The Uncertainties of the Omicron Variant
オミクロン株!現状では不明点が多い!
The new coronavirus strain is worrisome—but its effect won’t be the same everywhere.
新型コロナの新たな変異株の出現は脅威に思われます。それが及ぼす影響は、どこでも同じというわけではありません。
By Dhruv Khullar November 30, 2021
1.新たな変異株 オミクロン株の出現!現時点では詳細不明!
新たな新型コロナの変異株(オミクロン株:PANGO系統でB.1.1.529系統に分類される)の最初の感染者が確認されたのは、11月のことで場所は南アフリカでした。南アフリカは、現時点では世界中でオミクロン株の感染者数が一番多いわけですが、3週間前には1日当たりの新型コロナの感染者数は約3百人で、パンデミック以降では最少レベルで推移していました。それが急増に転じました。現在、南アフリカでは毎日平均で5千人ほどの感染者が出ており、陽性率はほぼ5倍になっています。オミクロン株が最初に確認されたハウテン州では、新型コロナ感染による入院者数がほぼ4倍に増えました。急増した感染者の中にどの位の数のオミクロン株感染者がいるかは現時点では不明ですが、少ない情報から類推するしかないのですが、オミクロン株感染者がかなりいるように思われます。先週、南アフリカの保健当局がオミクロン株の出現を公表した翌日、WHO(世界保健機関)はオミクロン株を5番目の「懸念すべき変異株(VOC:variant of concern)」に指定しました。新型コロナ対応で、WHOが変異株の検出後に、これほど迅速に「懸念すべき変異株(VOC)」に指定したはありませんでした。
WHOが変異株を「懸念すべき変異株(VOC)」に指定し懸念を表明する際には、主に遺伝子の変化の個所数に基づいて判断が為されています。オミクロン株では、50程の変異が認められ(デルタ株より圧倒的に多い)、ウイルスが人間の細胞に侵入する際に使用するスパイクタンパク質の30箇所ほどで変異が見られます。(ちなみに、デルタ株ではスパイクタンパク質の変異は10箇所ほどです。)スパイクタンパク質の変異は、他の変異株でも見られました。それらの変異株と同様だとすると、オミクロン株も感染力が強く、抗体突破する免疫回避力が強いと推測されます。しかし、オミクロン株のスパイクタンパクの変異の内の少なくとも26箇所は固有のものであり、これまでの他の変異株には無かったものです。ですので、そうした変異によってウイルスがどう変わるかは分かりません。ある意味で、オミクロン株は新型コロナウイルス界の期待の有望新入みたいなものです。非常に注目が集まっており、既に沢山の分析が為されています。しかし、期待の有望新人が優秀であるか否かというのが時間が経たないと分からないのと同じで、現時点ではオミクロン株の特賞が恐るべきものか否かということは判明していません。
新型コロナではこれまでにいくつも変異株が出現しています。新たな変異株が出現した際には主に3つの観点からの評価が重要になります。1つめは、感染力が強いか否かという点です。2つめは、重篤化しやすいか否かという点です。3つめは、免疫突破力が強いか否かという点です。新しい変異株が発見されてから、その変異株の疫学的特性が明確に判明するまでには、それなりに時間が掛かります。その点はオミクロン株も例外ではなく、現時点では感染力等の特質は分かっていません。南アフリカで急速に感染が広がっていることと、デルタ株同様に突然変異が見られるということを考慮すると、オミクロン株の感染力はおそらく非常に強いと推測されます。しかし、一般的にウイルスの新たな変異種は、重篤化させる能力が強まっていないことがことが多いようです。これまでに伝えられている初期の感染例等を見た限りでは、オミクロン株では、ほとんどの感染者の症状は軽症であり、重症化した者が少しだけ出たがワクチン未接種であったということです。(南アフリカではワクチン2回接種者は4人に1人しかいません。)
3つめの免疫突破力が強いかという観点(オミクロン株は再感染やブレークスルー感染しやすいか否か?)については、現時点では不明です。巷にはブレークスルー感染すると懸念する者が多いようで、懸念する理由が無いわけではありません。なるほど、現在使われている新型コロナのワクチンは武漢のウイルスのスパイクタンパク質に対応すべく開発されたものです(ウイルスが細胞内に侵入すると細胞内の抗体がウイルスのスパイクタンパク質に働きかけてウイルスを無効化するようにする)。しかし、オミクロン株のスパイクタンパク質では多くの変異があるようです。ですから、現在使われているワクチンの効果が非常に限定的になる可能性があります。とはいえ、オミクロン株の沢山の突然変異によって、免疫突破力が強まるか否かということは現時点では不明です。ウイルスが突然変異によって何らかの特質(感染力が強いとか)を得る時には、同時に失われてしまう特質があります。例えて言うと、バスケットボールでオールスタープレーヤーばかりでのチームを作った場合を想像してみてください。どの選手も俺が俺がと主張してしまうので、決して強いチームになりません。それと同じで、オミクロン株が免疫突破力は強く無いと推測されます。多くの感染症研究者が既に研究室で新型コロナの免疫を獲得している人たちの血液がオミクロン株をどれほど効果的に中和するかを研究中で調べています。また、オミクロン株に対するワクチンの有効性に関する研究も行われています。今後数週間で、それらの調査結果は判明するでしょう。