San Francisco Postcard September 13, 2021 Issue
Checkpoint Charlie, but for Panda Express
面倒くさっ!パンダエクスプレスでメシ食うだけなのに!いちいちワクチン接種証明書の提示が必要なんかいっ!
A commuter spends a day navigating bureaucracy and presenting papers in San Francisco, the first major American city to require full vaccination for indoor activities.
サンフランシスコ市在勤の一人の男が、レストラン等でワクチン接種証明書の提示が必要となったルールの運用状況をチェックしてみた!全米の主要都市で最初にワクチン接種証明書提示のルールを導入した都市を1日を費やして調査した渾身のレポートです。
By Nathan Heller September 6, 2021
サンフランシスコ市は、何でも最初に取り入れるのが好きです。初めてケーブルカーが導入されたのはサンフランシスコ市でしたし、ビーイン(Be-In:1967年1月14日に米国西海岸で始まった、社会における人間性回復を求める人々の集会)もそうでした。グーグル・グラスでも様々な機能の最初の導入がこの地でされています。ですので、先月(2021年8月)末に、サンフランシスコ市が全米の主要都市の中で初めて、レストラン、バー、クラブ、ジム、劇場に入る際や1,000人以上の集会に参加する際にワクチン接種を義務付け、証明書の提示を必須としたことも不思議なことではありません。デルタ変異株の感染が拡がっていることを受けて、感染拡大防止策としてそのルールが導入されたのです。しかし、ワクチン接種証明を必須としたことで、ワクチン接種していない者は肩身の狭い思いをすることになります。この措置が導入された時点のサンフランシスコ市におけるワクチンを2回以上接種した者の割合は79%でした(市長のロンドン・ブリードは驚異的に数値だと誇っていました)が、ワクチン接種を忌避している者はそれなりの割合で残っており、彼らは新型コロナに感染する脅威に震えるようなことは無いでしょうが、外食も飲酒も娯楽も楽しめず悶々と過ごさなくてはならないのです。ワクチン接種の証明書を必須とするルールはサンフランシスコ市では8月12日の金曜日に発効しました。それに他の都市も続々と追随しています。ニューヨークでは9月13日(火)に同様のルールが導入されます。
ワクチン接種証明書が必須となる生活とは一体どのようなものなのでしょうか?こんな事例がありました。先日、サンフランシスコ市の職場に通っている人が、市役所のそばにある韓国系米国人経営のサムズというダイナーに朝食を摂るために立ち寄りました。彼は店内に入ろうとすると、ウェイターに呼び止められ「ワクチン接種証明書はあり ますか?」と言われました。呼び止められた彼は、突然のことに一瞬気圧されてしまい、ズボンのポケットに入れていた証明書を出すのにちょっと手間取ってしまいました。探し出して何とか提示すると、ウェイターは深く頷いてからようやく彼を店内に入れました。
朝食時にまごついた彼が昼食で向かったのは、チャイナタウンにある四川料理の店でZ&Yという名のレストランでした。香辛料の効いたタンタン麺が目当てでした。そのレストランの入口では、ウエイトレスに2~3人の子供が止められてワクチン接種証明書が有るか聞かれていました(その子たちの母親が「この子は12歳よ。ワクチンを打ってる筈無いでしょ!」と呆れて大声を上げていました)。例の彼はその横で、今度は手際よくワクチン接種証明書を出しました。しかし、ウェイトレスはちらっと見ただけで、証明書の文字など全く確認していませんでした。まるで空港の緩い手荷物検査のような対応でした。例の彼は、夕方にフィルズ・コーヒーに行きました。そこでは注文カウンターでカバンの中からワクチン接種証明書をほじくり出すのに手間取ってしまいました。すると、レジ係の女性は待ちくたびれて、「んー、もう後15分で閉店ですし、他にお客さんはいないので誰も見ていませんから、ワクチン接種証明書をお出しいただかなくても結構ですよ。信用しますから。」と言いました。ちょうど、その時、彼はワクチン接種証明書を見つけ出せました。レジ係の女性は、くそ面倒くさそうに、しかめっ面で証明書を確認し、渋々といった感じで「はいはい、確認しましたよっ。」と言いました。彼女のその時の顔は、自分の医療記録を見た者が最もして欲しくない表情そのものという感じでした。彼は「すんまそん・・・」と答えるしかありませんました。
そのしばらく後のことでしたが、例の彼はノースビーチにある歴史ある古風な建物のカフェ・トリエステにカンノーロ(イタリアのお菓子)でも食べようと思って出かけました。天気の良い日でしたので、屋外のテーブルは空いていませんでした。仕方なく屋内のテーブルに座ることにしました。店内に客は誰もいませんでした。カンノーロを注文しようとしたら、注文係の女から、ワクチン接種証明書だけでなく身分証明書も提示するよう求められました(いや、何で身分証明書が必要なんですかね?ワクチン接種証明書を観光客から盗んだとでも言うんですかね?)。そこで、例の彼はニューヨーク州が発行したデジタルワクチン接種証明書(Excelsior Pass:エクセルシオール・パス)を表示させたスマホの画面を見せました。すると、先ほどの注文係の女は、急にやる気が無くなったのか、いきなり対応するのを止め、エスプレッソマシンでコーヒーを淹れていた若い男の従業員とバトンタッチしました。その従業員はエクセルシオール・パスを覗き込みながら、「何すかこれっ?どこにも日付が入ってませんよね。」と言いました。さらに覗き込みながら、「これ、本当に何なんすかっ?」と言いました。いや、そもそも、せっかく引っぱり出した身分証明書は不要だったんかいっ!
