Jay Powell, the Prepster Banker Who Is Standing Up to Trump
トランプに立ち向かうプレップスターの銀行家、ジェイ・パウエル
The seventy-two-year-old Fed chairman put to shame the heads of law firms, universities, and public companies who have caved to the White House.
72 歳の FRB 議長は、ホワイトハウスに屈した法律事務所、大学、上場企業のトップたちを恥じ入らせた。
By John Cassidy January 15, 2026
どう見てもジェローム・パウエル( Jerome Powell )は #Resistance (レジスタンスというハッシュタグ)のメンバーには見えない。痩身で骨張った感じのする、公の場ではややぎこちない感じさえ見せる連邦準備制度理事会( FRB )議長は、典型的な 1950 年代の WASP の銀行家の雰囲気さえある。実際、彼の父方はローマカトリック( Roman Catholic )教徒で、彼の叔父は司祭だった。しかし、それ以外は、パウエルの経歴はイーストコースト・プレップスター( East Coast prepster )の経歴に完全に合致する( prepster とは名門私立高校” Prep School “に通う、あるいは通っていた裕福で洗練された若者のこと)。経歴は、ジョージタウン・プレップ( Georgetown Prep )、プリンストン大( Princeton )、ジョージタウン・ロースクール( Georgetown Law )、デイビス・ポーク法律事務所( the law firm Davis Polk )の順で、最後が投資銀行のディロン・リード( the investment bank Dillon Read )。ディロン・リードでの彼のメンターはニコラス・ブレイディ( Nicholas Brady )である。ブレイディはロナルド・レーガン( Ronald Reagan )とジョージ・H・W・ブッシュ( George H. W. Bush )の下で財務長官を務めた人物である。1990 年にブレイディはパウエルに国内金融政策次官補( an Assistant Secretary for Domestic Finance )の職を与えた。パウエルが政府関連の職に就いたのはこれが初めてであった。しばらくして、パウエルは次官( Under-Secretar )に昇進した。
ジェイの愛称で呼ばれることが多いパウエルは、1993 年に財務省を去った後、ウォール街に戻った。1997 年に防衛事業の売買で巨額の利益を上げていたプライベートエクイティ会社カーライル・グループ( Carlyle Group )に加わった。2005 年に同社を辞め、数年間自ら会社を経営した。最終的に、中道系シンクタンクの超党派政策センター( the Bipartisan Policy Center )に加わった。財政健全化の主張がオバマ政権で財務長官を務めたティモシー・ガイトナー( Timothy Geithner )の目に留まった。パウエルは共和党員であったが、2012 年にオバマ大統領によって FRB 理事に任命され、2018 年にはドナルド・トランプ大統領が議長に昇格させた。後々、トランプは後悔の念に駆られることなるわけだが。その 1 年後、FRB が意に反して金利を引き下げなかったことを受けて、トランプは「我々の最も大きな敵はジェイ・パウエルと習近平国家主席( Chairman Xi )である」とツイートした。
パウエルはトランプが嫌うような名門校出身のエリートであり、両者の間の確執は今に始まったことではない。先週末( 1 月 11 日)、FRB 議長が司法省( the Justice Department )による捜査が開始されたことを明らかにした。パウエルは長年、トランプの皮肉や脅迫を無視してきた。トランプがホワイトハウスに復帰した後、挑発や脅迫が個人に対する侮辱にエスカレートした。また、FRB 議長が高額な FRB 庁舎改修プロジェクトをひどく不適切に管理したとして激しく非難している。昨年、パウエルの元上司でカーライル・グループの共同創業者であるデビッド・ルーベンスタイン( David Rubenstein )は彼を擁護していた。「ジェイはいつでも冷静で謙虚である。自分を批判する者を批判することはない。FRB が直面する課題に対処することに非常に長けている」。
しかし先週の金曜日( 1 月 9 日)、状況が一変した。フォックス・ニュース( Fox News )の元司会者で現在はコロンビア特別区の連邦検事を務める弁護士、ジャニーン・ピロ( Jeanine Pirro )が、FRB に刑事訴追を示唆する大陪審の召喚状を送付したからである。改修プロジェクトとパウエル議長の上院銀行委員会における証言が問題となっている。日曜の
夜( 1 月 11 日)、パウエルは刑事捜査について動画メッセージでアメリカ国民に直接語り掛けた。「この新たな脅迫は、昨年 6 月の私の証言や連邦準備銀行の庁舎の改修に関するものではない。それらは口実である。刑事訴追の脅迫は、連邦準備銀行が大統領の意向に従うのではなく、国民にとって何が有益かを最善に判断して金利を設定していることの結果である」と述べた。また、「公的な奉仕には、時として、脅しに直面しても毅然と立ち向かうことが求められる」と述べ、決して屈しない姿勢を明確にした。
FRB がウェブサイトに掲載したこの声明は、現職の FRB 議長による大統領の発言の否定である。これは前例のないものである。多くの民主党議員が捜査を非難している。政治的な激動が引き起こされた。珍しく共和党議員からも疑問の声が上がった。上院銀行委員会のトム・ティリス( Thom Tillis )上院議員は、召喚状によって「司法省の独立性と信頼性」が疑問視されていると指摘し、5 月に任期満了を迎えるパウエル議長の後任候補を含む、FRB への新たな指名を阻止すると明言した。アラスカ州選出の共和党上院議員リサ・マーカウスキー( Lisa Murkowski )は、ティリスの立場を公に支持し、議会は司法省を調査すべきだと提言した。上院多数党院内総務( the Majority Leader in the upper chamber )のジョン・スーン( John Thune )でさえ、パウエル議長に対する疑惑は「真実であるべきだ」と懸念を表明した。
