ワクチン・カウントダウン 意外と難度が高いワクチン開発後の工程

ワクチン接種率70%を達成には、バイデン政権の支援が不可欠

エッセンシャルワーカーでない人や既往症が無く健康な米国人にとって、ワクチンについて知っていることは多くありません。それは、春が終わる頃には病院などで入手できるかもしれないということと、無料で受けられるということだけです。オペレーション・ワープスピードの責任者であるスラウイ氏によると、集団免疫を獲得して、パンデミックを食い止める為には、少なくとも総人口の70%がワクチンを接種する必要があります。そうして初めて、ソーシャルディスタンスを維持することやマスクの着用が不要になります。オペレーション・ワープスピードではワクチン開発に対して多額の資金を提供しました。しかし、ワクチンを医療機関に分配するのは各州に任されており、連邦政府からの支援や指導はほとんどありません。世界開発センターでサプライチェーンについて研究しているプラシャント・ヤダブは、「米国人3億人に2回の接種をしなければなりませんが、そのためにはさらなる設備投資が必要となる。」と言いました。
 ワクチンが速やかに接種できるようになるか否かは、バイデン政権の手腕に頼る部分が少なくありません。ワクチンを国中に行き渡らせるためには、ワクチンを製造するための化学薬品、ワクチンを入れておく容器用のガラス、注射器用のプラスチック、ドライアイスなどの物質を十分に確保しなければなりません。次期政権は、国民にワクチンを進んで接種するよう大々的に啓蒙しなければなりません。また、各地方自治体に確実にワクチンを投与するための人員を雇って訓練するための財源を確保させる必要があります。各地方自治体は、誰にいつワクチンを接種するのかを決める必要がありますが、それを決めるのは非常に難しいと思われます。米政府機関の生物医学先端研究開発局(BARDA)の前局長リック・ブライトは、「最初のワクチンを誰に投与するかを決めるのは比較的簡単でした。医療関係者など優先度の高い人々に決めるだけでしたから。本当に難しいのは、次に誰に接種するかを決めることです。米国で最初のワクチンを投与されなかった数億人の中から、選び出すのですが、リスクが高い人を選ぶのか、併存疾患がある人にするのか、エッセンシャルーワーカーにするのか、決めるのは容易ではありません。」と言いました。
 ブライトは、生物医学先端研究開発局の局長を務めていましたが、トランプ政権によって5月に降格させられました。彼は、すぐに声明を出し、政治的なしがらみを排して科学と安全を最優先して職務を全うしていたのに降格させられたと主張しました。ブライトは私に言いました、「ワクチンが製造されて工場から出荷され始めていますが、トランプ政権下では科学より政治や縁故主義が優先されていました。バイデン政権では政治ではなく科学を優先するようにすべきです。」と。
 モデルナ社の治験の被験者であるハニーカットは、9月に2回目の接種を受けましたが、副作用は全くありませんでした。彼女は私に「全く問題ない」と言っていました。モデルナ社の治験では、取り決めとして被験者がワクチンかプラセボのいずれを投与されたかは明かされないことになっていました。彼女が治験に参加して以降、米国では830万人のCOVID-19感染が確認され、9万8,000人が死亡しています。ハニーカットは言いました、「現在は非常に悲惨な状況が続いています。人々がまた元の生活に戻れることを願っています。慎重さよりも迅速さを求める政治家がいますが、それはワクチン開発のプロセスにとって害悪でしかありません。何よりも科学を優先すべきです。収集したデータは厳格に分析されることが必要です。それは科学の基本です。」と。

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