What Do We Do About COVID Now?
新型コロナに対する対処について?
America’s battle with the pandemic has been more damaging than we like to think. And it is still ongoing.
新型コロナの影響によって米国経済は大きなダメージを負っています。その影響は、今後もしばらくは続きます。
By Dhruv Khullar
April 3, 2022
マザー・テレサはかつて、言っていました、「 大衆を見ても私は行動しない。個人を見た時に私は行動する。」と。現在、私たちは、新型コロナのパンデミック禍が続いている中で、マザー・テレサが言ったことは核心を突いていると改めて認識しています。米国では、まもなく新型コロナによる死者が100万人を突破するという節目の時を迎えようとしています。しかし、多くの米国人は、100万人の死者が出たと言われても、漠然としていて、悲惨さを正しく実感できていないのではないでしょうか。100万人の死者と言われても具体的なイメージは涌かないものなのです。また、100万人という大きな数値を出されると、多くの人は個々人ではどう対処して良いか分からず途方に暮れるだけなのです。おそらく、多くの人が、自分たちが直面している危機の大きさを正しく理解できていないでしょう。
新型コロナの蔓延が長く続いていますので、誰もが辟易としています。それが現時点での問題の1つです。また、新型コロナの影響は、人によって受けた大きさが違うということも問題の1つです。新型コロナは、若い人には比較的無害です。しかし、高齢者にとっては非常に害が大きく、米国の高齢者の75人に1人が新型コロナで亡く亡くなっています。実際、長期療養施設の居住者は人口の3%未満しかいないのですが、新型コロナによる死者の約20%を占めています。また、人種による差も顕著です。黒人とヒスパニックの新型コロナによる死亡率は、白人の2倍になっています。また、ワクチン接種率の差に起因すると思われるのですが、共和党が圧倒的に優勢な郡に住む人の新型コロナによる死亡率は、民主党が圧倒的に優勢な郡の3倍以上でした。新型コロナのパンデミックはもう終わったと感じている人も少なくないようですが、そんなことはありません。2021年には2020年よりも多くの米国人が新型コロナで亡くなっています。2022年もこれまでで既に13万人が新型コロナが原因で亡くなっています。
そのような数字を聞いても、新型コロナの悲惨さを認識するのは簡単なことではありません。しかし、新型コロナの影響で米国の平均寿命が2年弱縮まったと聞けば、少しは悲惨さを認識していただけるのではないでしょうか。それは、第二次世界大戦以降、単年では最大の平均寿命の減少幅です。また、家族や友人や同僚と過ごせなかった期間を計算してみると、新型コロナの深刻な影響を実感できるのではないでしょうか。かなり長い期間になっているはずです。さて、新型コロナで80歳で亡くなった人は平均すると8年ほど余命が短くなっているのですが、そのことを認識している人はどれくらいいるでしょうか。同様に40歳で亡くなった人は余命が40年ほど短くなったのです。つまり、新型コロナで100万人が亡くなったということは、何千万年分もの人生が失われたということを意味しているのです。何千万年もの人生が失われたことで、様々な新たな、思いもつかないような、素晴らしい出来事が失われてしまったのです。
新型コロナに関して誤った認識がいくつも広まっています。その中の1つに、米政府が新型コロナによる死者数を誇張しているというものがあります。しかし、それは事実ではありません。実際には全く逆で、政府公表の新型コロナによる死者数は過小となっているようです。新型コロナのパンデミックが始まって以降、米国では平年と比べると少なくとも死者数が10万人以上も多くなっています。10万人も多く亡くなっているわけですが、そのほとんどは新型コロナによる死者としてカウントされていません。新型コロナのパンデミックの影響で、心臓発作や脳卒中などの治療を十分に受けられなくて亡くなった人もかなりいます。しかし、新型コロナによる死者にはカウントされていません。新型コロナの影響で医療機関がひっ迫して、薬物の過剰摂取で亡くなった人も記録的なレベルにまで増加しています。また、がん検診を受けられなかったり、小児ワクチン接種を受けられなくなった人も少なくないようです。それらの影響は今後数年間で出てくると思われるのですが、元を辿ればそれも新型コロナが原因なのです。正しく認識してほしいのですが、米国では新型コロナとの戦いは未だ終わっていないのです。新型コロナは、思っている以上に大きなダメージを与えてきましたが、それは未だ続いているのです。
米国内では一部地域で、再び新型コロナの感染者数が増加しています。おそらく、経済活動の本格的な再開が一役買っているのでしょう。オミクロン株の亜種であるBA2が、現在米国をはじめ世界中で流行しています。BA2は、冬に米国を席巻したBA1よりも30〜50%ほど感染力が強いと推測されます。BA2の重症化率はそれほど高くないようです。また、ワクチン接種も有効で、接種しておけば感染したとしても重篤化は避けられるようです。それでも、ブレークスルー感染の可能性があるようですし、高齢者や免疫機能の低い者やワクチン未接種者にとっては深刻な脅威となるでしょう。先月、BA2の感染が広がったことで、英国では新型コロナの感染者数が3倍弱まで増えました。推定の数値ですが、一時は英国の高齢者の30人に1人が新型コロナに感染していたようです。新型コロナによる入院者数と死者数が増えましたが、劇的というほどではありませんでした。おそらく、ワクチン接種や既に感染したことで免疫が備わっている者が増えていることで、重篤化する者が少なくなっていたのでしょう。
