本日翻訳し紹介するのは、the New Yorker の web版にのみ掲載のJohn Cassidyのコラムです。英題は”Don’t Panic Over One Weaker-Than-Expected Jobs Report”(雇用統計が市場予想を大幅に下回ってもパニックに陥る必要はない)です。
5月7日(金)に米国の4月の雇用統計(非農業部門雇用者数)が発表されました。雇用者数の増は26.6万人で、市場コンセンサスの100万人を大きく下回りました。雇用者増が少ない、つまり経済状況が悪いという指標でしたので、ウォール街ではバイデン政権はテーパリング(量的緩和策による金融資産の買い入れ額を順次減らしていくこと)を先延ばしするだろうという空気が支配的となり、その日はダウもナスダックも大きく上昇しました。(残念ながら、週明け5月10日(月)以降は暴落している様で、私もかなりの含み損が出ています・・・)
毎月、いろんな経済指標が発表されるわけですが、雇用統計はブレが大きく、景気動向を正しく示さないことが多いので、投資家が投資スタンスを決めたり、政府の政策立案時にあまり重視すべきでないというのが主旨でした。
非常に長い文章ですので、最後に和訳全文を掲載しますが、先に要旨のみ記します。要旨は次のとおりです
要旨
- 4月の雇用統計の数字は非常に悪かったのですが、実際には、米国の景気は力強い回復を続けている。
ワクチン接種も順調に進み、感染者、死亡者も急激に減りつつあります。規制も解除されつつある。 - 雇用統計の数値で異常に弱い数値が出たが、このことについて留意すべき点が2つ(以下①②)ある。
①雇用者数の増が予想以上に少なかったのは、コロナ対策で失業手当受給者に週300ドルが9月まで上乗せされることが原因である。コロナで失業した人の多くは低賃金の小売業、飲食業の従業員です。そうした人たちは9月までは働くよりも失業保険を貰った方が収入が多いので再就職しない。それで雇用者が増えない。実際、企業経営者の多くは従業員を増やしたくても採用できない状況でした。決して景気が悪くなったわけではない。
②単月の雇用統計の数値は景気の状況を正しく反映しないということです。
雇用統計はしばしば後になって大きな修正をされることがありますし、月によって数値の振れ幅が非常に大きい。雇用統計は、3カ月とか数か月間の数値をみると景気の動向をほぼ正確に表すものの、単月でみると景気動向を正しく反映しないことがある。 - 景気判断する際に、あまり雇用統計を重視すべきでは無い。
さまざまな経済指標が様々な部署から毎月発表されている。投資をしている人なら、非農業部門雇用者数、ISM製造業景況指数、鉱工業生産指数、消費者物価指数、小売売上高等の指標は気になるでしょう。そうした指標の中で、非農業部門雇用者数が一番注目度が高く、実際に発表後に市況に与える影響も一番大きいように思います。しかし、景気動向を正しく反映していないことが多いのだから、本来は重要視すべきではないのです。
以下に和訳全文を掲載します。
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