ワクチンだけでコロナ制御は無理!抗ウイルス薬、免疫調整剤が待たれる

結び パンデミック終息は可能である。かつての結核やHIVのように。

いろいろな新しい治療法が効果を生み出し始めているとしたら、どのようにしてそれを知ることができるのでしょうか。疫学者は、疾病の怖さの度合いを測って定量化するために、致死率を計算します。それは、病気にかかった後、その病気で死ぬ人の割合を表す数値です。致死率は、病気の蔓延をどの程度懸念すべきか、あるいは、それを阻止するためにどの程度積極的に行動すべきかを決定するために重要です。コロナウイルスの致死率を特定するのは困難でした。なぜなら、感染者数がはっきりしないからです(米疾病対策予防センターの最近のデータは、実際の感染者数は確認されている数より何倍も多い可能性があることを示唆しています。ということは、ウイルスは私たちが考えいているよりも感染力が高く、致死率は低いのかもしれません)。それでも、致死率は、正確に測れようが測れまいが、開発中の沢山の治療法のおかげで下がっていくでしょう。致死率が十分に下がれば、パンデミックに対する警戒措置も間違いなく解除することが出来るでしょう。
 つい最近、私はマサチューセッツ総合病院の感染症専門医のラジエシ・ガンジーと話しました。ガンジーはHIV医学協会の次期会長であり、数十年間HIV患者を治療してきました(以前は、HIV患者は免疫系の働きが弱くなるめ、結核を発症する人が多かった)。彼は現在、COVID -19の治療ガイドラインを作成する米国立衛生研空所の専門家委員会に参加しています。「当初、私たちにできることは何もありませんでした。私たちは人々がゆっくりと死んでいくのをただ見ているだけでした。」と、彼はエイズが出現したときのことを回想します。エイズは、現在ではほぼ封じ込め出来ている感染症です。結核を封じ込めた時とほぼ同じモデルです。HIVに対する特効薬となるワクチンは存在していません。HIVウイルスは今でも世界中に蔓延しています。しかし、比較的短い期間で、1990年代半ば迄に、多くの異なる治療法を併用することで、その病気の致死率は大きく下がりました。公衆衛生対策と組み合わせることで、それらの治療法が世界をHIVウイルスから救いました。HIVは依然として脅威ですが、制御できないものではありません。
 今回のパンデミックでは、私はしばしば途方に暮れました。沢山の患者を治療し、私は不安と無力感を感じました。自分が感染するのではないかとか、自分の家族に感染させてしまうのではないかとかいう恐怖に襲われたまま、病院でも家でも過ごしました。自分の時間があり疲れ切っていなかった夜に、エイズが流行し始めた最初の数年間のことについて何人かの医師が書いた論文などを読みました。そこに記されていた奮闘、努力、献身には、現在我々がしていることと良く似ていると思い、親しみさえ感じました。そして、同時に勇気を貰いました。医学の着実な進歩が、最終的には恐ろしいHIVウイルスを鎮圧しました。コロナウイルスについても同じことが起こらないわけがありません。ガンジーは言います、「HIVを封じ込めることが出来たのは、たった1つのブレイクスルーによって達成されたわけではありません。小さなことを沢山積み重ねることで1つの偉業を為したのです。」と。

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