Choco Tacos and Remembrance of Junk Foods Past
チョコタコとジャンクフードの思い出
Perhaps, during these feel-bad times, losing a simple delight feels especially unsettling.
おそらく、新型コロナで辛い時期に、チョコタコを食べるという喜びを失うことはとても辛いことです。
By Susan Orlean August 5, 2022
チョコタコ(Choco Taco:1983-2022)の製造終了が発表されました。このニュースを聞いて、泣き叫んで悲しんだ者は非常に多かったのではないでしょうか。チョコタコは、バニラアイス、ピーナッツ、チョコファッジ、ミルクチョコレートなどがコーンで作られたタコシェルで包まれタコスの形をしたアイスです。製造元のユニリーバ(Unilever)がクロンダイク(Klondike)ブランドの品揃えを簡素化することを決定したため、消滅することとなりました。ユニリーバの発表によれば、サプライチェーン上の問題と前例のない需要の急増のため、いくつかの商品を廃止して製品ライン数を減らし、クランチバー(Krunch Bar)などのクロンダイク・ブランドの他の商品、リースズ・ミニバー(Reese’s Mini Bar)などの製造に資源と労力を集中させるということでした。チョコタコが食べられなくなることに関して、 世間一般の反応は感情的なものが多く、怒りに満ちた否定的なものばかりでした。ユニコーン・ドリーミン・コーン(Unicorn Dreamin’ Cone:クロンダイクブランドのソフトクリーム)が生き残っている世の中で、どうしてチョコタコスは死ななければならなかったのでしょうか。
残念なことに、ジャンクフードの世界は残酷です。ある日、トローリ・ロードキル・グミキャンディ(Trolli Road Kill Gummi Candy)やウォンカ・ウンパス(Wonka Oompas)、アルトイド・サワーズ(Altoid Sours)、ドリトス・グアカモーレ(Doritos Guacamole)を好んで口にしている人は少なくないと思います。そういう人は、ただ食べているわけではなく、特別な感情を抱いて、その製品でなくてはダメだと思って食べているわけです。なのに、ある日突然、何の前触れもなく、製造中止となり、消えてしまうことがあるのです。時には、非常に人気で爆発的に売れている商品であるにもかかわらず、神隠しにあったかのように忽然と消えてしまうものもあります。しかも、それは結構な頻度で発生することで、決して珍しいことではないのです。実際、マッカフリカ(McAfrika)、コカ・コーラ・ブラック(Coca-Cola Blak)、チートス・リップ・バーム(Cheetos lip balm)、オレ・アイダ・ファンキー・フライ(Ore-Ida Funky Fries)がそうでした。時には、食品小売店が昨日まで売ってた商品をいきなり売場から無くしてしまうこともあります。食品小売店は、商品を置く棚のスペースが限られていますから、致し方ない部分もあると思います。特に、トレーダージョーズ(Trader Joe’s)の店では、そうしたことがより頻繁に起こります。そこは、常に新製品を登場させ、同時に他の商品を終売させることで有名です。同社のホームページの廃盤商品情報ページに情報が提供されていて、次のような文言があります。それは、「当社は、限りある店舗スペースをスマートに管理しなければなりません。」というものです。チョコタコスの製造中止を発表してもひるむことのなかったユニリーバとは異なり、トレーダージョーズは、商品の廃盤によってもたらされる顧客の喪失感を理解しています。チリライムマヨネーズ(Chile Lime Mayonnaise)がトレーダージョーズの店舗からなくなることに伴う顧客の喪失感を認識しています。同社のホームページには、廃盤商品に関する要望を受け付けるページ(Discontinued Product Feedback page)があります。そこには記されていました、「当社は、商品の製造中止の決定を軽々しく行うことはなく、十分に吟味して行っています。好みの商品が無くなることが残念でたまらないことであることは十分に理解しています。私たちも、あなたたちと同じで、トレーダー・ジョーズの商品の大ファンですから。」と。
