サウジアラビアがイランとの外交関係の正常化に合意!何と仲介したのは中国!これはアメリカ外交の大失態なの?

Question 7

Question7
 過去数十年間にわたってアメリカは超大国として中東に君臨してきたわけですが、残念ながら、そこに平和と調和と善意はもたらされていないようです。さて、イラン国内での抗議活動は、イランとこの地域に対して大きな影響を及ぼしているのでしょうか?

Answer

 サウジアラビアやイスラエルなど、イランの周辺の国々の行動や政策にはほとんど影響はありません。以前からイランを脅威と見ていた国は、今もイランを脅威と見ているはずです。おそらく、中東には、イランの現政権が抗議活動によって崩壊すると考える人はいないと思われます。また、この地域ではイランの抗議活動に共鳴する勢力はありませんでしたし、それを波及させて自国の政権を打倒しようする勢力もありませんでした。イランから遠く離れたアメリカ本土には、そのように考えた人が少しだけいたようですが、そんなことが起こるはずはないのです。

 ここで問題となるのは、イランの現政権が自国の安定、自国の地域内での地位、政権の自国内での立場をどのように認識しているかということです。イランの体制内エリート層には内部分裂が見られます。現政権に批判的なエリート層がいて、現政権が抗議活動を残忍な方法で取り締まったことを批判し、また、女性に対する制限や抑圧を緩和するよう求めています。イランの現政権は、中東地域で孤立している状況が緩和され、サウジアラビアとの関係が正常化されることを望んでいました。それは、現政権にとってプラスになると思われるからです。

 イランの孤立が深まっているとされていますが、私は、それはそれほど大きな問題ではないと考えています。イランは、何やかんや言っても、中東で上手く立ち回っていて決して孤立しているわけではないのです。イランはフーシ派やイラクの民兵組織やヒズボラやバッシャール・アル・アサド(Bashar al-Assad)とは連携が取れています。(バッシャール・アル・アサドはシリアの現大統領。内戦では残忍さを発揮し勝利していますが、現実に掌握できているのは1つの民兵組織に過ぎません。)つまり、イランは周辺の国々とは良好な関係を築いていませんでしたが、非国家主体とは良好な関係を構築できていたのです。