For Ukraine, Far Too Little, Too Late
少ない!遅い!残念な西側諸国のウクライナ支援
The central flaw in the West’s strategy was fearing that preëmptively confronting Putin would give the Russian leader a justification to attack—but it’s now clear that he intended to invade, whatever the U.S. and Europe did.
西側諸国の戦略には大きな欠陥があった。プーチンに侵略を正当化する理由を与えることを恐れて、早期に必要な措置をとることができなかったのだ。しかし、西側諸国が何をしたとしても、彼が侵攻するつもりだったことは今や明らかである。
By Robin Wright February 27, 2022
1945年以降ヨーロッパで最大の地上戦を単独で戦っているウクライナを救うために、各国がようやく結集し始めました。とはいえ、まだその規模は十分とはいえません。キエフが、ロシア軍の戦車に包囲され、空爆を受け砲撃にさらされている中、世界各地にある有名なランドマークがウクライナ国旗の色と同じ青色と黄色でライトアップされ、ウクライナへの連帯を示しました。ヨーロッパでは、パリのエッフェル塔、ローマのコロッセオ、ベルリンのブランデンブルク門、ロンドンのダウニング街10番などがライトアップされ、ロシアへの激しい抗議を示していました。サンティアゴからシドニー、サクラメントまで、東京、台北からテルアビブまで、ウクライナに進撃し野蛮な軍事行動をとったウラジーミル・プーチンに抗議するデモが行われました。新型コロナのパンデミック禍にもかかわらず、膨大な群衆がプラカードを持って通りに押し寄せ、ロシア大使館の前では激しく抗議し、ウクライナ公館前では追悼の意を表していました。ドイツでは10万人規模の抗議デモが行われました。デモ参加者の1人の女性のマスクには「ストップ・プーチン」と書かれていました。
世界各国の政府は、ロシアを止めるためにもっと行動すべきであるという圧力を感じたことでしょう。また、行動しなければ政府への批判が高まってしまうと懸念しているでしょう。ジョージアでは、世界各国が足並みを揃えてプーチンへの制裁に動いている中で制裁を拒否したイラクリ・ガリバシヴィリ首相の辞任を求める声が高まっています。トビリシの国会前に数千人が集まり、非常に激しい抗議デモが行われました。怒りの矛先は、アメリカのウォッカ市場にまで及び、多くのバーでロシア産のウォッカが棚から外されました。オハイオ州とニューハンプシャー州の知事は、ウォッカの販売を禁止しました。「サタデーナイトライブ」(米NBCの番組)では、通常とオープニングを変更して、ニューヨークのウクライナ合唱団ドゥムカのメンバーを紹介して始まりました。そして、賛美歌「ウクライナのための祈り」を歌わせました。キャンドルがウクライナの首都の「Kyiv(キエフ)」という文字の形に飾られていました。
ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、完全に包囲されつつある首都から退避することを拒み、毎日ビデオメッセージを送っています。怒りと悲しみを込めて、さらなる軍事支援と具体的な行動を世界に訴えかけています。また、土曜日(2/26)には、EUにウクライナの加盟を早急に承認するよう要請しました。彼は、ワシントン、ニューデリー、ローマ、ロンドン、アンカラ、ワルシャワの指導者たちと会談し、必死に包囲された自国を守ろうとしています。世界各国の反応は徐々に強くなっていますが、プーチンの考えを変えさせ、無慈悲な攻撃をすぐに終わらせるほどではないことは明らかです。週末には、さらに大量のT-72型戦車が国境を越えてウクライナ国内に侵入しています。金曜日(2/25)に、バイデン政権のある高官は、この危機を完全に解決するには長い時間がかかる可能性があることを認めました。その人物は私と一部のマスコミにだけ語りました、「この危機を数日で解決できるとは思いません。数週間、あるいは数カ月でも無理かもしれません。数年かかる可能性さえあります。」と。
