Online Gambling Is Changing Sports for the Worse
オンライン賭博はスポーツを悪い方向に変える
Betting should be legal, but pro leagues and major networks are undermining the value of sports in a bid to get in on the action.
賭博は合法であるべきだが、プロリーグや大手テレビ局は賭博に参加しようとしてスポーツの価値を損なっている
By Jay Caspian Kang March 29, 2024
1.スポーツ賭博の合法化とオンライン賭博の普及による関連市場の急拡大
過去 20 年ほど、私は友人のチャド( Chad )と NCAA バスケットボールトーナメントが開催される最初の週末にラスベガスに行っている。ギャンブルに関しては記憶が曖昧なことが多いが、そのトーナメントの最初の週にラスベガスに行かなかったのは 2020 年だけだと思う。その年は新型コロナの影響でトーナメントが中止になったからである。マーチマッドネス( NCAA バスケットボールトーナメントの別名)の時期のラスベガスは、あまり美しい光景ではない。ハーフジップトレーナを着た赤ら顔の中年男性で溢れかえっている光景を思い浮かべて欲しい。揃いも揃ってビールを浴びるほど飲んでいる。笑えることに、彼らなりに健康に気を使っているのだろう。ほとんどがクアーズ・ライトを飲んでいる。1 回戦 32 試合でトーナメントの幕が開く。賭けの始まりである。賭けをしなければいけないわけではないのだが、とにかく誰もが賭けまくる。
今年はラスベガスに賭博に来た客が少なかった。新型コロナ以前は、ベネチアンホテルのスポーツ賭博の賭け窓口には行列ができたものである。いつも 30 〜 45 分は待たされた。以前は窓口係が嫌そうな顔をして賭け金が印字された小さなチケットを渡してくれた。しかし、現在ではそのほとんどが自動キオスク端末に取って代わられている。自動キオスク端末では、窓口係が対応していた時よりも幅広い種類の賭けをすることができる。口頭でやり取りするよりもストレスは少ない。ついつい大金を投じがちになる。キオスク端末は賭博会社によって運営されている。その多くが独自のアプリを持っている。現在では、スポーツ賭博が合法化された 38 州かコロンビア特別区のいずれかに住んでいれば、自宅のソファで寛ぎながらスポーツ賭博をすることができる。わざわざラスベガスに行く必要など無いのかもしれない。
アプリの普及というデジタル化の波によって、スポーツ賭博を取り巻く環境は一変した。以前はラスベガスなどにはノミ屋( bookie )がゴロゴロいた。賭博で身を持ち崩した者たちに高利で金を貸してさらに賭けさせることで稼いでいた。しかし、彼らはアプリに取って代わられた。残念ながらアプリが借金を重ねる者の運命を変えたわけではない。クレジットで賭けることができるので、結局は借金まみれになる。しかし、犯罪組織に資金が流れなくなる。これは良い点である。借金が吸い取られる先はディスカバー( Discover )やアメリカンエキスプレス( American Express )などのカード会社である。予想屋も様変わりした。以前の予想屋は、深夜のテレビ CM で大声でまくし立ててドルフィンズ対ビルズの試合の正しい賭け方を教えると約束し、有料ダイヤルに誘導して情報を提供していた。しかし、今では賭博専門家がたくさんいて、大手テレビ局のスポーツニュースでそれなりの地位を獲得している。中には、本当に説明が巧みな者もいる。チャートを点滅させたり、トレンドライン分析や統計的な分析を披露した後に彼らの予想を教えてくれる。
賭博がクリーンなビジネスになったわけではない。単に、賭博がより資金力があり、より大きな影響力を持つ者たちによってコントロールされるようになっただけである。彼らの影響力は甚大である。だから、より多くの人たちに、スポーツ賭博がこれまでとは異なってクリーンなものになったと思い込ませることができる。
先週、スポーツ賭博に関するトラブルが報じられた。世界で最も有名なベースボールプレーヤーである大谷翔平( Shohei Ohtani )が、通訳の水原一平( Ippei Mizuhara )をめぐる数百万ドル規模のスポーツ賭博スキャンダルに巻き込まれた。月曜日( 3 月 25 日)に大谷は新しい通訳を横にして、「野球や他のスポーツで賭けをしたことは一度も無い。誰かに賭博を代わりにしてもらうよう頼んだこともない。」と語った。大谷はこの事態にショックを受けたと語った。
大谷にとっては意外なことだったのかもしれない。しかし、多くのアメリカ人からすると、スポーツ賭博で捕まる者が出ることはそれほど珍しいことではない。過去 3 年間、賭博関連で捕まるスポーツ選手が続出している。出場停止処分を受けた選手も少なくない。NFL は何人かの選手を賭博行為関連で出場停止処分にした。その中で最も有名なのはカルビン・リドリー( Calvin Ridley )である。彼はメンタルヘルスの問題を発症し、治療に専念するためにチームを離脱している間に NFL の試合で賭博を行っていた。無期限の出場停止処分を課された。昨年夏には、ある大学の野球部監督が賭博好きの友人の 1 人に次の試合の情報を教えたとして告発され、その後解雇された。今月初めには、スポーツ賭博における不正、安全を監視する企業の US インテグリティ( U.S. Integrity )が、テンプル大( Temple University )とアラバマ大バーミンガム校( the University of Alabama at Birmingham )のバスケットボールのゲームに関して不審な賭博行為があったとして警告を発した。スポーツ・イラストレイテッド誌( Sports Illustrated )の報道によると、US インテグリティは以前からテンプル大を監視し続けていたという。なお、テンプル大は「 NCAA の方針に従って」行動するとしており、一切のコメントを差し控えている。