サウジアラビアがイランとの外交関係の正常化に合意!何と仲介したのは中国!これはアメリカ外交の大失態なの?

Question 4

Question4
 MBS(訳者注:ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子のこと)は、過去数年間にわたって、実質的にサウジアラビアで権力を掌握してきました。少なくとも掌握した当初は、サウジアラビアの外交政策は非常に攻撃的でした。イエメンでの破滅的な戦争を敢行しましたし、レバノンでも積極的な行動を指揮していました。カタールとの断交を進めたのも彼でした。さて、サウジアラビアの外交政策に変化があったと考えるべきなのでしょうか?先ほど、あなたはサウジアラビアは1年ほど前からイラクを通じてイランと対話していたと言いました。また、イエメン内戦を何としてでも終わらせたいという意向だったと言いました。ここで、強調しておきたいのは、イエメンを破壊して世界最悪の人道危機を招いた大部分の責任はサウジアラビアにあるということです。現地の状況は悲惨です。あまり報道されていないようですが、もっと世界が目を向けるべきだと思います。サウジアラビアは、イエメンに対する関心が薄くなっていて、別のことに軸足を移しつつあるのでしょうか?

Answer
 いくつかの変化がありました。私はMBSがどんな人物であるかということを詳しく知っているわけではありません。彼は事実上の最高権力者になった際に、サウジアラビアが超大国(superpower)であると思っていたでしょう。ロシア(Russia)や中国のように超大国として振る舞うことができると考えていたようです。サウジアラビアは超大国だから、国外の反体制派も殺すことができる、あるいは、誰からも咎められること無く軍事力を平然と行使できると考えていたようです。MBSの前任者たち、つまり彼の父親の世代は非常に慎重で、サウジアラビアの力が限定的であることを理解していました。思うに、MBSは最近になってようやくそのことに気づいたのだと思います。そのため、現在のサウジアラビアの外交政策は以前よりはいささか慎重なものになったように見えます。サウジアラビアの現在の外交政策は、パックス・アメリカーナ(Pax Americana:超大国アメリカの覇権が平和を形成するとする概念)が崩れ去り、世界がより多極化したということを前提としたものです。そういう前提ですので、サウジアラビアは自国の利益を守るために、中国との関係やロシアとの関係も重要視しているのです。もはや、1つの超大国のみに頼っていては自国の利益を守れないと考えているのです。

 アメリカ人は、2019年9月のサウジアラビアの石油施設への攻撃が、サウジにとってどれほどインパクトが大きかったかを理解していません。これは、イランによる初めてのサウジアラビア領土内への攻撃だと推測されていますが、イランは不可解にも関与を否定しています。では、イエメンの反政府組織のフーシ派が犯人なのでしょうか?それとも、イラクが犯人なのでしょうか?この時、アメリカがイランに対してもフーシ派に対しても制裁や攻撃を全くしなかったことはサウジアラビアにとって衝撃的でした。それでMBSが認識したことは、イランに対して攻撃的な政策を推し進めた場合に必ずしもアメリカが支援してくれるわけではないということです。その時点からイランへの働きかけを始めたのだと思います。(アブカイク(Abqaiq)とクライス(Khurais)にあるサウジアラムコの石油生産プラントを標的として行われたドローン攻撃は、イエメンのフーシ派によって犯行声明が出されました。が、アメリカと西側の同盟国は、イランがその背後にいると断定しています。)