほど減少し、170万人まで減りました。
雇用者数が増加しているとはいえ、労働市場は、新型コロナのパンデミック開始時の未曾有の縮小から完全には回復していません。2020年2月、非農業部門で働く米国人の総数は1億5,250万人でしたが、その2カ月後には1億3,050万人にまで減少していました。それが先月までで1億5,040万人にまで回復しました。その数字は、新型コロナパンデミックによって受けた経済的ダメージの多くが修復されたことを示しています。また、同時に、今後数ヶ月、あるいは数年にわたって雇用者数がさらに増加する余地が十分にあることを示しています。ハーバード大学の経済学者であるジェイソン・ファーマンとウィルソン・パウエル3世の分析によれば、新型コロナのパンデミックが無かった場合の予測と比べると、現時点の雇用者数は350万人ほど少ないそうです。ロシアのウクライナ侵攻が世界の経済に及ぼす影響がどの程度なのかは、現時点では予測不能です。しかし、今回発表された雇用統計の数値が強かったことは、米国経済が大きな勢いをもって年明けを迎えたことを裏付けています。
今回の雇用統計の数値を見て、懸念すべき点がありました。それは、2月の平均時給がほんの僅かしか上昇しなかったことです。それは、賃金の上昇率が非常に高いインフレ率を下回っているわけですから、労働者の実質賃金が少なくなっていることを意味します。この現象が2月だけの一時的なものなのか、あるいは長期的なものなのかは、現時点では判別できません。去年1年間で、平均時給は5.1%上昇しました。多くの産業で企業や団体等が労働者を確保するために賃金を上げざるを得なかったことが原因です。一方、賃金上昇のスピードが鈍化したことは、賃金上昇と物価上昇がらせん (スパイラル) 的に進行する状況には陥っていないことを示唆するものです。そう示唆されたことによって、インフレ・タカ派の危機感も少しは和らいだでしょう。インフレ・タカ派は、インフレを極度に恐れていて、大幅な利上げを要求しています。そんなことをすると、かえって不況が誘発される可能性もありますが、そのリスクもいくぶん減退したのではないでしょうか。
しかし、全体的に見れば、雇用統計の数値は非常にポジティブなものでした。バイデン大統領がそれを賞賛するのは無理もないことです。バイデン大統領は声明を出しました。それは、「本日発表された雇用統計の数値は、ボトムアップ(貧困層支援による下支え)とミドルアウト(中産階級支援による購買活性化)を通じて経済を健全化するという政府の取り組みが機能していることを示すものです。米国では多くの仕事が生み出されています。」というものでした。たしかに、新型コロナウイルスの新たな変異株が今後も現れるか否かは、現時点では見通せません。けれども、オミクロン変異株は、旧来の変異株に比べればやや致死率が低いことが明らかになっています。また、ワクチンを接種することで重症化も防げます。そうしたことが相まって米国経済への影響が軽減されました。未だ新型コロナは収束していません。それでも、ワクチン接種推進や検査体制拡充やリモートワーク推進などの新型コロナ対策が進んだことと、2020年と2021年に連邦政府が大規模な財政支援策を実施したことで、経済は底固く成長しました。新型コロナ禍の2年間で、米国経済の逆境にも打ち克つ力強さを再認識することができました。それは実に心強いことです。
以上
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