4.パンデミック対応で必要なこと3つ ③各国との協調
現在はグローバル化の時代ですから、米国は自国の問題だけに集中していてはいけません。変革が必要な項目の3つ目は、世界各国とどうやって協調していくかということです。私の同僚のジェローム・グループマンが主張していますが、米国は外交で、感染症の拡大を防ぐ上で重要な役割を果たすことができます。多くの貧しい国々は、感染症を予防し治療するために必要な医療や公衆衛生の設備が不十分です。また、戦争や内戦や政情不安によって、衛生状態や住環境やインフラが崩壊すれば、致命的な病原性感染症の出現や復活が促進されます。より平和でより豊かな世界を作るために米国が外交努力をすれば、感染症が蔓延しにくい世の中なるでしょう。
また、米国は世界規模での公衆衛生分野の特定の領域でいくつかの重要な措置を講じる必要があります。バイデン政権は、WHO(世界保健機関)の脱退を撤回しました。今回のパンデミックの初期には拙い対応が散見されたものの、世界保健機関は依然として世界で最も重要な世界規模の保健関連の組織であり、各国と協調して重要な役割を果たしています。世界保健機関や他の同様の組織に拠出金を出すことは、世界規模で新たな感染症を監視するためには不可欠です。また、世界保健機関を通じて感染症を拡散する危険のある分野に対して影響力を行使することも重要になります(多くの生鮮市場や家畜などが感染症の発生源になっていて、改善が必要な分野です)。
また、米国は、世界中の人々がワクチンを接種できるようにするために貢献する義務があります。というのは、今回のパンデミックでは、米国のようにウイルスが蔓延した国々がコロナウイルスの変異種の出現を加速させたからです。世界規模でのワクチンの接種が進まなければ、より危険な変異種が出現する可能性は高まります。将来、もっと変異しやすく致死性の高い病原体のパンデミックが発生した際に必要なのは、素早く世界規模でワクチンを行き渡らせることです。
世界では何十億もの人が、ワクチンを入手できそうもない国に住んでいます。入手するための資金が不足していたり、必要な設備が整っていなかったり、政情不安で政府が機能していない国が沢山あるのです。そうした国ではCOVID-19用のワクチン接種は2024年まで待つ必要があります。今回のパンデミックが始まってから、GaviのCEOバークレーは、この問題を認識していて、解決に努めてきました。昨年春、Gaviは、世界保健機関やCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)と共同で、COVAXを立ち上げました。それは、世界規模でCOVID-19用のワクチンを共同購入して公平に分配するという野心的な枠組みです。COVAXは、ワクチンの開発、製造、購入、分配を世界規模でコーディネートすることを目的としています。目指しているのは、個々の国や企業の間でワクチンを取引するのではなく、ワクチンを世界規模で一括して購入して、各国の人口や感染状況から判断して必要に応じて分配する形です。バークレーは言いました、「各国の指導者が自分の国だけを優先しようと思うのは自然なことです。しかし、世界規模で感染症が流行している際に自国のことだけを考えるのは愚かなことです。世界規模でワクチン接種が為されなければ、世界のあちこちでウイルスの蔓延している状況が続きます。世界規模で貿易や生産や移動や安全保障に影響が出るわけですから、自国だけワクチン接種を進めても、無傷ではいられないでしょう。」と。
米国は先日(2月のことですが)COVAXに40億ドル拠出すると表明しました。現在、190か国以上がCOVAXに参加しており、2021年にほぼ20億回分のワクチンを確保できる見通しです。これらの国のうち、低中所得国と見なされる92か国は、ワクチンを大幅にディスカウントした価格かもしくは無料で取得できます。確保した20億回分のワクチンのほとんどは、人口に応じて分配されますが、5%は感染爆発の発生に備えて備蓄されます。目標は、参加した国のワクチン接種率を今年中に20%にすることです。バークレーは言います、「20%を越えると、パンデミックの状況は大きく変わるでしょう。最も脆弱な人たちが守られるわけですし、感染のリスクもいくぶん下がり、医療体制の逼迫も改善されるでしょう。」と。COVAXに参加することによって、米国は今回のパンデミックを終息させるための重要な役割を果たしています。また、次にパンデミックが発生した際に上手く対処するための基盤を築きつつあります。