4.オーガニック認証制度が緩いことを認識し利用
コンスタントとボルジャーディンは、サンディエゴに本社を置くクオリティ・アシュアランス・インターナショナル社(以下、QAI社)を認証機関として選びました。QAI社に毎年多くのお金を払うことになりました。QAI社の本業は、農場の認証ではなく、食品加工会社の認証でした。現在でも、米国製のオーガニックなクッキーやコーンフレークの箱には、必ず同社の名が記されています。先日、私は、2004年から2007年までオーガニック・ランド・マネジメント社の財務責任者を務めていたクリス・バーニアに話を聞きました。彼は、QAI社を直接批判することはありませんでした。しかし、「農家がQAI社に、時には何千ドルも支払わなければならないのは、オーガニック認証システムの重大な欠陥である。」と言いました。また、QAI社は顧客を減らしたくないがために、オーガニック認証で厳しく審査することはほとんど無かったそうです。
また、どんなに誠実な審査官であっても、認証審査はゆるくなる可能性が高いのです。バーニアはオーガニック・ランド・マネジメント社を退職後、しばらく審査員として働きました。彼によると、農場を訪問し、書類を見たり、質問をしたりするのですが、その時間が2時間以上になると、あからさまに審査を受ける農場主がイライラしだしたそうです。それで、牛の乳しぼりのためや、子供が泣きわめくので審査に立ち会えないと言われることがしばしばあったそうです。ある老舗の穀物商は私に言いました、「認証業者は基本的に農場主に対して高圧的な態度はとりません。彼らが審査で何をするかを見たら、きっと驚きますよ。私のところにも審査が来るのですが、年間数千件の取引をしているのに、彼らは3件しか調べないんですよ。」と。
「クリス(バーニア)と私は、オーガニックの認証を受けるために必死に働いていました。2人して審査のために様々な書類を揃えていました。」と、ボルジャーディンは私に言いました。ボルジャ―ディンがQAI社にオーガニックの認証審査を委託したいと考えたのは、同社の審査はそれほど厳しいものではないと思ったからでした。ボルジャーディンは、OAI社の審査は甘くならざるを得ないと認識していました。というのは、QAI社の審査員は農業の専門家ではないので(少なくとも当時は)、そもそもそれほど知識も無いだろうと推測していたからです。また、OAI社の本拠地はカリフォルニア州なので、中西部の農業に関する知識も乏しいだろうと推測していました。(QAI社の関係者に私が確認したところ、そうした認識は誤りであるとのこと。同社の認証審査官は地域ごとの農業の複雑な事情を十分に理解しているとのことです。)
コンスタントとボルジャーディンは、自分たちに年間10万ドルもの給料を払うことができるようになりました。コンスタント夫妻には、息子が1人と娘が2人いるのですが(一番下の娘は10代)、チリコシーの富裕層が住むエリアであるオークローン・ドライブにある広々とした家に引っ越しました。家の中には、陶製のウサギの置物数体、サウスカロライナ州のヒルトンヘッドアイランドの地図を額装したものなどが飾られていました。ヒルトンヘッドアイランド(カロライナ州のリゾート地)を家族で訪れて休暇を過ごすこともしばしばあったそうです。