本日翻訳して紹介するのは、the New Yorker のWeb版にのみ掲載のDhruv Khullarによるコラムです。タイトルは”What’s at Stake in the Fight Against Monkeypox”(サル痘の封じ込めで重要なこと)です。khullarは、スタッフライターで医師でもあります。
日本でもついにサル痘感染者が出てしまいました。欧州では先月から大騒ぎしていましたが、ついに日本でも出てしまったかという感じです。そう言えば10日ほど前にサル痘に関するコラムを目にしていました。ということで、さっそく訳すことにしてみました。
さて、サル痘は新型コロナと違ってかなり前から存在していました。かなり前にアフリカで流行したことがあったのです。しかし、感染はアフリカでしか広がらなかったことで、先進国はワクチンを提供したり等の支援をそれほどしませんでした。
その時、なぜ、アフリカ以外で感染が広がらなかったのか?原因は、はっきりとは分かっていません。遺伝的にアフリカ系の人だけが感染しやすかったのかもしれませんし、アフリカ諸国で医療インフラが充実していなかったことが原因なのかもしれません。いずれにしても特定はされていないようです。
さて、サル痘ウイルスはどれほど怖いものなのでしょうか?かなり昔から存在しているわけですので、その特徴はかなり明確になっています。そのウイルスの感染力は、新型コロナと比べると強くありません。現時点では、男性の患者が圧倒的に多く、男性同士の性交渉で感染が広がったのではないかと言われていて、空気感染や飛沫感染はしないのではないと言われています。致命率も新型コロナウイルスに比べると高く無いようです。また、天然痘(smallpox)のワクチンがサル痘にも有効であると判明しています。接種することで感染を防げますし、曝露後に接種することで発症を防げる可能性も高いようです。また、サル痘ウイリスはDNAウイルスですので、RNAウイルス(新型コロナウイルス等)と違って変異のスピードも早くないのです。新型コロナのように変異株が次々と現れて、有効だったワクチンの効果が低くなってしまうということも起こりにくいのです。ですので、新型コロナウイルスに比べれば、それほど脅威ではないのです。
ところで、長年に渡ってほとんど感染者が出ていなかったのに、なぜ急にサル痘の感染が広まったのでしょうか?それは、天然痘の撲滅と関係があります。それが撲滅される前は、人々はこぞって天然痘ワクチンの接種をしていました。しかし、撲滅されたことで、ほとんどの国で天然痘ワクチンの接種は実施されなくなってしまったのです。実は、それはサル痘にも有効だったのです。そのような状況だったので、アフリカではサル痘は大流行はしなかったものの、くすぶり続けていて毎年それなりの感染者が出ていたのです。
本来であれば、裕福な国は、アフリカでサル痘がくすぶっているのを見て、ワクチンを提供する等の支援をするべきだったのです。そして、天然痘と同様に完全に封じ込めるべきだったのです。しかし、感染がアフリカ大陸に限定されていたので、裕福な国は支援せずに傍観することにしたのです。それは、道徳的にも医学的にも理のある行動ではありません。
サル痘の感染は、先進国に警鐘を鳴らしました。貧しい医療インフラの充実していない国で感染症が発生していたら、傍観するべきでは無いのです。支援をして感染を収束させることが重要なのです。そうしなければ、サル痘のようにいずれ感染が先進国にも広がってしまうのです。新型コロナを経験して誰もが認識していると思いますが、ウイルスは容易に国境を超えてしまうのです。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は、和訳全文を御覧ください。