安倍元首相暗殺で暴かれた統一教会の闇!!山上徹也事件で明らかになった統一教会の暗躍!

2.山上徹也という人物の背景

 容疑者は山上徹也。41 歳で、奈良県で一人暮らしをしていた。もともとは裕福な家庭に育ったのだが、幼少期に悲劇に見舞われた。建設会社の役員をしていた父親はアルコール依存症と鬱病に苦しみ、自殺した。兄は小学生の時に癌で片目を失明した。

 山上が 10 歳の時、一人の若い女性が彼の家を訪ねてきた。母親が対応した。その女性が申し出たのは家系図を調べたいということだった。そうすれば先祖にまつわる不幸の原因が明らかにできるという。後に判明するのだが、彼女は文鮮明( Sun Myung Moon:ムン・ソンミョン)の信徒だった。文鮮明は、韓国人で統一教会を創設した人物である。統一教会は、キリスト教のメシアニズム( Christian Messianism )、冷戦時代の反共産主義( Cold War anti-Communism )、出生率向上( pro-natalism )、そして自己陶酔( self-adulation )を融合させた独特の宗教である。当時、統一教会は設立からまだ数十年しか経っていなかったが、既に数万人の信者を抱えていた。彼らは創設者の苗字「ムン」に因んで、「ムーニーズ( Moonies )」と呼ばれる。

 山上の母はすぐに教会の活動に没頭するようになった。多額の献金をした。そのお金が、祖先を、そしてひょっとすると世界を悪の勢力から救ってくれると信じたからである。山上家の莫大な資産は消えてなくなった。建設業を畳み、土地等の不動産も売却し、父親の生命保険金も献金に化けた。家には食べ物がなかった。「家族は崩壊した」と山上は後に書いている。彼は人前に出ないほどに内向的になった。彼のツイッターのアカウント名は” silent hill 333 “だった。高校の卒業アルバムで、将来の夢を聞く質問への回答で「石になりたい」と彼は書いた。※訳者注:silent hill 333 は、コナミが発売したカルト教団をテーマにしたホラーゲームの金字塔である「サイレントヒル」に因んでいると推測されている。

 24 歳の時、山上は工業溶剤を飲んで自殺を図った。病院に入院した。その時韓国にいた母親は、彼に会うために帰国を早めることはなかった。40 日間の統一教会の修練会に留まることを優先したのである。代わりに彼を見舞ったのは弁護士をしていた叔父である。叔父は山上家の状況を憂えた。統一教会の奈良県のトップに連絡を取った。叔父が主張したのは、それまでの山上の母親による献金は(その時点で 70 万ドルに達していたとされている)、強制されたものだったということである。相手は、寄付金の半額を分割で山上家に返還することに同意した。おそらく裁判沙汰になることを恐れたのだろう。

 山上は叔父の行動に感銘を受け、夜間学校に入学した。願書には「詐欺やカルト問題を扱う弁護士になりたい」と書いた。統一教会に身を投じる前の母親のことをほとんど覚えていない妹に宛てたメールの下書きには、「待っててくれ。俺が守るから」と綴った。山上の母親は献金を続けるために借金を重ね、自己破産した。山上の兄は母親に脱会を懇願し続けた。延々と喧嘩を繰り返し、時には殴りつけた。兄は 2015 年に 30 代半ばで自殺した。「私は統一教会も、統一教会に与する日本国民も決して許さない」と山上はツイートした。

 山上は統一教会に関するニュースには丹念に目を通した。ジャーナリストの鈴木エイトのツイートを頻繁にリツイートしていた。鈴木は「やや日刊カルト新聞」という人気ブログの主筆であった。山上は 2020年 に米本和広( Kazuhiro Yonemoto )という男性が運営する同様のブログにコメントを投稿している。「詐欺、収奪、家族を争わせることを奨励し、それを楽しんでいる集団を是認する社会を憎む」と山上は綴った。「私は命をかけて、統一教会に関わるすべての者たちの解放者になる」。また、彼は米本に個人的にこう書き送った。「銃をどうにかして手に入れたい」。銃の購入は不可能であると悟り、自宅で自作を始めるに至った。

 山上の当初の標的は統一教会の指導者だった。しかし、公の場に頻繁に姿を現し、第二次世界大戦以降、日本政界を牛耳ってきた自民党の総裁である安倍に執着するようになった。山上は「安倍は本当の敵ではない。現実世界で最も影響力のある統一教会の支持者の 1 人に過ぎない」と書いている。何十年もの間、自民党安倍派は統一教会信者の票と広範な選挙活動支援に頼ってきた。統一教会信者は頼りになる実働部隊であった。戸別訪問員となり、選挙集会に参加して盛上げ役を務めた。「彼らは街頭でハガキやビラを配ったり、広報車に乗って候補者の名前を連呼していた」とテンプル大学日本校の歴史家ジェフ・キングストン( Jeff Kingston )は語った。「選挙に関しては、日本は本当にアナログな国である」。

 自民党は、統一教会の支援を受け続けてきた。何千人もの元信者が金銭的・精神的虐待の疑いで教会を訴えていた事実を無視していた。文鮮明は性的暴行と洗脳の罪で告発されていた。彼はソウルの女子大学で、性交によって学生を浄化できると説いてスキャンダルを引き起こしていた。絶えずセックスと体液について話していた(なお、統一教会は性的暴行については否定している)。彼の息子の 1 人は、妻の洪蘭淑( Nansook Hong:ホン・ナンスク)からレイプと家庭内暴力の罪で告発された。洪は文一族の住む邸宅から劇的な脱出劇を演じ、すべてを暴露する回顧録「In the Shadow of the Moons(文一族の闇)」を出版した。この宗教は異性間の結婚と出産を中心に据えている。複数の子供がいる家族は妊娠できない夫婦に供え物として子供を提供する。「同性愛は粉々に砕かれなければならない。天の法の世界に埋められ、消滅されなければならない」と文はかつて語っている。上層部は信者たちに、高額な儀式への参加、多額の献金、そして教会への無償の奉仕活動を強制した。これは特に日本において顕著だった。キングストンの言葉を借りれば、日本は統一教会にとって「打出の小槌( cash cow )」であった。

 暗殺の 9 日前、山上は鈴木にツイッターのダイレクトメッセージを送った。「やや日刊カルト新聞のブログをずっと読んでいる。家族に入信者がいるので、統一教会の動向も追っている。鈴木さんの報道には感心している」。山上は、2 千人を収容できる講堂で開催される統一教会のイベントの告知を見つけた。統一教会はパンデミックの影響で大規模な集会を開催できていなかったが、山上は「また集会を始めているのではないかと心配している」と記した。鈴木は「もうすぐ選挙があるので、何らかの活動があるかもしれない。2 千人収容なら、合同結婚式かもしれない。調べてみる」と返信した。

山上は「ありがとう。いつかお会いできるのを楽しみにしている」と返した。