3.新型コロナ関連の入院者数は増え、他の疾病の入院患者も増えつつある。
ある一線を超えてしまうと、米国の医療は崩壊してしまうでしょう。そうなると、一番の問題は、患者の行き場が無くなってしまうということです。新型コロナパンデミックの初期には、多くの病院や医療機関が協力して、新型コロナに感染者の収容能力を拡大したため、医療崩壊の瀬戸際までいきましたが、何とか崩壊せずに済みました。しかし、現在は状況が変わっています。多くの病院は既に手一杯になっています。パンデミック発生後の2年で、燃え尽きてしまって離職した医療従事者が大量にいます。全医療機関の4分の1が、深刻な人員不足に陥っています。全米で数千床のベッドが、看護師不足のために空いたままになっています。多くの医療機関が、陽性と判定された従業員でも症状が軽ければそのまま勤務させています。なぜなら、その代わりとなる人がいないからです。ワシントン州でそうした状況に陥っているのは医療機関だけではありません。老人ホームやリハビリセンターの職員も不足しています。ですので、多くの医療機関が、患者を退院させたくても受入先が無いので苦労しています。最近、ニューヨーク市の病院で働く私の友人が言っていたのですが、重篤な心臓発作を起こした患者を数マイルのところにある大きな病院に移送させたのですが、人手が不足しており手間取って4時間もかかったそうです。
悪いことというのは、とかく重なるものです。新型コロナ禍で医療従事者が減少したのに加えて、ここのところ新型コロナ以外の患者が増えているのです。肝臓病や癌や心疾患の患者が続々と救急病院に押し寄せています。新型コロナパンデミックが始まって1年間は、多くの患者が医療機関を受診するのを控えていました。その結果、その間に症状が悪化してしまったという者も少なくないようです。癌がさらに進行した人や、ただの胸痛が進行して心不全になった人や、軽い腎臓病だったのに透析が必要なほどになってしまった人もいるのです。簡単に言うと、新型コロナの感染が収束しない中で、医療機関では、圧倒的に患者が増え、患者の病状はより進行してしまったのに、従業者数は減ってしまっているのです。
私が勤務している救急病院の状況は、ここ数ヶ月の間、ずっと暗澹たるものです。待合室はいつも患者で満杯ですし、咳、熱、息切れなどの症状がある人がほとんどです。気管内挿管用のチューブや輸血用血液など必須の物資さえも不足しています。3日前のことですが、迅速検査キットが足りなくなりました。配送業者を探して他の病院まで取りに行ってもらわなければなりませんでした。要するに、この病院に治療を受けに来てもらっても、治療が受けられない可能性があるということなのです。新型コロナの治療だけでなく、他の全ての診療ができなくなってしまう可能性があるのです。ICUは満杯で埋まってしまっていることが多いですし、脳神経外科医や心臓外科医も手が足りない状況です。この救急病院は、既に破綻しているといえなくもありません。いろんな点で不具合が露見しており、多くの患者に望むような治療を提供できていません。これから先、どのように患者に対処していくべきなのか、私には全く分かりません。