本日翻訳し紹介するのは The New Yorker の Web 版に 12 月 1 日掲載された John Cassidy のコラムで、タイトルは”What Can Economists Agree on These Days?“(今日の経済学者は何に同意できるか?)となっています。
本日翻訳したコラムは、先日出版された経済学論文集「ロンドン・コンセンサス」についてのものでした。スニペットは、”A new book, “The London Consensus,” offers a framework for rethinking economic policy in a fractured age of inequality, populism, and political crisis.”(新しい論文集「ロンドン・コンセンサス」は、不平等、ポピュリズム、政治的危機の分裂時代に経済政策を再考するための構想を示している)となっています。残念ながら、この論文集の邦訳は現時点では出ていません。
故ジョン・ウィリアムソン( John Williamson )というイギリスの経済学者が 1989 年にワシントン・コンセンサスという提言を出しました。これは、当時は大きな影響力があり、各国の経済政策に反映されました。残念ながら、現在ではワシントン・コンセンサスでは対処不可能な経済的課題が多く、もはや対処しきれないということで、ノーベル経済学賞受賞者を含む多くの経済学者がロンドンに集って議論した。参画者が書いた様々な論文をまとめて新たな提言にまとめた、それがロンドン・コンセンサスです。
ワシントン・コンセンサスは経済成長を最優先しています。貿易障壁を限りなく少なくし、中国・インドなど中進国、後進国がグローバル経済にアクセスできるようにして成長を優先すれば、諸々の問題は自然と解決するという考え方です。1990 年頃はそれでよかったのです。小さい問題はあっただろうが、それよりも果実の方がはるかに大きかったのです。
しかし、その後、アジア金融危機や世界金融恐慌が発生します。ワシントン・コンセンサスを続けているだけでは、さまざまな問題が発生します。もはや対処しきれない。1 つ目は、貧富の差が拡大します。2 つ目は、政治が不安定化します。3 つ目は、富の不平等が大きいと利己的なエリートによる国家の乗っ取りにつながる可能性が生まれます。
3 つ目は、既にどこかの国で起きているような気もします。熊のプーさんに似ていて背が高いだけが取り柄(残念ながら、トランプの方が背が大きいのだが・・・)の人物がトップに上り詰めた国は間違いなく該当します。娘を偽名でハーバード大学に入れて、一族で巨万の富を蓄えています。高市発言を非難している暇があったら、国内の若年層の高失業率、不動産バブルの後始末等、山積する課題に真面目に取り組んで欲しいものです。アメリカもトランプ一族がステーブルコイン等で私腹を肥やしているとして、共和党支持者でさえ怒り始めています。日本はどうなのでしょう。まだそんな事態にはなっていないですよね?
このコラムで感心したことは 2 点です。1 つは、現在の経済学では実証研究の重要性を増しており、より独断的な考え方に固執せず、心理学や政治学といった他分野の知見をより積極的に活用する必要性を認識しているということです。いや、だけどサナエノミクスって、そんな雰囲気はこれぽっちもありません。1990 年代にもてはやされたワシントン・コンセンサスの古い概念を踏襲しているようにしか見えません。ちょっと日本の将来が不安になってきます。
もう 1 つ感心したのは、二極化する現代の世界で経済政策はどうあるべきかということに対して、ロンドン・コンセンサスが有用なヒントを残していることです。政策立案者は検討している政策が社会全体の結束を強固にするのに役立つか、それとも阻害するかを吟味する必要があるとしています。純粋に経済的なアプローチでは経済の問題の解決はできないのです。何かとても的を得ているような気がしました。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧下さい。
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