ロシアは、日曜日(2/27)にベラルーシとの国境でウクライナと会談することを提案しました。紛争解決の糸口がかすかに見えたように思えました。しかし、プーチンは、同時にNATO加盟国のリーダーたちから攻撃的な発言がなされていることに対抗して、核抑止力部隊を高い警戒態勢に置くよう命じていました。侵略が始まった前夜にゼレンスキー大統領はプーチン大統領に電話をかけて交渉の必要性を訴えようとしていました。しかし、プーチン大統領は電話に出なかったと伝えられています。米国の元政府高官は、プーチン大統領の意図を読み解くのは難しいと言っていました。「個人的には、ロシア人の言うことは全く何も信用できないと思っています。ですので、様子を見るしかないのですが、前向きな兆候だと思います。」と、ジェームズ・クラッパー元国家情報長官は日曜日(2/27)にCNNに出演して語りました。また、彼は、現在のプーチンは非常に動揺しているように見えると言っていました。金曜日(2/25)に、米国務省は戦闘が激化している間は会談に応じないと表明しました。国務省のネッドプライス報道官は記者団に対し、「現在のモスクワは、銃口を突き付けたまま外交交渉をしようとしています。モスクワがロケット弾、迫撃砲、大砲をウクライナの人々に向けている限り、米国が交渉に応じることはありません。ロシアの行動は、真剣に外交交渉をしようとする者のものではありません。」と、述べました。プライス報道官が追加して言及したのは、もしプーチンが本気で外交的解決を考えているのなら、空爆を直ちに中止し、軍隊の撤退を命じ、ロシアに攻撃を止める用意があることを「明確に」示すべきであるということでした。
プーチンがウクライナに侵攻してからの4日間で、米国と欧州各国は新たに数億ドル分の兵器をウクライナに供給すると約束しました。最初に、ドイツが携帯型地対空ミサイル「スティンガー」500発と対戦車火器1000発を速やかに供与すると表明しました。しかし、首都キエフは四方から砲撃を受けており、それらを届けるのは非常に困難となっています。また、それらが届けられたとしても、現在の軍事力の均衡が大きく、あるいは速やかに変化することはないでしょう。ウクライナ軍はロシアに規模でも装備でも圧倒的に劣っています。ウクライナは果敢に抵抗してロシアの初期の侵攻を遅らせたにもかかわらず、モスクワは依然として優位を保っています。米国は、日曜日(2/27)に、ロシアの侵攻によって避難している10万人以上のウクライナ人に対し、5,400万ドルの追加の人道支援を行うと発表しました。これで2014年以降の米国のウクライナに対する人道支援は4億ドル強となりました。4億ドルと言うと巨額に思えますが、ウクライナの人口は4,400万人ですから、ウクライナ人1人当たりにすると10ドルにも満たないのです。
週末には、米国、欧州四カ国、日本、カナダなど経済大国で構成されるG7が、ロシアを国際金融システムから切り離す5つの抜本的な措置を公表しました。それらの措置によって、プーチンが戦時の経済的苦境を緩和するために蓄えてきた外貨準備高(推定6千億ドル以上)を、ロシア中央銀行は取引できないように制限されます。また、ロシアの主要銀行(全てではないが)は、200以上の国や地域の1万1,000の銀行が利用する決済ネットワークシステム「SWIFT」の利用も制限されることになります。ベルギーに本社を置くSWIFTは、金融取引のGmailと称されるほど重要なインフラです。1日におよそ4,200万通のメッセージがやり取りされています。また、G7では、プーチンと側近が国外に保有している資産(ヨット、ジェット機、高級車、豪邸など)を特定してそれを凍結するための国際的なタスクフォースを設置することも決まりました。
土曜日に、バイデン政権のある高官は記者団に語りました、「ロシアは戦時に備えて外貨を貯めこんでいたが、プーチンが自由に引き出せないようにすれば無いも同じです。また、西側の金融機関からルーブルを買えないようにすれば、ロシア中央銀行の経済制裁の影響を緩和する能力は皆無になるでしょう。」と。既に暴落しているルーブルは、買い支えられないのでさらに下落し、ロシア国内で急速にインフレが進んでもロシア中央銀行は何も手を打てないでしょう。その高官は、ロシアはすぐに影響の大きさを痛感するはずであると言っていました。
