スウェーデンのコロナ対応を検証!集団免役の早期獲得を目指し、ロックダウン行わず。あれから1年、死者数は?

Dispatch

Sweden’s Pandemic Experiment
スウェーデンのパンデミック実験

When the coronavirus arrived, the country decided not to implement lockdowns or recommend masks. How has it fared?
新型コロナが蔓延し始めた時、スウェーデンはロックダウンを行わず、マスク着用を推奨しないと決めました。結果はどうなった?

By Mallory Pickett April 6, 2021

1.スウェーデン 緩やかなコロナ対応策を採用

2020年3月のある日の午後のことでしたが、看護師のアンジェリカ・ジュラーボは、勤務しているストックホルムの高校の保健室にいると、1人の生徒が頭痛で入ってきました。4児の母親であるジュラーボは、看護師として厳しさと優しさを上手く使い分けて生徒に対応しています。その前月、2020年2月に、COVID-19が欧州全体に広がり始めましたが、スウェーデンの学校は閉鎖されていませんでした。ジュラーボが生徒の体温を測ろうとした時、その生徒は咳をしながら言いました、「すいません、伝えなくてはならないことがあるんです。私のパートナーが新型コロナに感染しているんです。」と。ジュラーボはその生徒にすぐに自宅に帰るように命じました。また、鞄は誰かに届けさせるから、教室へも戻らないよう指示しました。
 その4日後、ジュラーボは熱が出て、激しい頭痛で目が覚めました。彼女は看護師でしたので、本当に重病の人や、耐え難いほどの痛みを抱えている人が、 「死にたい」と言う場面を何度も見てきました。その日の彼女はまさしくそのくらい酷い状態でした。彼女はとても疲弊していて、数日間部屋から出ることができませんでした。数日後の朝のことですが、彼女はお茶を入れてソファに座って、子供たちが学校に行くのを見届けようと思いました。しかし、知らぬ間に寝込んでしまい、子供たちが学校から帰ってきた時の物音で目が覚めました。テーブルに置いていたお茶はすっかり冷たくなっていました。熱が出てから9日後、最後の2日感は熱も頭痛もなったので、彼女は仕事に復帰しました。しかし、復帰して1週間後、再度発熱し頭痛に襲われました。彼女は誰かにウイルスをうつさないようにするため、隔離されました。彼女は、復帰してからの1週間で誰かに感染させてしまったのではないかと心配でした。
 ジュラーボが新型コロナに感染したのは、スウェーデンでパンデミックが始まった頃のことでした。世界各国がロックダウン、夜間外出禁止令、旅行禁止といった手段をとる中、スウェーデンはそうした措置をとりませんでした。レストランや商店、居酒屋、美術館、デイケア施設、小学校は全て閉鎖されませんでした。リモートワークや、旅行を控えたりすることが奨励されていましたが、強制力はありませんでした。マスクの着用は奨励されておらず、実際に着用している人はほとんどいませんでした。家庭内で感染が広がる可能性もありました。2020年3月末までは、最大500人までならパーティー等で集まることも可能でした。スウェーデンのコロナウイルス対策に大きな影響を与えていたのは、スウェーデンで国家疫学官を務めるアンデシュ・テグネルでした。テグネルは1995年にザイールでエボラ出血熱の感染爆発時に活躍し、その後EU(欧州連合)で感染症対応の専門家として勤務した後、2013年にスウェーデンの社会保健省に加わりました。
 スウェーデンの憲法では、政府機関には並外れた独立性が与えられているため、テグネル率いる公衆衛生研究所がコロナウイルス対策を主導していました。また、憲法上、政府には国民に制限を課す権限がほとんどありませんでした。テグネルは、64歳で、背が高く、丸い眼鏡をかけていました。テグネルがしばしば口にしていたのは、ロックダウンの効果は科学的に証明されていないということと、マスク着用の効果を示す証拠は不十分であると言うことでした。彼のそうした考え方は、世界各国の疫学者に共通の科学的知見から著しく逸脱していましたが、しかし、彼は、スウェーデンのコロナ対応こそが正しいと主張していました。また、彼は、他国は疫学者ではなく政治家が主導していることにより誤った対応をしているとも主張していました。スウェーデンと同じ対応をとる国は世界中どこにもありませんでした。アメリカのリベラル派の中には、グレタ・トゥーンバーグを生んだ国(スウェーデン)が非科学的な対応をとっていることにショックを受ける者も少なからずいました。ミネソタ州の右翼団体は、「スウェーデンを見習え」と書いたプラカードを掲げてロックダウンに対する抗議活動を行いました。スウェーデン国内では、テグネルの施策に異を唱える者は多くなく、他国と異なる独特のコロナ対応策は、合理的で現実的な策だと受け止められていました。また、彼は政治的な圧力に屈しなかったことで称賛されていました。ですから、スウェーデンでマスクを着用することは、科学を否定することと同義と捉えられることもありました。
 ジュラーボの同僚や友人にもCOVID-19に感染した人がたくさんいました。彼女は重症でした。しかし、Facebook上の「アンデシュ・テグネル・ファン・クラブ」で私は彼女とやり取りしました。そこには、テグネルの顔が描かれたTシャツ、テグネルをイメージした形のチョコレートや、テグネルの顔と「手を洗ってください」という文字が踊っているポスターなどが購入可能でした。ジュラーボは言いました、「私は、首相や政治家ではなく、保健衛生に詳しい医療専門家が対応を決めるべきだと思います。」と。彼女のようにコロナに感染した人の多くが同様の考えでした。ソフトウェア会社で働くスタファン・フギマーク(53歳)は、イタリア北部へのスキー旅行から戻った後、感染が判明しました。一緒に行った家族全員が感染していました。彼の旧友の1人はスウェーデンのコロナ対応に批判的ですが、ブギマークは肯定的です。ブギマークは言いました、「スウェーデンを外から見ている人たちは、ここで大災害が起こっていると思うかもしれません。でも、実際にはそうではありません。」と。元エステティシャンのビクトリア・エレニアス(47歳)は、パンデミックの初期に感染し、何週間も働けなかったため、エステサロンを畳まざるを得ませんでした。彼女は陽性テストを受けることができませんでしたが、自分がCOVID-19に感染したと確信しています。それにもかかわらず、彼女はテグネルのコロナ対応策を支持しています。というのは、それによってスウェーデンはロックダウンによる景気後退に陥らず、経済的損失を被らずに済んだと考えているからです。彼女は言いました、「最初、私はアンデシュ・テグネルが好きではありませんでした。しかし、彼の対応について詳しく知れば知るほど、時間が経てば経つほど、彼が正しいことが分かってきたんです。」と。
 ジュラーボは現在、ストックホルムの西70マイルにあるエスキルストゥーナにある病院のリハビリセンターでCOVID- 19の症状が長期化した感染者の世話をしています。彼女自身も症状が長期化し倦怠感に苦しんでいます。彼女は私に言いました、「私はこんなに疲れたことは今までありませんでした。朝、アラームが鳴っても、起きれないのです。子供たちを時間通りに学校に行かせなくてはとか考えることも出来ないのです。私は何もやる気がしないのです。」と。それでも、彼女はスウェーデンの公衆衛生研究所のパンデミックへの対応策に肯定的です。彼女は言いました、「公衆衛生研究所の対応策は素晴らしかったと思います。他の国の対応策を見て振り回せれるということが無く、真似したりブレることもありませんでした。」と。また、この冬、彼女は私に次のようなショートメッセージを送ってきました。「米国ではパンデミックが酷い状況のようですね。あなたは大丈夫ですか?」