A Reporter at Large March 15, 2021 Issue
The Rise of Made-in-China Diplomacy
米中貿易摩擦下でも増え続ける中国製品の対米輸出
While political leaders trade threats, the pandemic has made Americans even more reliant on China’s manufacturers.
両国トップが報復措置を繰り返す中、米国ではパンデミックによって中国製品への依存がますます高まっている。
By Peter Hessler March 8, 2021
米アマゾンの出店者の半数以上は中国企業
Amazon.comで、30ドル以下の価格のランニングシューズを検索して、表示されるページを下の方にスクロールしていくと、聞いたことのないブランドの商品が出てきます。誰かの名前か地名に由来していると思われるブランド名(Zocavia, Zocania, Zonkim)や、何か意味のある語を組み合わせたと思われるブランド名(Biacolum, Qansi, NYZNIA)があります。それらの商品の画像を調べて、似ている点などを調べるといろんなことが分かります。Qansiのメンズスニーカーの商品説明欄には、メッシュ生地使用、超軽量、通気性抜群、ランニング用、ウォーキング用、ジム用と記されています。Biacolumのメンズランニングシューズの商品説明欄には、滑り防止加工、ジム用、テニス用、ニットアッパー採用、ウォーキング用、トレーニング用と記されています。2つの商品は全く同じものです。また、Zocaviaメンズランニングシューズもどうやら同じ商品のようで、その商品説明欄には、超軽量、テニス用、ジム・フィットネス用、メッシュ生地使用、滑り防止加工、ウォーキング用と記されています。そうした商品説明に関する表現はアマゾングリッシュと言われていて、独特の形式ですが、簡単で分かりやすい語が多用されています。時として冗長になりがちですが、検索には引っ掛かりやすくなります。要は、意味が通じて検索に引っ掛かれば良いわけで、文法的に厳密な正確さは必要ありません。Zocaviaの商品には「超軽量素材使用で、全く重さを感じられません。」というコピーが付いています。Zocaniaには、「アッパーに新開発素材を採用したことにより、通気性抜群」というコピーが付いていました。
そうした文言の中に決して登場しない単語が1つありました。「中国」という言葉です。eコマースを分析している企業マーケット・パルス社によると、米国のAmazonで年間販売額100万ドル以上の販売業者のほぼ半数は中国に住んでいます。アマゾンの広報担当の1人が最近、そうした数字は不正確だと指摘しましたが、中国の売り手の数を明らかにすることは拒否しました。彼が言及したのは、販売者の大多数はアメリカに住んでいるということだけでした。商品紹介ページで、中国からの販売者は自分の拠点を宣伝することはありません。ZocaviaやZocaniaの商品もどこで製造されたかは言及されていません。もっと詳細を知りたいと思い、米国特許商標庁のウェブサイトを見てみました。そこで登録されている情報を見れば、詳細が分かります。(「Biacolum」というブランド名は、何か意味のある外国語の単語ではありませんでした。)登録商標の詳細を調べたところ、ZocaviaとZocaniaは、セルビアの双子のテニス選手と何らかの関連があるように思えましたが、実際にはいずれも四川省丹陵県小さな村に住む者によって登録されていました。2つのブランド名は、Zonkim、Biacolum、NYZNIAを含む他の数十のブランドとともに、キムゾン・ネットワーク・テクノロジー社(以下、キムゾン社)が登録した商標でした。キムゾン社の本社は成都市のオフィスビルの16階にあります。2020年春のパンデミックの際には、代表が私に言いましたが、アメリカ市場へのマーケティング方法を再検討している最中でした。
4月26日(2020年)、リ・デウェイは、黒のブルートゥースのヘッドホン、黒の長袖Tシャツ、黒のズボン、黒のスニーカーを着用していました。いずれも彼が所有する3つの工場で製造されたものではありません。
彼は共同経営者と2人でキムゾン社を経営しています。まだ30代半ばでしたが、年配者のような落ち着いた身のこなしをしていました。成都市は、他の中国の都市と同様ですが、すでにパンデミックは終息していました。彼は、1週間前からは従業員に職場でマスクの着用を強要するのを止めていました。彼は新型コロナによる経済的損失に対する対応を始めたばかりでした。彼は3月に成都の従業員の3分の1にあたる50人を解雇しました。
リ・デウェイは、トランプ政権の景気刺激策による現金給付が無ければ、状況はもっと悪くなっていただろうと言いました。彼は商品はAmazonで顧客に直接販売していたため、販売実績を詳細に分析することが可能でした。彼は言いました、「私たちは毎日数字をチェックしています。米政府の給付金の小切手の発送が始まってから、すぐに売上が上向きました。」と。それから、2週間後、私がキムゾン社を訪問した時、同社の米国での売上高は2倍に増えていました(それでも以前のレベルよりは僅かに低かった)。彼は言いました、「米政府の景気刺激策の効果による売上増が短期的なものなのか、長期的に続くものなのかは分かりません。」と。
少し前まで、リ・デウェイは共同経営者や何人かの輸出業関連起業家たちと何度も話し合いをしていました。彼らは、2020年6月が分岐点になると判断していました。彼は言いました、「6月までに米国とEUで感染を完全に制御できれば、売上は通常のレベルに戻るでしょう。」と。しかし、輸出関連起業家たちは、米国や他の西側諸国がパンデミックにうまく対処できる可能性は低いと確信していました。彼は、中米間で進行中の政治的対立についても懸念していました。
新型コロナが発生する前、キムゾン社の売上の割合は、米国70%、ヨーロッパ20%、日本10%でした。キムゾン社は中国市場での売上はありませんでした。リ・デウェイと共同経営者にとって、解決策は明白であるように思われました。Zocavia、Zocaniaや他のブランドを米国での売上を減らして、中国での販売を開始するべきだと考えました。リ・デウェイは言いました、「中国ではパンデミックの影響はほとんど残っていません。実際、物流網なども全く問題ありません。」と。キムゾン社では、既に多くのシューズをデザインし直していて、国内向けの販促活動の準備をしていました。目標は、1年以内に中国向けの売上高を全体の3分の1にするということでした。リ・デウェイは、3か月後には、そういった計画が成功するかどうかが分かるだろうと予測していました。