17.コンスタントは終わった
2021年5月に、カンザスシティの裁判所で、養豚業者のスティーブ・ホワイトサイドは、コンスタントの詐欺行為に加担したとして有罪判決を受けました。ホワイトサイド(50代後半のずんぐりむっくりして浅黒く日焼けしてる)は、グレーのジャケットを羽織って、鼻先には半月型の老眼鏡を掛けていました。彼の妻でメアリー・パット(元教師)は、後方にあるベンチに座っていました。
コンスタントの詐欺行為に関連して6人が有罪を受けました。6番目に判決を受けたのがホワイトサイドでした。ホワイトサイドは、コンスタントが土地の利用で不正を行ったことに関与したとして有罪判決を受けたのです。裁判では、シーダーラピッズ(アイオワ州のリン郡の都市)の検事補ジェイコブ・シュンクが、実刑判決相当であると主張していました。オーガニックでない農産物をオーガニックと偽って販売した詐欺行為は、被害者のいない犯罪と見なされるべきではないという主張をしていました。シュンクは言いました、「良心的な農家であれば、裁判にかけられることなどないのです。ホワイトサイド氏は、農家として正しいことをしませんでした。」と。
ホワイトサイドは実験判決を免れました。執行猶予3年で、4万5千ドルの罰金を言い渡されました。判決に先だって、彼はコンスタント社とは沢山の取引をしており、詐欺行為があったのはほんの一部だけであると証言しました。彼は声を震わせながら言いました、「私は、多くのティラピアの養魚施設を開発しました。非常に環境に配慮した方法でティラピアを養殖することに成功しました。私と妻は36年間懸命に働き続けて、それなりの資産を築きました。コンスタントの詐欺事件に関与してしまったのは私たちの仕事の中のほんの小さな一部分であることをご理解いただきたい。私は、コンスタントの詐欺行為に積極的に加わったわけではありません。彼を信用してしまったのが誤りだったのです。でも、誰もが彼を信用していたんですよ。私と妻と彼の妻は一緒に英語を教えていましたし、彼は教会の催しにも積極的に参加していたので、私たちの地元の者は全員がコンスタントを信用していたんです。良き友人と思っていたコンスタントが詐欺行為をしていたと聞いたときはショックでした。」と。証言を終えて席に着くと、彼は泣いていました。
コンスタントと他の4人は、既に有罪であることを認めていました。コンスタントらの詐欺事件では、検察が立件しただけでも、2010年から2017年にかけてオーガニックでない穀物がオーガニックとして販売された額は1億4,200万ドル以上でした。コンスタントと4人については公判は開かれなかったので、詐欺行為の概要は明らかになっていますが詳細は明らかになっていません。コンスタントは、トム・ブレナン、ジェームズ・ブレナン、ネブラスカ州でコンスタントに加担したマイク・ポーターとともに、詐欺罪で有罪判決を受けました。ジョン・バートンは、詐欺の謀議について有罪とされました。
コンスタントは、2018年12月に嘆願書を出しました。ジェイコブ・シュンクとともに事件を担当した連邦検事補アンソニー・モーフィットが私に言ったのですが、コンスタントは生まれつき社交的な人物で、法廷では非常に機嫌よさそうでリラックスしているように見えたそうです。コンスタントは、判決が出る前に釈放されました。コンスタントの家は売りに出されていました。
ヘクター・サンチェスはアイオワ州で別の職に就きました。彼は、コンスタントに会わないように言われており、長い間、それを守っていました。しかし、2019年の春には、サンチェスはチリコシ―に出向いてオークローン・ドライブのコンスタントの家まで車を走らせました。コンスタントは話をするために歩道まで出てきました。荷造りをしているところだったようです。サンチェスには、コンスタントが寂しそうに見えました。子供を育てた、美しくて大きくて豪華な家を出ていくのですから、寂しくないわけが無いと思ったのです。コンスタントの判決公判は、数ヵ月後の8月に予定されていました。サンチェスは言いました、「コンスタントは非常に焦燥していました。」と。
2019年8月16日はコンスタントの39回目の結婚記念日でしたが、彼は2回目の出廷をしました。判決に先立って、彼は調書に署名をさせられました。調書には、ラスベガスで豪遊したことも記されていました。シュンクによれば、ラスベガスの件が調書に記されたのは、お金の出どころが詐欺行為だったからだそうです。コンスタントの調書は法廷では公開されませんでしたが、ラスベガスで遊興中に3人の女性と性的関係を持ったこと、3人の女性に経済的な支援をしたこと、それは会社の経費で賄われたことなどが記されていました。さらに、それらの女性に関連する団体に200万ドル以上を送金したことも記されていました。その内の1人とは銀行口座を共有しており、知り合って以降の1年ほどで約11万ドルがその女性によって引き出され、車の購入、保険、豊胸手術、スペインへの旅行、その他の支払いに使われたと記されていました。
その日の午後、コンスタントの弁護士マーク・ワインハートは、コンスタントがチリコシーで行っているチャリティー活動について言及しました。また、ワインハートは、オーガニック認証制度では、認証されるのは農地であって、作物が認証されるわけではないことを認識すべきであるということを法廷で開陳して念を押しました。その上で、「この詐欺行為は、些細なミスが発端だったんです。オーガニック認証された農場から、オーガニック穀物を出荷した際に誤って他の穀物が混じってしまった。それが流通してしまったが何の問題も無かったんです。その時に、初めてオーガニックでない穀物をオーガニック穀物として売るのは簡単なことであると認識したんです。それが、顧客からのオーガニック穀物を求める声の大きさに押されて、詐欺行為の規模が膨らんでしまったということなんですよ。」と主張しました。コンスタントは、かつてハイネッケを詐欺事件の首謀者に仕立て上げようとしていたようです。そのことを自分の弁護士から聞いて知っていたジョン・ハイネッケが、その日は法廷の膨張席に座っていました。
判決を言い渡される前、コンスタントは、弁明を行いました。彼の詐欺行為を非難する者たちは「厚顔無恥」と言いましたが、堂々とした弁明でした。彼は言いました、「私は、他の人たちの生活を向上させるために貢献したいと思います。私は、自ら学び、また、他人を助けようと努力しています。刑務所では、他の受刑者を助けるために自分の才能を発揮したいと思います。そのような機会が有ることを希望します。」と。また、彼は、自分が以前に刑務所と協力してオーガニック穀物を栽培したことに言及しました。「私は、刑務所の受刑者に新たなスキルを身に付けさせたかったんです。ただただ、受刑者に仕事のやりがいを感じてもらえるようにしたかったんです。そうした思いが強すぎて、行き過ぎた行動を取ってしまったのかもしれません。それで、皮肉なことですが、私自身が刑務所に入ることとなってしまったのです。」と。
そうした弁明も裁判長のC.J.ウィリアムズの心には響かなかったようです。ウィリアムズ裁判長は言いました、「コンスタントは、彼が販売したオーガニック穀物と同様です。謳い文句と中身が全く一致していないのです。」と。ウィリアムズ裁判長によって、懲役10年2ヵ月が言い渡されました。コンスタントは、刑期が始まるまで、いったん釈放されました。