知ってた?ジョンソン・エンド・ジョンソンのアメリカでの酷い仕打ち!同社製品で卵巣癌になった者を切り捨て!

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 上院司法委員会のメンバーは、ジョンソン・エンド・ジョンソンの破産手続きについて、「恥ずべきこと(Shameful)」、「弁解の余地がない(indefensible)」、「一般人がアクセスできない複雑な手口(complicated trickery that ordinary people don’t have access to)」等と酷評しています。今年初め、同委員会は超党派による公聴会を開催し、テキサス・ツーステップ(Texas two-step)という手法の抜け道が、消費者責任を回避するためにアメリカの企業が採用する常套手段とならないかということについての議論が為されました。そんなことがまかり通れば、賠償責任を負わねばならないような問題のある製品を抱えている企業が数十億ドルの資産をそのまま温存したまま、この手法を抜け道として利用しかねません。この公聴会で証言した者の中に、キンバリー・ナランホ(Kimberly Naranjo)というシングルマザーがいました。

 幼い頃に両親から虐待を受けたナランホは、養護施設を出たり入ったりしながら、叔母に助けられて育ちました。彼女は、人生が好転するまで、薬物依存症に苦しんでいました。薬物依存から立ち直って15年経った2021年に初めて家を購入しました。そして、ソルトレイク郡保安官事務所で依存症カウンセラーとして新しい仕事を始めようとしたのですが、その際に脇腹に痛みがあるのを感じました。1週間後、彼女はその痛みが中皮腫によるものだと知りました。ナランホはアスベストに曝露した記憶はありませんでした。しかし、20歳の時に、最初の子供を産み、自分の親よりも良い母親になろうと決意し、オムツ交換のたびにジョンソン・エンド・ジョンソンのベビーパウダーを使っていたことを思い出しました。彼女は、さらに6人の子供をもうけたのですが、同様にパウダーを使い続けました。また、ユタ州の暑さの中で汗と体臭を抑えるために、ずっと自分の下着と靴にもベビー パウダーを使用していました。

 彼女は中皮腫のために仕事を辞めざるを得なくなり、住宅ローンも払えなくなり、やがて家も手放さなくてはならなくなりました。そんな中で訴訟を起こせる可能性があることを知って、和解金や医療補償金を受け取れれば、自分の死後の子供の養育費に充てられるかもしれないと考えました。ところが、ジョンソン・エンド・ジョンソンが破産法申請をしたことで、彼女は訴訟を全く進められなくなってしまいました。彼女の他にも中皮腫等を患った女性たちがたくさんいたわけですが、誰も訴訟を起こすことすらできなくなってしまったのです。

 「私の話を聞いてくれて、本当にありがたく思います。」と、ナランホは議会の公聴会に出席した人たちに言いました。「私は、ジョンソン・エンド・ジョンソンも耳を傾けてくれたら良いなと思っていました。しかし、同社の対応は全く酷いもので、全くとりあおうともしないのです。同社は、私や他の何千人もの人たちからの訴えに耳を傾けるべきですし、公正な裁判の場で裁きを受けるべきです。」

 ジョンソン・エンド・ジョンソンの破産を承認したカプラン判事の判決は、米国司法省によって組織されたタルク原告団公式委員会(Official Committee of Talc Claimants)によって控訴されました。この委員会は、連邦破産法第11条の適用を受ける中皮腫と卵巣がんの被害者を代弁するものです。この委員会の弁護団は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの破産手続きを「責任を回避するための”詐欺的行為(shell game)”」と呼んで非難しました。また、今月、米国第3巡回区控訴裁判所は当委員会の異議申し立てを迅速に処理するために審理を行っているところです。

 ジョージア大学ロースクール教授で集団訴訟を研究しているエリザベス・シャンブレー・バーチ(Elizabeth Chamblee Burch)は、アメリカの多くの企業が第3巡回区控訴裁判所の審議の行方を注視していると教えてくれました。彼女は言いました、「私たちが目の当たりにしているのは、企業がただただ係争を早期に終結させようとしている姿です。とにかく全ての州の裁判所と連邦裁判所での訴訟を一気に終わらせようとすることしか考えていないようです。そうして株主を安心させようとしているようです。」と。バーチが指摘していたのですが、多くの企業が戦略的に破産法を申請する方法を模索しているそうです。そうすることで、より少ない費用で、より早く集団訴訟から逃れられるからです。3M社は、軍に納入していた兵士の聴力を保護するはずの耳栓に瑕疵がある可能性があることが判明していて、 退役軍人から数万件の訴訟を提起されていました。広域係属訴訟の審議が3年続いていたので、先日、破産手続きをしようと試みました。バイエル社が、グリホサート(glyphosate:非ホジキンリンパ腫と関連があると原告が主張する化学物質)を含む自社製品ラウンドアップ(Roundup:除草剤)が負う可能性のある膨大な賠償額から逃れるには、破産法申請がより良い方法であると判断する可能性もあります。

 原告団も、固唾を飲んで第3巡回区控訴裁判所の審議の行方を注視しています。2021年の夏に全米黒人女性評議会(National Council of Negro Women)はジョンソン・エンド・ジョンソンを提訴しました。理由は、有色人種のコミュニティに対して虚偽で破壊的な広告をしたことでした。テキサス・ツーステップ(Texas two-step)のため、その訴訟も停止されました。そして、7月にジョンソン・エンド・ジョンソンは手続きをさらに一歩進めました。破産裁判所にミシシッピ州とニューメキシコ州に対する差し止め申請をしました。他の約40州は、消費者保護の観点から同社および同社が破産させた子会社と賠償金交渉を続けているのですが、この2州はあくまで裁判で争う予定でした。もし、破産判事のカプランがジョンソン・エンド・ジョンソンの差し止め請求を認め、2州の裁判を停止すれば、連邦主義の原則は死んでしまいます。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、数十億ドル規模の資産のある大企業でありながら、破産法を悪用して州法や法に基づいた警察権や規制権の執行から逃れようとしているのです。