8.Facebook社は巨大企業の責務を果たすべき
2019年10月、トランプは選挙運動の際に、ジョー・バイデンに関して全くでたらめな主張をする広告を作成しました。CNN等の放送局はそれを流すことを拒みました。YouTube、Twitter、Facebookは拒みませんでした。Facebookの選挙に関する広報政策担当役員のカティ・ハーバス(前職はルドルフ・ジュリアーニの大統領候補者選挙の際のIT戦略担当)は言いました、「Facebook社は、表現の自由に対する信念に基づいて取り組んでいる。従って、ある政治家が発言や宣伝をする場合、外部の中立の審査機関に検閲してもらうというようなことはしていません。」と。その月の下旬の下院の公聴会で、アレクサンドリア・オカシオ・コルテス議員はザッカーバーグに尋ねました、「政策綱領の中で様々な嘘やでたらめを列挙しているような政治家がいる場合、表現の自由に対する信念に基づき検閲しないというFacebook社のポリシーは、どのレベルまで適用されるのですか?」と。ザッカーバーグは、宣誓をした後、歯切れ悪く次のように答弁しました、「超えてはいけない基準をいくつか設定しています。政治家でも誰でも暴力を助長するような呼びかけをしている場合、有権者というか世間を抑圧するような場合も、そのコンテンツは削除されます。」と。
7か月後となる2020年5月、トランプは数日間でFacebookの設定している超えてはいけない基準を2度を越えました。5月26日、ツイッターとフェイスブックの両方で、彼は不実の内容を投稿しました。郵便投票は不正の温床だという内容でした。これは明白に有権者を惑わす試みに思われます。なぜ、彼は有権者に郵便投票システムに不備があるという明確な根拠など無い警告をするのでしょうか。有権者に郵便投票をさせたくないという明確な意図があると思われます。そして5月29日には再びTwitterとFacebookの両方で基準に違反しました。トランプは、ジョージ・フロイドの死に対する抗議活動の鎮圧をするために州兵を送るか否かを熟考していました。トランプの投稿した内容は、「奴らがしたいのは、略奪と銃撃だけだ。」と言うものでした。その文は、暴力を煽動するものだと誰からも見なされました。著名な人種差別主義者たちが同じような文言を使ってたことがありました。960年代のことです。そうした文言は、公民権運動をする者を含む黒人の人たちへの悪意ある攻撃を正当化するために使われたものす。
Twitterはトランプのツイートを削除しませんでしたが、警告表示を付しました。対照的ですが、Facebook社は何もしませんでした。Facebook社が何もしないことを目の当たりにして、多くの人たちがが驚いていると公民権擁護団体Color of Changeの代表ラシャド・ロビンソンは言っていました。Leadership Conference on Civil and Human Rightsの代表兼最高経営責任者のヴァニタ・グプタは、次のように述べています。「多くの市民活動家が何年も前からFacebook社の基準をもっと良いものに変えるようけしかけているのに、どうして変えないのだろうかという疑問が市民活動家の間に渦巻いています。変えないから、Facebook社は最も大事にしている基準を無視しなければ状態が続いているのです。(後日談になりますが、トランプの選挙活動の広告で削除されたものもあります。2件です。1件は6月に削除されたものでナチスに関連するマークが使われていました。もう1件は9月に削除されたもので、根拠も無いのに難民がコロナウイルスを拡散していると非難していました。)
6月1日、コロナウイルス予防のためリモートワークしていた多数のFacebook社の従業員が、バーチャルでのストライキを実施しました。2日後、デイブ・ウィルナーを含むFacebook社の創業初期からいる従業員34人が署名した書簡をタイムズ紙に公開しました。次のように書かれていました、「政治家による全てのスピーチに報道価値があり、すべての報道価値のあるスピーチがFacebookの基準を逸脱しないというのであれば、世界最大のプラットフォームにおいて世界中の権力者は好き勝手なことをしても許されてしまう。」と。コリ・クライダーは現在、約50人のコンテンツ・モデレーターと緊密に連絡を取り合っており、彼女はその人たちに各々が書簡を書くように勧めました。2020年6月8日、クリス・グレイを含む10人の現職か過去に務めていたコンテンツ・モデレーターのグループが、Mediumという一般に公開されているウェブサイトに署名した書簡を公開した。次のことが記されています、「派遣契約社員として秘密保持契約を交わしいますので、私たちは業務に関連することを公然と話すことはできません。それにもかかわらず、最近の出来事を見ていて分かったことがあります。もう、私たちはこれ以上受動的な立場でいることはできないということです。黙認して今の状況を促進するような役割を続けるなんてとはもう出来ないのです。私たちコンテンツ・モデレーターのパソコンのスクリーンにはヘイトスピーチがあふれかえっているんです。」と。
