中国遠洋漁業船団の闇 人身売買、役身折酬、暴行、不法行為が蔓延している!俺、イカを食うの止めるわっ!

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 漁業は世界で最も過酷な仕事の1つである。最近の調査によれば、毎年10万人以上の漁業従事者が命を落としていると推定されている。中国漁船はその中でも最も危険である。中国の人材募集業者は、中国内陸部や貧しい国々の自暴自棄になった男たちをターゲットにすることが多い。「借金があり、家族から疎まれて、軽蔑されたくないなら、スマホの電源を切り、陸から離れて海に出よう」といった内容の文言が中国のオンライン広告には溢れている。裁判の記録や中国の報道機関の調査によると、採用された者の多くは、有利な契約条件を提示されて誘い出されている。しかし、実際には、旅費、職業訓練費、船員資格取得費用、防護服代など様々な名目の費用が差し引かれる。その費用は、時には1カ月分の賃金以上にもなる。採用された船員の多くは、人材派遣会社から借金をすることで、これらの費用を支払っており、役身折酬の様相を呈している。多くの人材派遣会社がパスポートを没収し、離職すると罰金を課す。そのため、船員はさらに窮地に追い込まれる。また、違約金を払ってでも辞めたいと考える船員も、船舶の上にいて実質的には囚われの身であり、それも叶わない。

 環境正義財団(the Environmental Justice Foundation)が100人以上のインドネシア人船員にインタビューして2022年にまとめた報告書がある。約97%が各種書類を没収されたり、借金を担保に束縛されているという。時折、こうした状況に置かれた船員が当局に訴え出ることもある。2014年、モンテビデオに停泊していた中国のイカ漁船”嘉徳1号(the Jia De 1)”から28人のアフリカ人労働者が下船した。数人が船内で暴行を受けたと訴え、足首には足枷の跡があった。15人の船員が病院に搬送された(この船を所有している船会社にコメントを求めたが、回答は得られなかった)。2020年、インドネシア人船員数名が、船上で激しい暴行を受け、船内の冷凍庫に1人の男の死体があると訴えた。検視の結果、死んだ男には打撲、切り傷痕があり、脊髄も損傷していたことが判明した。インドネシア当局は、労働者人身売買(labor trafficking)の罪で、人材派遣会社の幹部数名に1年以上の禁固刑を言い渡した(同社にコメントを求めたが、回答は得られなかった)。

 中国では、こうした船員への虐待は公然の秘密(open secret)である。とある中国人船員がつけていた日記は、中国漁船の異様さの詳細を垣間見せてくれる。2013年5月にこの船員は200ドルを人材派遣会社に採用の謝礼として支払った。派遣会社は彼をジンハン・ユウ4879(the Jin Han Yu 4879)号に派遣した。その船員と一緒に乗船した船員たちは、最初の10日間ほどは試用期間で、それ以上の拘束はないと言われていた。しかし、その船は120日間も港には戻らなかった。船員の日記には、「お前たちは奴隷だ。いつでもどこでも働くんだ。」と言われたと記されている。船長や航海士たちの食事には肉が出されたが、船員たちには骨しか出なかったという。「ベルが鳴ったら、昼だろうが夜だろうが早朝だろうが、どんなに強い風だろうが雨だろうが、起きなければならない。ここには土曜も日曜も無い」(この船を所有する会社にコメントを求めたが、回答は得られなかった)。

 2011 年に呂栄虞2682(the Lu Rong Yu 2682)号というイカ漁船で船員が反乱を起こした。この件で、中国の一般大衆もイカ漁船内の惨状を知ることとなった。船長の李成泉(Li Chengquan)は、ある船員の証言によれば「大柄で、背が高く、気性の荒い男」で、彼を怒らせた船員は顔を殴られたという。7,000ドルの年俸が約束されていたが、それが支払われないという噂が広まった。イカ1ポンド(0.45キロ)につき4セントしかもらえず、はるかに少ない額しかもらえないという。9人の船員が船長を人質に取った。それから5週間、船員たちと船長側の争いは続いた。夜にいなくなった者もいる。ある航海士は縛られて海に放り投げられた。何者かが船のバルブを破壊し、船は浸水し始めた。船長側は最終的に船の通信システムを復旧させ、救難信号を発信した。それで、2隻の中国漁船を呼び寄せることに成功した。当初乗組員33人がいたが、岸にたどり着いたのは11人だけだった。反乱の首謀者と船長は中国政府から死刑判決を受けた(この船を所有する会社にコメントを求めたが、回答は得られなかった)。

 労働者人身売買(Labor trafficking)は、アメリカ、韓国、タイの漁船でも発生している。しかし、中国の漁船船団では、最も頻繁に発生し、最も深刻な状況である。また、違反を抑制するための措置は何らとられていない。私たちが調査して分かったのだが、2018年から2022年にかけて、中国は少なくとも1,700万ドルの補助金を違法操業を繰り返す漁船を所有する企業に出していた。50隻の漁船が違法な操業をしたり、船上で死傷者を出したのに補助金を受けていた。中国政府にこの件に関するコメントを求めたが、回答は得られなかった。しかし、先日、中国外交部の王文斌(Wang Wenbin)報道官は、中国漁船団は「法律と規則に従って」操業していると述べ、アメリカが「環境保護と人権の名の下に、漁業に関する問題を政治利用している」と非難した。

 ここ数年、中国は多くの改革を行なってきたが、それらは企業の責任を問うというよりも、反対意見を鎮めることを目的としているように見える。2017年、フィリピン人船員1人が中国人乗組員数名とナイフで争って死亡した。その後、中国政府はペルーのチンボテ( Chimbote)に共産党支部を設立した。漁業従事者のために中国国外に党支部が設立されたのは初めてのことで、中国人乗組員の精神的な拠りどころを作ることを目的としている。中国のいくつかの都市では、地元警察が衛星通信を使って、いくつかの中国漁船の甲板と連絡をとり始めている。2020年にペルー近海で1隻の中国漁船で中国人乗組員がストライキを起こした。この時、船会社は地元警察に連絡し、乗組員たちにペルーに上陸して飛行機で中国に戻ることもできるが、航空券代は自己負担になると説明した。「今辞職したら損した気分にならないか?」と警察幹部は説得した。乗組員たちはストライキを止めて仕事に戻った。