今後、米国でBA2の感染が広がるのか収束するのかは全く見当がつきません。米国のワクチン接種率はヨーロッパの国々と比較すると劣っています。2回目接種を済ませた者は3分の2しかいません。直近でFDA(米食品医薬品局)が、50歳以上の人に対する2回目のブースターショット(4回目接種)を承認しました。しかし、50歳以上で1回目のブースターショット(3回目接種)を受けた人の割合は60%にとどまっています。そんな状況ですが、多くの州で新型コロナに対する規制が撤廃されています。その結果、多くの人たちが新型コロナのパンデミックが始まる前と同様の行動をするようになりつつあります。それでも、BA1に対する免疫がBA2に対しても有効であると推測されていますので、今後米国で新型コロナによって再び大混乱が起こる可能性は少ないのかもしれません。ある推定によれば、米国では5人に4人の割合でオミクロン株に対して免疫を持っているそうです。
2020年、新型コロナの感染が広まり始めた時、米政府の対応は遅々としていて、統制がとれていませんでした。しかし、時間が経つにつれ、自然と米国では多くの人々が感染が拡大するのを防ぐ行動をとるようになりました。多くの人が、何が許され、何をしたらいけないかを認識して行動していました。今現在の米国では、「西部開拓時代」と同様で、人々は定まったルールが無い中でもお互いが理性的に行動するようになっているのです。米国疾病管理予防センターは、現在マスクを着用する必要があるのは総人口の1%未満であると指摘しています。いくつかの州では、検査会場やワクチン接種会場を閉鎖しています。今年初めには、バイデン政権は新型コロナ対策資金として300億ドルを追加要求しましたが、米下院が同意した額は150億ドルのみで、これまでのところそれすら可決されていません。その結果、連邦政府は各州へのモノクローナル抗体の出荷量を減らし、抗ウイルス薬の購入スケジュールを後ろ倒ししました。保険未加入者の検査費用やワクチン接種費用への資金援助は既に無くなりましたし、今秋の4回目接種に必要な資金も不足しそうです。米政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するための強力な手段を持っているのですが、資金的な制約によってそれを実行することが難しくなりつつあります。現在も新型コロナの脅威は去っていないにもかかわらず、多くの人がそのことを正しく認識していません。そのことによって、米政府は正しく行動することができにくくなっているのです。新型コロナに関して、免疫力が高い人もいれば低い人もいます。脆弱な人もそうでない人もいます。ですので、米政府が一律の対策を実施して、全ての人を満足させることはとても難しくなっています。
新型コロナの感染の収束が見通せない中で、個人も企業や組織なども理性的に行動しなければなりません。新型コロナについて分からないことがたくさん残っている中でも、日常生活での経験を通じて具体的に新型コロナの蔓延を防ぐのに効果がある行動をとらなくてはなりません。新型コロナの感染者数が激しく増えていた時期には、多くの職場で迅速な検査が励行され、感染した際には隔離され、室内でやっていたイベントを屋外で実施したり、高機能マスクが配布されました。そうして、社会全体でリスクを低減する文化が定着しましたし、多くの人が感染に対して脆弱な者への配慮をするようになりました。数十年にわたる行動科学の研究によって明らかになっているのですが、人の意思決定は環境に大きく左右されるのです。米政府が新型コロナ対策を縮小したとしても、人々が理性的に行動することで感染拡大を防ぐことができるのです。学校や職場や教会など、さまざまなコミュニティで理性的な判断や行動が求められているのです。
現在、米国では多くの人が誰かに強制されたわけでもないのに、新型コロナの感染拡大を防止すべく行動をしています。それは、気象変動を防ぐための行動と似ているところがあります。誰かに強制されたわけでもなく、法律で定められたわけでも無いのですが、多くの人が少しでも気象変動を防ぎたいと考えて、リサイクルなどに取り組んでいます。しかし、現実的に見ると、人々のそうした自発的な行動も必要ですが、新型コロナの感染拡大を防ぐためには、それに加えて、換気装置や空調設備や空気清浄機等への投資が不可欠ですし、感染した者には有給休暇をとらせたり、感染対策への投資も必要でしょう。しかし、個々人が理性的な行動をとることも重要なのです。自ら3回目のワクチン摂取を受けたり、他の人にもそれを受けるように説得したりすることが重要なのです。もうすぐモノクローナル抗体や抗ウィルス薬も入手可能となるでしょう。今後、再び感染者が増える可能性が無いわけではありません。しかし、もし増えた時には、新型コロナに対して脆弱性のある者が感染する可能性を減らすべく多くの人が行動するでしょう。この2年間、感染者が増えたり減ったりを繰り返してきました。いくつもの変異種が出現しました。ワクチン接種が促進され、3回め接種も行われていますが、重要なのは個々人が理性的な行動をとることです。これまでもそうでしたし、それは今後も変わりません。♦
以上
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