トランプ政権の財務長官スコット・ベセント( Scott Bessent )も、同じ理由ではないにせよ、懸念を抱いていた。伝えられているところによると、金曜日( 1 月 16 日)の夜に召喚状の存在を知ったベセントは、トランプに電話をかけ、議会で問題が生じるだろうと伝えたという(これは正確な予測だった)。また、パウエルが 5 月以降も FRB 理事として留任する可能性も高まるだろうと伝えた。パウエルの理事としての任期は 2028 年 1 月まであるので、この選択肢を行使することは可能である。パウエルが理事に留任すれば、トランプ大統領が自身の息のかかった理事を任命することが困難になる。
保守的で有名なウォール・ストリート・ジャーナル( the Wall Street Journal )の編集委員会がパウエルに対する刑事訴追を「素人向けの法廷闘争( lawfare for dummies )」と評したわけだが、何の根拠もないわけではない。トランプは召喚状については何も知らないと主張している。フロリダ州の住宅建設会社の創業者で現在は連邦住宅金融局( the Federal Housing Finance Agency )の局長であるビル・パルト( Bill Pulte )も不毛な法廷闘争を仕掛けている。彼はでっち上げの住宅ローン詐欺容疑で FRB 理事のリサ・クック( Risa Cook )を解任するよう扇動した首謀者の 1 人である。トランプと同様にパルトも何も知らないと主張している。トランプはこの容疑を理由にクックを解任した(最高裁は来週この事件を審理する予定となっている)。いずれの件においてもトランプとパルトは関与を否定している
わけだが、ワシントン・ポスト( Washington Post ) 紙の報道がなければ、ちょっとは真実味があったかもしれない。同紙の報道によれば、2 人は先日マール・アー・ラーゴ( Mar-a-Lago )で会食し、パルトはパウエルの顔写真を載せたニセモノの指名手配ポスターを見せていたという(なお、パルトは X への投稿で会食自体を否定している)。
ピロは生け贄の役割を押し付けられたようである。おそらく司法省の誰かが明らかにしたのだが、ピロは召喚状を発行する前に上層部に報告していなかったようである。政権内のある匿名の人物がアクシオス( Axios:アメリカの有力な次世代型デジタルメディア、箇条書き・要点絞った短文が特徴)に語ったところでは、ピロの独断専行だったと主張していた。しかし、彼女はトランプとは何十年間も知り合いであり、ずっと彼がパウエルへの攻撃を続けているのを見てきたはずである。そのことから着想を得て行動に移したわけで、トランプが無関係という見立ては筋が通らない。先週、トランプは司法当局が訴追すべき人物の訴追に十分な速さで動いていないと批判している(ウォール・ストリート ・ジャーナルが報道)。一方、ピロは相変わらずパウエル側を非難していて、FRB は彼女の事務所の情報提供要請に応じなかったと主張している。「彼らが私たちの働きかけに応じていれば、このようなことは何も起こらなかっただろう」と彼女は語った。
あり得る話ではある。さて、大統領として、トランプは FRB の金利政策を批判する自由がある。しかしながら、こうした行動は往々にして逆効果となることが多いのも事実である。また、政権が FRB の政策審議においてより大きな発言権を持つべきだと主張することもできる。実際、1951 年財務省・連邦準備制度協定( the Treasury-Fed Accord of 1951 )以前には、時の政権が影響力を行使していた。この協定は、債務管理(財務省の管轄)と金融政策( FRB の専門分野)を分離した。しかし、FRB は議会の監督と金融市場の監視の下で運営される独立した機関である。FRB の運営方法を変え、自分自身の考えを押し付けるためには、トランプは両方から信任を得る必要がある。しかし、どう考えてもそれは絶対に無理だろう。先日、元 FRB 議長と元ホワイトハウス経済顧問からなる超党派グループが発表した声明で指摘したのだが、パウエルに対する刑事訴追は、制度が脆弱な新興市場であれば決して珍しい出来事ではない。制度が脆弱な新興市場では、金融政策の策定方法に不具合があることが多く、インフレが引き起こされたり、経済に重大な悪影響を及ぼすことも少なくない。いや、そもそもトランプが金利を決めたとして、誰がそれを信頼できるというのか?
権威主義的な側面が目立つ。コスト超過を口実にパウエルを刑事訴追することで、トランプ政権が統治機構と司法制度を軽視していることが改めて明らかになった。パウエルが反撃したことは称賛に値する。先週召喚状を受け取った際、FRB には当たり障りのない声明で対応するという選択肢もあった。つまり、正当な調査には協力する姿勢を示しつつ、その間も業務を粛々と継続するという声明を出して、できるだけ波風が立たないようにすることもできたはずである。しかし、数カ月後に任期満了を迎えるパウエルにとって、それは再び訴追されるリスクを残すことになるし、そうなれば裁判所が起訴を却下してくれることを祈るだけという状況に陥ってしまうだろう。しかし、彼は昨年 5 月にプリンストン大学の卒業式のスピーチで 2025 年度卒業生に語った助言どおりに行動した。「プールの深いところに飛び込め。…リスクを取れ」。
72 歳の FRB 議長が毅然と対応したことで、多くの法律事務所や大学や上場企業のトップの面目は丸つぶれである。彼らはトランプ政権に完全に屈服していた。また、少なくとも経済分野においては、トランプが容易に回避できない制度的制約が依然として存在することが明らかになった。悲しいことに、他の分野では次々と歯止めが踏みにじられている。結果、いくつかの都市ではトランプの移民警察( Trump’s immigration police )が暴れまわっている。こうした暴挙に比べれば、連邦検事による FRB への召喚状発行は取るに足らない問題のように思えるかもしれないが、これは大統領の権力乱用という大きな現象の一部なのである。ジェイ・パウエルは彼なりの方法で、この権力乱用に立ち向かっている。♦
以上
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