中国の対米輸出急増! コロナ禍も米中貿易摩擦も関係ない

シューズの売上動向分析で米国の状況が分かる

7月の初めに、リ・デウェイと共同経営者は中国国内市場でシューズを販売する計画を断念しました。彼は言いました、「投資がかかり過ぎます。また、国内の競争はあまりにも熾烈ですからね。」と。
 彼はまた、米中間の緊張がキムゾン社の事業に影響を与える可能性は低いと判断していました。トランプ政権の高官が中国のパンデミックの初動対応について非難することが度々あったものの、米国の消費者の行動に変化は起きていませんでした。3か月間で、リスクに対する彼の考えは完全に変わりました。現在、彼が感じているのは、米国のパンデミックへの不適切な対応が彼の会社の売上を押し上げる可能性が高いだろうということです。彼は言いました、「米国では再開していない工場も沢山あります。人々は感染を恐れて買物に行くのを控えていて、ネットで買物したいと思っています。」と。彼の会社のシューズに対するアマゾンでのレビューを見ても、風がどちらに吹いているかが分かります。5月14日、星5つの評価でコメント欄には「仕事で履くために購入。大手ネット小売業の荷物を配達しています。企業名は出せませんが、アム・ア・ジョン(am-a-John)と似た名前です。毎日10時間履いていますが快適です。」と記されていました。
 あるアマゾンの広報担当者に聞いたのですが、パンデミックが始まって以降で、同社は世界中で40万人以上の従業員を新たに雇用しました。上海で、同社のデマーケティング部門で働いている1人の若い中国人女性に会いました。彼女の部署では、この1年でスタッフが倍増しました。アマゾンは従業員に業務に関することを口外する許可を与えていないので、彼女は名前を出さないことを条件に話してくれました。彼女は海外に住んでいましたが中国に帰国しました。シアトルのアマゾンの同僚に中国人の思考方法を説明しなければならないことが度々ありました。彼女は、米国の企業はブランディングを優先しすぎる傾向があると言っていました。彼女は言いました、「米国人は顧客を魅了しようとして、必死にブランドストーリーを考えて作ります。でも、中国では全く逆のやり方でやるべきです。ここでは、最も力を入れて訴求するのは商品自体です。ブランドについて考えるのは後回しです。」と。
 ザック・フランクリンは米国人のコンサルタントで、深セン(センは土偏に川)でアマゾンに出店している多くの企業を知っています。中国のネット小売業者が考えているビジネスを拡大する方法は、少し独特であると彼は言います。彼らが考えている方法は、製品ラインを拡大して新しい市場を開拓したりした上で、同じ商品を同じ市場で異なる商品名でも販売するというやり方です。
 フランクリンは言いました、「彼らは、ネット上で陳列スペースを出来るだけ多く確保して自分の商品の露出を増やしたいと考えています。それが理由で、同じ商品に別の商品名を付けるているのです。彼らは、自分の商品の露出が増やせれば、売上が増やせると考えています。」と。彼が言うには、新しい商品名を付けるには商標の申請が必須であるため、現在、米国特許商標庁に中国企業からの申請が殺到しているとのことでした。
 リ・デウェイは約70の商標を登録していました。それらの商標のいくつかはダラスにある法律事務所が申請手続をしていました。その法律事務所の創設者の1人のハオ・ニーによると、そこでは毎月80~100件の商標登録の申請をしているそうです。ハオ・ニーによれば、中国企業は突飛な感じのする商標名を付けることが多いとのことでした。どうしてかというと、そうした商標名の方が商標庁から早く承認される傾向があるからです。有名で誰もが知っているような商標名と似通った商標名は拒否される可能性が高いのです。ハオ・ニーは言いました、「これまでのところ、私たちが中国企業の商標の登録申請をして商標庁から拒絶されたことは一度もありません。」と。
 ハオ・ニーは、リ・デウェイの多くの商標名の中でも最新の「Pemily12」の申請も行っていました。7月2日、リ・デウェイは自社で新たに構築したウェブサイトを見せてくれました。今回それを作ったのは、アマゾン経由ではなく、消費者にそこから直接購入してもらうことが目的でした。しかし、そのサイトでは商品名や商品説明などはアマゾンに記されていたのと全く同じでしたが、新たにブランドの紹介、ブランド説明のページが増えていました。ブランド紹介では、以下のように記されています。

 Why is Pemily?              
 (どうして、pemilyなの?) 
 This is a combination of pet family      
 (pet と familyを組み合わせたのです)
 Why is it 12?               
 (どうして、12なの?)
 12 = 12 month = 1 year = forever      
 (12は12カ月を表し、12カ月=1年中=永遠 です)
 Why is Pemily12?             
 (どうしてpemily12なの?)
 pemily12 means we will always be a family  
 (pemily12は、私たちはいつもの家族 という意味です)

 パンデミックの初期に、リ・デウェイはグーグル・トレンドを分析していて、多くの米国人が「ペット」という語に関連する商品を検索していることに気づきました。「ペット用の服」「ペットのおもちゃ」「ペットの健康」などでの検索が多かったのです。彼の友人の1人が深センでペット用アクセサリーを製造してました。そこで、リ・デウェイはその友人に製造する商品の種類を増やさせて、ネット販売事業で提携しました。彼らはペット用の服が特に有望であると確信していました。私はリ・デウェイに聞きました。彼はここ数か月で沢山の大きな決定を下してきたが、不安は無かったかということを。彼は肩をすくめて、ストレスは全く無かったという素振りを見せました。彼はただ単純に状況に対応してきただけなのです。彼は言いました、「市場が全てを決定します。私たちが決めることは何もありません。」と。
 米国からの靴の注文は依然として増え続けており、今ではキムゾン社は毎日3,000足を輸出していました。「最近、米国政府が景気支援策として多くの資金を投じているようで、その影響もありますかね。」とリ・デウェイは言いました。
 私はリ・デウェイにそれは勘違いではないかと言いました。というのは、まだ2度目の景気刺激策は実施されていなかったからです。しかし、リ・デウェイは間違いなく米国政府から米国民にお金が届いているはずだと言いました。彼は自社の売上を見れば明白であると言いました。彼の同業者も同じことを言っていました。翌日、コロラド州の田舎にある私の家に住んでる若い女性からメールが届きました。彼女は、私の家族宛にデビットカードが届いたことを知らせてくれました。その額面は4人分で3,400ドルでした。
 それで、私は、この数週間で米国政府が4月に支援金を受け取れなかった人たちにデビットカードを送っていたことを知りました。銀行の口座情報が原因で4月に支援金を受け取れなかった人がかなりいたのです。たしかに、私は4月にはどうして支援金の小切手が届かないのだろうと思っていました。その時は、中国での生活が忙しかったので、特に調べていませんでした。今気づいたのですが、ニュースや新聞を読まなくても、キムゾン社のZocaviaやZocaniaといったブランド名のシューズの売上の推移を見ていれば、米国政府の支援金がいつ支払われたのかを正確に知ることが出来るのです。