Comment October 18, 2021 Issue
Another Winter of COVID
新型コロナの2度目の冬
Nationwide, the Delta wave is waning, but what do the coming months hold?
全米でデルタ変異株の勢いは弱まっています。今年の冬の新型コロナの感染はどのように推移するのでしょうか?
By Dhruv Khullar October 10, 2021
1.新型コロナ 今冬の見通しは?
米国での新型コロナのパンデミックは、現時点では下火になりつつあるように見えます。9月の初めの頃と比べると、1日当たりの感染者数はほぼ3分の1にまで減少しましたし、入院患者数も4分の1以下まで減少しました。新型コロナによる死亡者数(通常、感染者数の増減と数週間のタイムラグがある)も現在では減少に転じています。とはいえ、現在でも感染者数が減っていない地域も一部にはあるようです。アラスカ州はワクチンを2回接種した者の割合が50%程度と高くないのですが、病床は逼迫しており、医師も総出で対応に当たらなければならない状況に陥っています。しかし、全国的に見れば、デルタ変異株の感染拡大の勢いは弱まりつつあります。そうした状況ですので、現時点で問題となるのは、今年の冬に新型コロナの感染状況はどのようになるかということです。
楽観的な見通しをしたくなるような理由がいくつもあります。現在、米国の成人に限ると、1回以上新型コロナのワクチンを接種した者の割合は78%に達しています。最近、様々なワクチン接種義務化の措置がとられていますので、その割合はもっと高くなっていくでしょう。また、現在、重症化しやすい脆弱な者に対しての3回目接種が大々的に行われていますす。また、ハロウィーンの頃までには、ファイザー社と独ビオンテック社が開発したワクチンの5歳~11歳の子供への使用が承認される見通しです。今月(10月)初めにメルク社が発表したのですが、開発した抗ウイルス薬モルヌピラビルを軽症または中症の新型コロナ感染者に投与すると、入院または死亡する確率がほぼ半減するとのことでした。モルヌピラビルは、モノクローナル抗体薬のように注射や点滴ではなく、飲み薬の形で経口投与されます。経口投与という点は非常に画期的です。それによって、新型コロナへの対応方法に劇的な変化がもたらされるでしょう。経口投与ということは、患者はわざわざ病院に行かなくても良いということを意味します。医療施設のひっ迫感は緩和されるはずです。一方、学校や職場をより安全に再開するのに役立つ迅速抗原検査キットがまもなく市場に投入される予定です。これらのことを考慮に入れると、既に米国人の少なくとも3分の1は新型コロナウイルスに感染し、ある程度の自然免疫を獲得していると推測されますから、感染の再拡大は無いのではないかという楽観的な見通しを立てても良いのではないでしょうか。
しかし、一方で悲観的な見通しが無いわけではありません。米国のワクチン接種率は西側先進国の中では最も低く、多くの発展途上国よりも低いレベルです。ウルグアイやカンボジアやモンゴルなどよりも低いのです。残念ながら、米国ではワクチン陰謀論が根強く蔓延っています。先週の月曜日(10月11日)、ワクチン接種義務化に反対する大規模なデモがニューヨーク市で行われました。カイザーファミリー財団(主に医療政策に関する調査・提言を行っている慈善団体)によると、全米の成人の6人に1人はワクチン接種義務化に断固として反対しています。新型コロナワクチンの若年者への使用が承認された直後でも、自分の子供にワクチンを接種したいと答えた親は3分の1に過ぎず、4分の1は絶対に接種しないと答えていました。英国では、65歳以上の人の97%がワクチンを2回以上接種しています。英国でもデルタ変異株の感染が拡がり、1日当たりの新規感染者数は過去最大時の80%に迫りました。しかし、1日当たりの新型コロナ関連死亡者数は最大時の11%に留めることが出来ていました。それに対して、米国の65歳以上の人の2回以上接種率は84%で英国より劣っています。その差がそのまま如実に感染者数と死亡者数に反映してしまっています。米国の直近の1日当たりの感染者数と死亡者数はいずれも昨年冬の時点の約3分の2のレベルです。ブラウン大学公衆衛生学部の学部長アシス・ジャーは次のように述べています。「米国の今年の冬の新型コロナ感染状況はどうなるでしょうか?去年の冬と同じくらい悲惨な状況に陥るのでしょうか?私は、去年のようにはならないだろうと確信しています。しかし、デルタ変異株については注意が必要です。冷静に考えれば分かることですが、ワクチン接種をしていない人はデルタ変異株にとっては格好の餌食です。デルタ変異株はそういう人を容易に見つけ出し、体内に入り込み蹂躙するでしょう。米国に住んでいて、高齢で、ワクチン接種を受けていない人にとっては、今年の冬は非常に悲惨なものとなる可能性があります。」