Q.4
Q.ロジスティクス以外に強調すべきことはありますか?
A.ロジスティクスの問題や作戦計画のミス以前に、いくつもの問題点がありました。ロシア軍の参謀部に作戦を実行するのに必要な人材が枯渇しているという問題もありました。どんな作戦行動を実施するにしても、参謀部にそれを指揮できる人材が必要となります。ロシア軍には、ロジスティクスを構築するということはどういうことかを理解している人材や、どうやって構築するのかを理解している人材がいなかったのだと思います。そのことが様々な問題を引き起こしたのです。ロシア軍の質的な問題をもう少し詳しく述べたいと思います。ロシア軍は、ウクライナで、年式が古くて壊れかけのトラック等の車両をたくさん使っていました。整備もずさんで、あるいは全く整備されていませんでした。その上、投入されていた兵員がそうした車両の操作や整備の仕方を十分に認識していませんでした。そのため、多くのトラック等の車両が故障し、道端に放置されました。ロシア軍では、それと同様のことがあらゆるところで発生していたのです。例えば、何年も、あるいはもっと以前から、整備がきちんと行われていない兵器類がたくさんあったのです。そうした装備しかない部隊もたくさんあったのです。また、ロシア軍に戦闘態勢支援ユニットが無いことも問題でした。ロシア軍の兵員は兵器の整備の訓練を十分に受けておらず、前線では全く修理できませんでした。戦闘態勢支援ユニットが無いので、故障した車両等を修理して再び走行可能にすることができませんでした。また、故障した車両等を輸送路の維持のために撤去したり、前線から回収して修理可能な場所へ運ぶということも行われなかったのです。
ロシア軍のトラックがたくさん道路脇で走行不能になって放置されている写真や動画を見たことがあると思います。一見しただけでは放置されたトラックに問題があることは分からないのですが、よく見るとエンジン周りから液体が漏れていたり、エンジンが故障していることが分かります。つまり、それらのトラックはおそらく数カ月から数年間も放置されていたのです。ずっと使われていないし、修理されないまま放置されていたのです。トラック等の大型車両は、サスペンションや油圧システムなどの定期的な整備が必須なのです。1990年代半ばに私はドイツに駐留するアメリカ陸軍の装甲部隊にいたのですが、週5日勤務の内の4日は車両格納庫で車両等の整備に費やさなければなりませんでした。
また、ロシア軍を見ていると、戦場に投入した装備類が適切でないという問題もあります。ロシアは最新鋭の戦車T90を輸出しています。また、次世代型戦車のT14アルマータの売り込みも図っています。おそらく、T14アルマータは、最新鋭であらゆる機能を備えていると思われます。しかし、ハリコフ、チェルニーヒウ、キーウ等の前線に投入されたのは、冷戦時代の非近代的な戦車と装甲戦闘車両でした。しかも、いかにも整備の行き届いていないような代物ばかりでした。どうやら、ロシアの軍需産業は、近代的な兵器を自国の陸軍に与えることより、それらを輸出に振り向けることに注力しているようです。