Ḡ7は、土曜日(2/26)に共同声明を出し、ロシアのウクライナ侵攻は第二次世界大戦以降に定着した国際法や規範に違反するものであると非難しました。また、ロシアの責任を追及し、侵攻を仕掛けたことが戦略的な失敗であったことをプーチンに理解させるべく総力を結集すると宣言していました。SWIFTの利用制限など重い経済制裁に踏み切ったのは、プーチンと対峙しているヨーロッパ諸国が方針を突然の変化させたことが反映しています。そのわずか2日前までは、バイデン大統領は嘆いていました。欧州各国が、ロシアのSWIFTの利用を遮断することに消極的だったからです。元駐ウクライナ米国大使で、現在は”U.S. Institute of Peace”(米国平和研究所)に所属するウィリアム・テイラーは私に言いました、「ロシアに強力な経済制裁を課すことができたのは、米国外交の大きな成果です。G7の全ての国を纏め上げた外交的手腕は、見事としか言いようがありません。」と。
しかし、経済制裁が課されたものの、現地の悲惨な戦況を変えるには遅きに失した感があります。木曜日(2/24)に、バイデン大統領は、経済制裁を課してもロシアに侵攻を思いとどまらせることは不可能であると認識していたと言いました。というのは、経済制裁が効いてくるのには時間がかかるからです。バイデンは言っていました、「経済制裁を課してもプーチンが『経済制裁で苦しい!撤退するぞ!』などと言って音を上げることはないでしょう。」と。新たな制裁でロシアの銀行をSWIFTから切り離すといっても、実は全てのロシアの銀行が切り離されるわけではないのです。また、SWIFTから切り離す銀行を特定したり詳細を詰めたりする必要があるので、即時に切り離されるわけでもないのです。また、天然ガスなどの取引については”carve-outs”(カーブアウト:例外措置)が設けられています。それが設けられたのは、世界のエネルギー市場、特に長年ロシアに依存してきた国も多いヨーロッパのエネルギー市場が被る影響を軽減するためです。とはいえ、制裁の効果はいくぶん弱まってしまいます。経済制裁は、侵略したことを罰するものであって、侵略を抑止する効果はないのです。テイラーは言いました、「経済制裁によってプーチンを翻意させることはできませんし、ロシア軍を撤退させることもできません。経済制裁の効果が出るまでには時間がかかるのです。」と。
今にして思えば、西側諸国がとった戦略には大きな欠陥があったような気がします。本当は、もっと先手先手で行動すべきだったのです。もっと早期にウクライナに高性能兵器を供与すべきでした。また、ロシアの権力者への経済制裁ももっと早期に行うべきでした。しかし、プーチンがウクライナへの侵攻を正当化する理由にしてしまう可能性があったので、そうした措置に踏み切れなかったのでしょう。また、西側諸国は、世界のエネルギー市場を混乱させ、自国経済に悪影響を及ぼす経済制裁の発動は避けたかったのでしょう。現時点で明らかになっていることは、結局、西側諸国がどんな手を打っても、ロシアの指導者は侵略する意図を曲げなかっただろうということです。国防長官とCIA長官を務めたことがあるロバート・ゲイツは、日曜日(2/27)にCNNで「プーチンの行動は常軌を逸している。」と言いました。プーチンは、22年前に権力の座に就いて以降、常に計算高く、常にずる賢く立ち回ってきました。しかし、ゲイツは、今回のプーチンの行動は、これまでと異なって短絡的に見えると言っています。現在、西側諸国はウクライナ支援で一枚岩となって、毅然としてプーチンに立ち向かおうとしています。しかし、西側諸国のリーダーたちの根底には、こうなる前に手を打つべきだったという後悔の念があるのではないでしょうか。世界各地で抗議デモが頻発しています。なぜウクライナへ事前に武器を供与しなかったのかとか、なぜロシアの狂った指導者を止めるために事前に経済制裁をしなかったのかということが問われているのです。各国のリーダーは、為すべきことをしなかったことを責められていることを認識すべきです。今後も為すべきことをしなければ責められるでしょう。
以上
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