ルワンダの著しい経済成長と潜在能力!現地では、コールドチェーンの構築が続く!虐殺の痕跡はもう無い?

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 2021年3月にルワンダ西部の畑地で、一風変わった小型トラックが果物や野菜を市場まで運び始めました。正面から見ると、まるで戦車のようで、普通のトラックより幅が広く、妙に四角ばっていました。そのトラックの運転席部分は、軽量の合板を組み合わせて作られています。イケアの製品のようにパッキンに詰めた状態で送られてきて、特別な工具を使わずに1日で組み立てることができるのです。そのトラックは、「OX」という名称で、新興国市場向けにイギリスで開発されたものです。OXは会社の名前にもなっています。通常のピックアップトラックと比べると、約半分の重量ですが、積載量は2倍です。トラックの運転席部分の底部が斜めに前方に切り上っているので、悪路でも急な坂道でも底部がタイヤより先に地面に接することはありません。また、深さ35インチ(88センチ)までの水深なら渡河することができます。ルワンダの未舗装の轍の多い道を行くには、そうした仕様は非常に有用です。

 OX社のルワンダ担当部長のフランシーン・ウワマホロ(Francine Uwamahoro)は、オレンジ色に染めた短髪の女性のルイーズ・ウムトニ(Louise Umutoni)を私に紹介してくれました。その会社で一番の腕利きのドライバーだそうです。ウムトニは言いました、「新規のお客さんは私を見てみんな驚きますよ。トラックの運転手が女性だとは思わないようです。」と。彼女は私をトラックに乗せて、農家を回ってくれました。ルワンダの道路は、悪路ばかりです。骨に響くほどです。ドライバーの何人かはそうした悪路を称する言葉として「アフリカン・マッサージ」という語を使っていました。ウムトニは、運転しながら、携帯電話で顧客からの問い合わせに対応していました。OXトラックへの需要は非常に旺盛で、現在は購入希望者の10人中8人は断らざるを得ない状況です。

 ジャガー・ランドローバー(Jaguar Land Rover)からOX社に転職してきたグローバル担当部長のサイモン・デイビスが私に言ったのですが、同社がウガンダで好調なのは、トラックのデザインの斬新さだけが理由ではないそうです。むしろ、販売好調の秘訣は、同社のビジネスモデルにあるそうです。トラックを乗り合いバスのような形で使ってもらうようにしたのが成功の秘訣のようです。ルワンダには、トラックを買えるような潜在顧客はほとんどいません。しかし、OX社が走らせるトラックのスペースを借りることができる企業は少なくありません。デイビスは言いました、「最初に作ったビジネスモデルは、1台のトラックで1日50ドル程度の収入というのが前提でした。これまでの最高の収入は、どれくらいか?トラック1台で1日に220ドルを稼いだこともあります。」と。

 私がウムトニのトラックに同乗した日の朝一番の顧客は、青バナナを何かごも持って道端で待っていた1人の女性でした。そこから一番近い街まで運んでほしいということでした。といっても12マイル(19キロ)先でした。その女性によると、OXを使うコストは自転車を持つ男性と比べれば高いものの、より多くの農産物をより早く市場に届けることで収入が増えるそうです。それでコスト増を余裕でカバーできるそうです。彼女がOXに対して持っている唯一の不満は、電話をしてもトラックに空きスペースが十分に無い時があることです。彼女はコンゴの業者に農産物を販売し、さらにビジネスを拡大したいと考えていますが、まずは輸送手段を確保する必要があるのです。

 最初のOX社のトラックがルワンダでサービスを開始した頃、矢継ぎ早に同社は次の取り組みについて考え始めました。そして、ウムトニのような現場のドライバーからフィードバックが得られることを期待していました。ウトムニが提案したのは、トラックの視認性の向上でした。ルワンダの田舎では、道端がにぎやかです。山ヤギが草を食み、多くの女性が果物や野菜を売ったり、膨らませたコンドームをバナナの葉で包んだサッカーボールを蹴って子供たちが走り回っています。デイビスによると、OXのトラックの新型はまだ試作品の段階ですが、さまざまな機能が改善されるそうです。重要なのは、新型となるOX2.0は電気自動車であるということです。先代はディーゼル車でした。オプションで太陽光発電で稼働する冷凍装置を搭載することもできます。イノセント・ムワリムやセルチュク・タナタルが指摘していた「コールドチェーンの運用コストを下げたい」というニーズにも応えられるようになっています。なんと、OXの新型トラックは、第一世代のディーゼル車の半分以下のコストで駆動させることができるのです。

 タナタルは私に言いました、「私はコールドチェーンを構築するのをあきらめていました。しかし、オペレーティングコストを削減できるテクノロジーがいくつも出てきました。それによって、これまでとは違う展開になると思います。」と。タナタルの考えですが、ACESの存在意義は、ルワンダの農業協同組合や起業家や技術研修生に、そのようなイノベーションを紹介する場を提供することにもあります。キガリで開催されたACESのオープンデーには、OX社のトラックも展示されていました。一番目立つ場所に置かれていました。