オミクロン変異株って普通の風邪じゃない?いつになったら”ニューノーマル”(新しい日常)が来るのか?

Annals of Inquiry

How Soon Will COVID Be “Normal”?
新型コロナが終息し、間もなくニューノーマルが始まる?

Even as the Omicron wave spikes, some outside experts believe that the time has come for Anthony Fauci and the White House to declare a new phase in the pandemic.
たとえオミクロン株の感染者が急増したとしても、バイデン政権はパンデミック下の生活から通常の生活に戻るべき時が来たと宣するべきだ、と考える疫学者も多い。

By Benjamin Wallace-Wells

January 8, 2022

1.ファウチ(バイデン政権主席医療顧問)が慎重な姿勢を崩さないのには理由がある。

 木曜日(1月6日)バイデン政権と親密な関係にある医療専門家6人がジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(略称JAMA。米国医師会によって年に48回刊行される、国際的な査読制の医学雑誌)に、意見広告を3本出しました(いわゆる、オプ・エドの形です)。1つ目は、新型コロナ対策では新たなアプローチをするべきであるという内容でした。2つ目は、新型コロナの根絶を目指すのではなく共存を目指すべきだという内容でした。3つ目は、新型コロナはもはや単独で追跡するのではなく、インフルエンザなど他の呼吸器系疾患のウイルスと一緒に監視すべきであるという内容でした。つまり、新型コロナは特別なものではなく、普通のインフルエンザと同じように対処すべきだという主張です。これらの オプ・エド は、非常に注目を集めました。というのは、6人はトランプ政権からの移行時にバイデン政権の新型コロナ対策の策定に携わった人たちだからです。ペンシルバニア大学のエゼキエル・エマニュエル、ニューヨーク大学のセリーヌ・ガウンダー、ミネソタ大学のマイケル・オスターホルムは、「新型コロナの根絶を目指すのではなく、共存すべきである。」と主張しています。3人は、非常事態ではない通常の生活に戻る時期が来たと信じているようです。それで、戦時中のような警戒は解くべきであるし、バイデン政権で医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ博士が頻繁に意見を述べて注意を喚起することも終えるべきだと考えていました。

 同じ日の朝、私はファウチ博士とズームで30分ほど会話しました。バイデン政権が新型コロナのパンデミックの現状をどのように捉えているかを理解したかったからです。つい先日、彼がほのめかせていたのですが、彼の認識はJAMAの専門家たちの意見と大差ないようでした。というのは、先週の日曜日(1月2日)のABCテレビでファウチ博士は語っていて、適切な時期が来たら、新型コロナの感染数に焦点を当てているのを、入院者数に焦点を当てるように変えるべきであると主張していました。つまり、感染の拡大を防ぐための取組みではなく、重症者を特定して治療することに医療資源を集中させるべきであると主張していたのです。私は彼に、そうした変更をする時期は、いつ頃であるのかを尋ねました。ファウチ博士は、「明日から変更することを検討しなければならないというような差し迫って状況ではない。」と言いました。しかし、いずれはオミクロン株の感染拡大も収束すると予測されるのですが、過去2度大きく感染が拡大したこととワクチン接種が進んでことによって、ファウチ博士が主張しているように、多くの人に免疫記憶が残ると予想されます。ファウチ博士は言いました、「屋内イベントの中止、経済への影響、旅行業界への影響、学校教育への影響などの大きさを考慮すると、新型コロナの感染状況を注視しながらも、新たな日常に向けた取り組みを考え始めるべきです」と。彼が言っていたのは、患者数が大幅に増えても入院者数が非常に少ないというのが事実であると判明した際には、感染者数ではなく重症者数によって対応策が決められるべきであるということでした。

 新型コロナのパンデミックが発生して以降、ファウチ博士はしばしば対処が非常に難しい状況に直面しています。現在は、毎日平均で1,400人という非常に多い死者が出ている状況なのですが、市井では近い将来には感染者数は減らないものの非常事態は脱するだろうという根拠のない楽観的な見通しが支配的になり始めています。まだ多くの死者が出ているので厳しい措置を取りたいのですが、巷にはそうした楽観的な空気が広がっており、現時点でそうした措置は取りにくい状況に陥っています。ファウチ博士は言いました、「現在、私が直面している状況は非常に複雑で困難なものです。」と。オミクロン株の感染が初めて確認された国である南アフリカでは、感染者数が急激に増えた後に急激に減少しました。米国のオミクロン株感染者数も同じような推移を辿るだろうと楽観的な見通しを持つ者も沢山いるようです。ファウチは言いました、「南アフリカと米国を比較する際に留意すべき点があります。南アフリカと米国では状況が異なる点があるのです。それは、南アフリカでオミクロン株の感染が広がった時と違い、米国でオミクロン株の感染が広がり始めた頃にはデルタ株の感染で入院している者が沢山いたということです。南アフリカとは比べられないほど複雑な状況なのです。」と。

 今週、ファウチ博士はロンドンの状況を参考までに注視していました。彼は、ロンドンの状況は、米国のオミクロン株の今後の推移を推定する際に南アフリカの情勢よりも参考になるだろうと考えていました。12月下旬には、ロンドンの入院患者数は1日に15%ずつ増加していましたが、その後、増加率は劇的に減少していました。「感染者数の増減はノコギリのギザギザの刃の様に急に減っても、再び急に増える可能性もあるのです。ですので、ロンドンのオミクロン株の感染者の増減をもう少しの間注視し続ける必要があるのです。」と彼は言いました。もし、ロンドンの感染者数がピークを越えて減り始めたということが判明した場合には、米国の感染者数の推移は今後どうなるのだろうか。私はそれを彼に聞いてみました。彼は「間違いなく、見通しは楽観的なものになるでしょう。」と言いました。

 要するにファウチ博士は、「新しい日常(ニューノーマル)」を宣言すること対して、JAMAの専門家たちよりも慎重なのです。バイデン政権の新型コロナ対策の顧問という重要なポストに就いているので、慎重にならざるを得ないのでしょう。ファウチ博士は、「まだ未知の部分が多すぎる。」と主張しています。現時点では、ワクチンを接種しておらず、且つ、感染したことも無い者が米国内にどれだけいるのかも分かっていません。また、オミクロン株に感染したら、次の変異株に対してどの程度の免疫力を持つかも分からない状況です。ファウチ博士は、間違いなくさらなる変異株が出現するはずだと考えています。彼が主張していたのですが、呼吸器感染症は様々な種類がありそれぞれに重症度が異なり、今後に出現する変異株の重症度を予測することは非常に難しいのです。彼は言いました、「私には新型コロナ対策を決める責任があります。ですから、適当なことを言ったり、データが十分出揃っていないのに軽々しく予測をすることは許されないのです。私と違って何の責任も無い人たちは、好き勝手なことを言えますし、安易に予測をすることもできるでしょう。それこそ、適当に出した予測が当たればヒーローになれますし、外れたって誰も気に留めませんからね。」と。