安倍元首相暗殺で暴かれた統一教会の闇!!山上徹也事件で明らかになった統一教会の暗躍!

5.事件が動かした政治

 山上徹也が逮捕された後、検察は彼をテロリストに仕立て上げた。しかし、彼に同情している日本人も少なくない。「山上ガールズ」と呼ばれる女性たちも存在している。彼を日本を救った英雄と称えている。映画監督で元赤軍( Red Army )活動家だった足立正生( Masao Adachi )は” “Revolution+1 ”(邦題:REVOLUTION+1 )という架空の伝記映画を制作した。山上をモデルにした青年が登場する。テレビで安倍首相の姿を見ながら、自作の銃の銃身部分をやすりで削りながら、安倍首相とその一族を呪っている場面がある。何千人もの元信者がソーシャルメディアに書いていたのは、こういうことがいずれ起こると思っていたということである。自分が同じことをしていた可能性もあるという書き込みも多かった。「山上さんには本当に同情する」と、元信者の日本人 T は私に語った。アメリカの統一教会幹部の家庭で育ったテディ・ホース( Teddy Hose )は、「統一教会信者は日本人信者を奴隷のように扱った。亡くなった方がいることは残念ですが、ようやく人々が事態が非常に深刻であることを知ることとなった。それだけがせめてもの救いである」と語った。

 山上のたった一度の犯罪行為は、ある意味、鈴木の何十年もの地道な追及よりも成果が大きかった。それでも鈴木は「計り知れない責任を感じた」と語った。山上が安倍と統一教会の関係を知ったのは、鈴木のブログである。「私は統一教会の問題の傍観者でしかなかったが、当事者に変わった」と鈴木は語った。かつてはそれほど関心を向けられていなかった彼の取材範囲が突如としてニュースで取り上げられるようになった。彼は反統一教会運動のスポークスマンのような存在になった。彼が人々に促したのは、統一教会の犠牲者が感じている計り知れない衝撃と絶望について考えることである。また、山上をテロリスト呼ばわりする言動を繰り返す者たちを批判した。彼は日曜午前の情報ワイドショー番組に出演した。また、著書「自民党の統一教会汚染 追跡 3000 日」がベストセラーとなった。その後、取材ノートと伝記を融合させた「『山上徹也』とは何者だったのか」など数冊の著書を出版した。安倍首相暗殺事件がなかったら「統一教会と政治家の関係が広く知られることはなかっただろう」と彼は主張する。

 エコノミスト誌( The Economist )が指摘したように、山上の「政治的暴力( political violence )」は憂慮すべきほど効果的である。人類学者の山口が語ったのは、安倍はジョン・F・ケネディのように人々の記憶に永遠に残ると思っていたが、全くそうはならなかったということである。代わりに、多くの国民が関心を向けたのは、統一教会と安倍が率いた自民党である。「統一教会は極悪非道の組織と認識されるようになった」と山口は語った。変革は堰を切ったかのように急速に進んだ。暗殺から 1 カ月後、自民党の岸田文雄( Fumio Kishida )首相が政治への信頼を揺るがしたとして国民に謝罪した。彼は自民党所属議員に対し、統一教会とのつながりを明らかにするよう求めた。所属議員のほぼ半数が「選挙支援( election support  )」を統一教会信者に頼っていたと報告した。10 人に 1 人が統一教会に会費を納めていた。岸田は防衛大臣の岸信夫( Nobuo Kishi:安倍首相の実弟)を解任せざるを得なかった。岸も統一教会との関係を認めていたからである。国会は、宗教団体等の不当な寄付勧誘を防止する不当寄附勧誘防止法案を可決した。文部科学省は、高額献金が「甚大な財産的損害( enormous property damage )」を引き起こしたとして、統一教会を解散させ、資産を凍結すべきとして動議を提出した。その後、岸田は統一教会関連の問題と派閥裏金事件を理由に辞任した。数カ月後、自民党は衆院選で過半数を失った。なお、自民党の広報担当者は私の取材を拒んだ。

 政府は統一教会の被害者のためのホットラインを設置し、日本司法支援センターに資金を提供した。安倍首相暗殺事件以降、多くの元信者が衝​​撃的な体験を告白するようになった。その多くは女性で、性的嫌がらせ、辱め、貧困化といった被害を訴えている。「統一教会の被害者は男性よりも女性の方がはるかに多いことはよく知られている」と、元信者たちの代理人を務める東玲子( Reiko Higashi )弁護士は私に語った。

 昨春、東京のケーキ屋で統一教会信者を親に持つ人物、いわゆる宗教 2 世と会った。以前、ビデオ通話で話したことがあった。彼女は、X-メン( X-Men )のストーム( Storm )とセーラームーンを合わせたような漫画のアバターで画面に登場していた。そのアバターとデビル( Devil )というニックネームで、彼女は YouTube チャンネルを運営している。投稿のほとんどは統一教会についての告白動画である。ある動画では、彼女のアバターが森の中にいて、スチームパンク風の帽子をかぶっている。彼女は、2013 年に父親が死に瀕していた時は衝撃だったと語っている。熱心な信者だった母親が父親の預金口座から数千ドルを統一教会に送金したことを知ったからである。アバターがアニメのような大きな目の涙を拭うと、ケタケタと笑いながら翼を広げた悪魔が韓国の統一教会本部に札束を運んだ。

 そのケーキ屋で、デビルは分厚いバインダーに詰められた研究資料や報告書をめくっていた。中には、彼女の母親が長年かけて買い集めた品々の写真もあった。微笑む弥勒菩薩( Maitreya Bodhisattva:現代の世を救済し、未来に安らぎをもたらす存在と信じられている)坐像の写真もあった。韓国美術の至宝であるが、それはレプリカだった。デビルは、母親が使った総額は約 1 億円であると言った。これは山上の母親の額とほぼ同じである。「教会は、献金をしないと地獄に落ちるという不安感につけ込む」と彼女は言う。それでも、彼女は今も教会に所属している母親を気の毒に思っている。10 年ほど前に母親と同居するようになった。「母はいつも私にもう一度信仰を取り戻させようとしている」とデビルは言った。「母が亡くなるまで、私は永遠に自由になれないような気がする」。