米国農業ルポ!オーガニック食品に関する大規模詐欺事件の顛末!主犯ランディ・コンスタントは起訴後に自殺!

11.コンスタント 養魚場の設立を検討

 2000年初頭、畜産の学位を持つスー・ベアードが、ミズーリ州でオーガニック認証機関の設立に携わり、自らも審査官となりました。その頃に彼女はコンスタントに初めて会いました。一時期だけですが、ミズーリ州にあったオーガニック・ランド・マネジメント社の農場は、ベアードの認証機関に認証を依頼するようになりました。QAI社に認証を依頼するようになる前のことでした。2004年にベアードはロンドンへの視察旅行を企画しました。コンスタントも招かれて一緒に行きました。ベアードは、2年間、QAI社の本社で働いた後、農家の業界団体であるミズーリ州オーガニック農産物協会の会長に就任しました。現在は、農務長官が任命する全米オーガニック基準委員会の委員を務めています。その委員会内では、長年オーガニック運動に携わってきた生産者と、成長を焦りがちな新興企業との間での緊張が高まっています。2017年に、ベアードは水耕栽培(もしくは土を使わない栽培)をする農場をオーガニック認証することを支持しました。しかし、旧来からオーガニック農業に携わっていた生産者たちは、とんでもないことだと言って反対しました。

 ベアードはコンスタントと良好な関係を保っていたのですが、彼のビジネス倫理に疑念を抱くこともありました。ボルジャーディンによると、コンスタントとの関係を絶った直後に、ベアードは彼にコンスタントに関する不平を漏らしたそうです。というのは、コンスタントと2006年に取引をした際に利益を掠め取られたような気がしていたからです。その時、ベアードが彼に言ったのは、コンスタントが契約農家に対して不誠実であるという評判が定着しつつあるということでした。また、「そのことは誰もが知っている。」と言い添えたそうです。オーガニック・ランド・マネジメント社の元従業員クリス・バーニアは、2008年にベアードから言われたことを今でも覚えているようです。「ランディ・コンスタントはオーガニック認証で不正を働いています。ただ、どんな方法で行っているかは誰も把握していない。」と言われたのです。(私がベアードに確認したところ、彼女はバーニアと話をしたことは覚えているが、コンスタントの不正を疑ったことは無かったと言いました)。

 数年後、ベアードはコンスタントから仕事の依頼を受けました。コンスタントは、新たな副業を始めたようでした。チリコシーから30分ほど北に行ったトレントンで、ポップコーン工場跡地にアクアポニックスの施設を作ろうとしていたのです。アクアポニックスとは、水耕栽培と水棲生物の飼育を組み合わせたシステムで、植物は養殖された魚の排泄物を栄養にします。植物、微生物、水棲生物が相互作用しあう理想的な植物の栽培方法です。その際、ベアードはスタッフの雇用を手伝いました。また、トレントン・ロータリー・クラブで行った講演で、このプロジェクトを紹介しました。

 ミズーリ州の農家で、アクアポニックスのプロジェクトに携わったラリー・ウィリスによると、コンスタントは、そのプロジェクトに非常に多額の投資をしていたそうです。また、そのプロジェクトには、沢山の者が名を連ねていましたが、いずれもアクアポニックスに関する知識は貧弱でした。その辺りで養豚業を営んでいたスティーブ・ホワイトサイド、コンスタントの義兄のデビッド・バットマン、ジェリコ・ソリューションズ社でパートナーをしていたジョン・バートンなどが名を連ねていました。彼らは、そもそもアクアポニックスに関して詳しくないわけですから、週末になると「アクアポニックス」でググって、週明けにはそれぞれが勝手なことを言ってできもしないような無謀な計画について話し合っていました。そんなことが毎週続いていました。ウィリスは言いました、「成功するわけなど無いわけですから、非常に悲惨な状況でした。傍から見たら、滑稽な状況だったでしょう。」と。

 2010年頃、コンスタントはコロラド州を旅行し、キャノンシティにある刑務所の敷地内にある養魚場を見学しました。この養魚場は数人のオーナーが共同で所有するものでした。刑務所に月極めで使用料を納めていました。オーナーの1人は、スティーブ・アバナシーという実業家でした。納めた使用料で養魚場の光熱費が賄われ、毎日数十人の受刑者が働けるようになっていました。養魚場で育てられたティラピアを、近くのホールフーズの店に卸していました。見学が終わる頃、コンスタントはアバナシーに養魚場を買い取りたいと提案しました。いくらで売るか教えてくれと言われて、アバナシーはかなり驚きました。

 それほど時間もかからず、2人は譲渡価格について折り合いをつけることができました。アバナシーがその時に思ったのは、コンスタントは自分で資金を出すのではなく、他の誰かが資金を出すのだろうということでした。アバナシーは言いました、「コンスタントが投資しているのだとは思いませんでした。事業を運営するような人物には見えなかったし、何百万ドルもの額面の小切手を切るような人物にも見えませんでした。」と。また、彼が私に言ったのですが、コンスタントは実際にはマネーロンダリングをしようとしていたらしいのです。