安倍元首相暗殺で暴かれた統一教会の闇!!山上徹也事件で明らかになった統一教会の暗躍!

7.事件が残した問いとこれから

 10 月下旬、山上被告の公判が始まる週のことだが、鈴木は東京北西部の自宅から新幹線で奈良へ向かった。裁判所の向かいにある公園には、傍聴席を求めて 700 人以上が列をなした。あまりにも多くの人が傍聴席を求めたため、裁判所は毎日抽選を行った。芝生の上でうろつく多くの元信者が、鈴木を好意的に迎えた。彼は、市内を散策することもあった。春日大社の守り神とされる鹿も見に行き、X に「🫎鹿🦌に襲われた」と書き込んだ。「尻を突かれ、軽傷を負った。…皆さんも気をつけて」。

 法廷は簡素で、淡い色の木材で作られていた。前方には 3 人の裁判官、6 人の陪審員、そして 6 人の予備陪審員がいた。安倍首相の未亡人である昭恵夫人の代理人弁護士が検察側に並んで座っていた。長い髪をゆるくまとめた山上被告は、数人の警察官と弁護士に囲まれていた。彼は殺人罪と銃刀法違反の罪を認めた。「すべて真実である。私がやったことに疑いの余地はない」と法廷で証言した。数日後、検察側は手製の銃を持ち込み、法廷の中央に置いた。陪審員たちは順番に銃を手に取って見た。山上被告が銃を組み立て、発砲したことは明白である。唯一の不確実性は、国が死刑を求めるかどうかであった。それは法廷でどの程度の同情が広がるかにかかっていた。公判は山上の経歴と動機を探る場となった。検察側は彼を冷酷な殺人犯として印象づけようとした。弁護側は彼の悲劇的な過去に焦点を当てた。

 公判は 6 週間続いた。11 月、山上の母親と妹が証言した。身元を隠すためスクリーン越しであった。母親は安倍の家族に謝罪した(彼女は法廷に安倍の幽霊がいたと証言している)。また、自分の息子にも謝った。「母親は山上に直接、『てっちゃん』と呼んで話しかけた」と鈴木は回想する。彼女は依然として統一教会の信者であった。「母親は、自分たちに起こったことすべて、多額の寄付をして家族を貧困に陥れたことさえも自分のせいであると語った。統一教会に責任はないことを強調した」。

 私は、多くの元統一教会員信者を取材したが、心の奥底に統一教会への信仰心が残っている人は少なくなかった。先日、私は S という 59 歳の男性にインタビューした。彼は献金のために借金まみれになった。当時、統一教会に対して損害賠償請求をしていた(後に 8 万 8 千ドルの賠償金を受け取った)。S とその妻が信仰を捨ててから数年が経っていたが、彼には依然として統一教会への忠誠心が残っていた。安倍首相が殺害された時、「私はます最初に統一教会を心配した」と彼は語った。「しかし、山上被告の生い立ちと安倍首相を射殺した動機について詳しく知るにつれて、考え直し始めた。状況を根本的に理解しようと努め始めた」。

 山上被告の妹の証言は、涙を流す傍聴人の数から推し量ると、この裁判の感情の頂点だった。彼女は、母親が徐々に冷たくなり、分別もなくしていった様子を説明した。自分の勤務先まで訪ねてきて金銭を求めるようになったという。「この人はもはや私の母ではなく、母の顔をした信者であった」と彼女は語った。「私は彼女を拒絶できなかった」。ユーチューバーのデビル(私と東京のケーキ屋で会った人物、元信者)は、「裁判の傍聴はまるでテストの答え合わせのようであった。『ああ、そうだった、私もまさにそんな感じだった』という思いが絶え間なく続いた」と語った。

 山上は自らを弁護するために証言台に立った。低い声で、しばしば虚空を見つめていた。ある時、彼は「私は悪い人間ではない」と言った。しかし、彼は統一教会にどっぷりな母親と縁を切ることは不可能であると感じていた。彼は状況を深く憂慮していた。「こんなに長く生きるべきではなかった」と彼は言った。安倍が山上の絶望の受け皿となっていった。

 公判の半ばまで、自民党と統一教会のつながりを示す記録はほとんど出てこなかった。「なぜ安倍が狙われたのかという点については、ほとんど議論されなかった」と鈴木は私に語った。そこを明確にしなければ、山上が死刑判決を受けるのではないかと鈴木は懸念していた。彼はそのような結末を望んでいなかった。そこで彼は山上の弁護士に書簡を送った。安倍と統一教会の関係を示す証拠を時系列で書いた。また、自分を証人として召喚すべきであると伝えた。「安倍は統一教会が犯罪行為を続けるのを助長した。これは無差別殺人事件ではない」と彼は記した。私が鈴木に問うたのは、記者の職務の範疇を越えているのではないかということである。鈴木は問題ないと答えた。事実を明らかにしたいだけであると語った。

 この裁判における重要な事実の 1 つは、2021 年の出来事である。首相としての 2 度めの任期を終えたばかりの頃のことであるが、安倍が統一教会を公然と支持した。統一教会傘下の慈善団体、天宙平和連合( Universal Peace Federation:略号 UPF )がオンライン集会を開催した。韓鶴子は数カ国の指導者に動画で挨拶をしてほしいと頼んでいた。UFP は、大統領職を退いたばかりのドナルド・トランプにも同様の依頼をし、50万ドルを支払った。トランプは、「韓鶴子は平和のために素晴らしい貢献をした素晴らしい人物である」とスピーチした。安倍も韓鶴子を称賛した。「世界中の紛争解決へのたゆまぬ努力に敬意を表したい」と語り、統一教会についても「家族の価値に重点を置いている」として称賛した。山上は安倍が挨拶しているその動画を目にした。短い動画で挨拶は単なる社交辞令でしかなかったのだが、このことで山上は抱いていた統一教会への積年の恨みの矛先を安倍に向けるようになり、やがて安倍を殺さなければならないと確信するようになった。