ストーンズタウンというショッピングモールでは、フードコート以外のスペースのテーブルやイスは全て取っ払われていました。フードコートの中にだけテーブルが置かれていました(そうした光景はどこでも見られました。波止場に近いフェリー・ビルディングにはちょっと高級な店が揃ったフードコートがあるのですが、同じような対応をしていて、そこでも喫食出来る場所は制限されていました。しばらくは、おいしいシーフードを食べに行くのを我慢するしかありません)。フードコートでは、テーブルが置かれているエリアはロープで区画されていました。ロープ内に入るには、警備員にワクチン接種証明書を見せる必要がありました。警備員は、急ごしらえで設置されたアクリル樹脂製のブースに詰めていました。そこでワクチン接種証明書を見せて中に入ったのですが、なんだかCheckpoint Charlie(訳者注:チェックポイント・チャーリー。東ベルリンと西ベルリンの境界線上に置かれていた国境検問所)を通過した時と同じ感じがしました。フローズンヨーグルトを食べて、パンダエクスプレス(アメリカ風中華料理を提供するファミリーレストランのチェーン店)を利用したいだけなのに、わざわざ検問を通るなんて面倒くさいことです。あそこに立っていた警備員は、今日もさぞかし沢山のワクチン接種証明書不所持者を追い返したんでしょうね?
その近くのスペースでは、イスが並べられていて、マッサージ屋が何の制限も受けずに営業を続けていました。そこの女性マッサージ師は言いました、「普通に営業してますよ。ワクチン接種証明書の提示なんて不要よ。マッサージが必要な人に施術しないわけにはいかないじやない?」と。室内で飲食する際にワクチン接種証明書が必須とされていますが、官僚的な規則のおかげで飲食するのは非常に面倒くさいものになってしまいました。しかし、実効性というか効果はあるんですかね?マッサージするとなったら、体に触るわけですし、濃厚接触が避けられないわけですが、ワクチン接種証明書も何も求められないってどういうことよっ!
映画館に入る際にはワクチン接種証明書が必須というルールはきちんと守られているのでしょうか?実際に映画館に行って対応を調べてきましたよ。映画館の対応は緩いものでした。”Don’t Breathe 2”(ドント・ブリーズ2。訳者注:20年に1本のホラー映画と評され、2週連続全米No.1、世界興行収入170億円超えを記録した『ドント・ブリーズ』シリーズ最新作)の鑑賞券1枚を購入したのですが、R-15指定の映画だったので身分証明書の提示を求められましたが、他は何も求めらずに暗い劇場内に入ることが出来ました。私の他に観客はほとんど居ませんでした。おそらく、新型コロナのリスクが囁かれる今日この頃ですので、多くの人々が良識ある行動をとったことで、密な空間を作らないという結果に繋がったのでしょう(そんな訳なあるかいっ)。実際、このご時世に劇場内が密になってしまったら、ドント・ブリーズ(息出来ない!)ですからね。
では、アルコールを提供する店はどうなのでしょう?例の彼は、そうした店が建ち並ぶ大通りに繰り出してみました。ラグニタス(全米屈指のクラフトビールのブランド)を注文しました。そこでは女性バーテンダーがワクチン接種証明書をチェックしながらビールの栓を抜きました。彼女は言いました、「全く何のチェックもしない店もあるみたいですよ。でも身分証明書とワクチン接種証明書の両方をチェックする店もあるみたいですよ。」と。例の彼は、ワクチン接種証明書の提示が必須となってから、何か変わったか聞いてみました。彼女は答えました、「実は、ワクチン接種証明書の提示を求めたのはあなたが初めてなんです。ウチの店ではそんなの必要ないのよ。だって、みんな常連さんだから、証明書を見せてもらわなくてもワクチンを接種済みだってことが分かってるのよ。」と♦
以上、和訳でした。
以下に、英文全文を掲載します。