人間の本質として、死すべき運命に抗うということがあります。ですので、何かが無くなると分かると、抵抗したくなるものです。また、本当に無くなれば、とても喪失感を感じてしまうものです。現在のような困難な時代には、好きなジャンクフードを食べるという些細な喜びが失われるだけでも不満が募るものです。ここでは、コストコのコンボピザ(Costco’s Combo Pizza)の事例を紹介したいと思います。それは、超高カロリーのペパロニ、ソーセージ、ピーマン、オニオン、ブラックオリーブが入ったピザで、長年コストコのフードコートの大人気商品でした。しかし、2020年にコストコはメニューのスリム化が必要と判断し、コンボピザをこっそりと墓場送りにしました。コストコのフードコートは年間10億ドルの売上を誇るのですが、以前にも同じようなことをしていて、いくつものメニューが墓場送りになっています。例えば、2018年にはポーランド・ソーセージ(Polish sausage)が永眠しました。代わりに産み落とされたのは、グラノーラ入りアサイーフルーツボウルなど、フードコートらしからぬメニューばかりでした。コンボピザは安らかに眠ることはできませんでした。ソーシャルメディアは怒りで燃え上がりました。レディット(Reddit)には、失望するコメントで埋め尽くされました。「もう我慢できない。」とか「私の人生は終わった。喪失感が半端ない。」とか「夫の大好物だったので残念。夫が悲しんでいる姿を見るのが辛い。5月の夫の誕生日には、コストコのコンボピザを食べると決めていたのに、もう食べられないなんて酷すぎる。私たちにとっては、コンボピザロスは、新型コロナ以上の悲劇です。」というものでした。墓石の下で永眠したコンボピザを掘り出して蘇らせるチャンスがあると信じている者もいます。Tobi Oと名乗る人物がchange.org(オンライン署名収集ができるウェブサイト)にて、「コンボピザをコストコのフードコートに復活させよう(Bring back the COMBO PIZZA to Costco Food Courts)」という署名活動を始めました。その内容は、「肉の旨みと野菜の歯ごたえが絶妙に調和したピザ. . (中略). . コンボピザは、何百万人ものコストコ会員の口の中で、とてつもない味覚の宴を繰り広げてきた。今回の販売中止は. . (中略). . 、悲しいだけでなく、完全に狂気の沙汰である。率直に言って、誤った行動である。」というものでした。最終的に1万2千人以上の署名を集めましたが、コストコの考えを変えることはできませんでした。
ところで、チョコタコはどうなったのでしょうか?チョコタコが消滅するという発表があった時、多くの人が騒ぎたてました。大げさにチョコタコの短い生涯を惜しむ者がたくさんいました。SNS上には、チョコタコのタコシェルの上でかすかに結露して光っている写真等、非常に美しいチョコタコの写真を撮った投稿が数え切れないほどありました。どの投稿も、チョコタコへの愛情に満ち溢れていました。インターネット起業家アレクシス・オハニアン(Alexis Kerry Ohanian:インターネット起業家であり投資家。Redditの共同創設者)が、ユニリーバからチョコタコを買収してそれを復活させようとしているという噂があっという間に広まりました。しかし、オハニアンはTwitterで、「私には、そんなことはできない。ユニリーバはアメリカ企業ではないし、私が影響力を及ぼすことはできない。」と言及しています。 チョコタコの死は偽装ではないかという疑いを持っている人も非常に多かったのですが、チョコタコ自身がクロンダイクの公式ツイッターで偽装ではないと否定せざるを得ませんでした。ツイッターには、「巷で噂が飛び交っているので対処したく存じます。私は、本当に製造中止になりました。もう、騒ぐのは止めて下さい。」と記されていました。しかし、そのツイッターアカウントには、「そのままで待っててね(Stay tuned)」という文言もありました。それは、何を意味しているのでしょうか。ひょっとすると、いずれ復活するということなのでしょうか。タコベルのメキシカンピザが奇跡的に復活した時と同様のことを再現しようとしているのではないでしょうか。メキシカンピザは、レギュラーメニューの平凡なピザだったのですが、製造中止した後に再度メニューに載せたら、無茶苦茶売れたのです。ひょっとして、チョコタコもそれを目指してない?
まあ、チョコタコが蘇るか否かはいずれ明らかになるでしょう。一方、eBayでは、絶滅の危機に陥っているチョコタコの最後の1個を、わずか6,942ドルで購入することができます。売り主は、「本当に希少な商品を手に入れませんか。」と商品説明欄に記していました。また、「チョコタコが無くなって、本当に生きているのが辛い時代になった 。」とも記していました。♦
以上
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