2020年8月19日Facebook社はガイドラインを変更すると発表しました。その中で最も重要だったのは、社会の安定に重大なリスクを投げかける組織や団体の活動を制限するという新しいポリシーでした。それには米国を拠点にする民兵組織を含みます。一部の記者や活動家は、Facebook社は、そのような組織等に関する規制を考案するのにどうしてこんなに時間がかかったのかとの疑問を投げかけました。新しいポリシーの下で数百ページが削除されたものの、削除されるべきなのに削除されていないページもかなり残っていると指摘する人たちもいました。4日後、ウィスコンシン州でジェイコブ・ブレイクという名の黒人男性が警察官に子供たちの目の前で後ろから銃弾を7発撃ち込まれました。抗議行動は毎晩行われました。Kenosha Guardという団体が、民兵組織だと名乗っていましたが、Facebookページに「今こそ武器を持て」と戦闘開始を呼びかけていました。そのFacebookページでは、多くの人々が明確に自衛のための攻撃(抗議活動をする者を攻撃すること)に加わる意志を表明していました。中には、「俺は今夜思う存分略奪者と暴徒を殺してやるぞ。」という物騒な投稿もありました。BuzzFeedによると、1日で400人以上がそのFacebookページのことをFacebookのコンテンツ・モデレーターに報告しました。コンテンツ・モデレーターたちは、Facebookの基準には違反していないという判断を下し、削除されることはありませんでした(後々、マーク・ザッカーバーグはこの件に言及し、運営上の誤りだと認めました)。8月25日、17歳の白人少年が州外からケノーシャに半自動小銃を携えやって来て、抗議活動をしている3名を撃ち、2人が死にました。彼がKenosha GuardのFacebookページを見たかどうかは定かではありません。しかし、そのページは公開されたままで、誰もがそれを見れる状態でした。
Facebook社のスポークスマンのプサテリは、今までのところFacebookページとInstagramアカウントが危険と判断されて封鎖された活動組織・団体は300を超える位ですと言いました。さらに、Facebook社は先週、QAnon(陰謀論を唱える極右組織)に関連する全てのコンテンツを封鎖しました。また、コロナウイルスに関する誤った情報を含むトランプの投稿を削除しました。また、選挙の日の夜から(何時までかはまだ決めていませんが)Facebookのプラットフォームへの政治的な広告を一切禁止する計画であると発表しました。そうした措置は十分ではないし、遅すぎるのではないか言う批評家がたくさんいました。エリザベス・ウォーレン上院議員は、Facebook社の行動が変化したと評価しました。一方で、Facebook社は十分機能していないポリシー自体を変えなければならないし、巨大企業の能力に見合った責任を果たさなければならないと批判しました。
そうした制限をすることは、ソーシャルメディアは保守派を差別しているという概念を生じさせる可能性があります(現に2020年5月にはトランプがFacebookもInstagramもTwitterもGoogleも新左派が完全に指揮統制していると非難するツイートしています。)。事実は全く逆だということは様々な証拠を見れば明らかであるにもかかわらず、右翼はこのことを争点にしようとしています。土日を除いて毎日、タイムズ紙記者のケビン・ルースはFacebook社が提供するツールから提供されたデータを元に米国のFacebookページの中のリンク数トップ10の投稿を明らかにしています。大体いつも、トップ10は極右の有名人の投稿かニュース報道で占められています。先週、そんな状況を典型的に示している日がありました。その日のトップ10には、ドナルド・トランプによる大統領選挙に関する内容が1つ、フォックスニュースの投稿が4つ、CNNの投稿が2つ、TMZ(エンターテイメントやセレブリティに関するニュースサイト)の投稿が1つありました。Facebook社はルーズのトップ10の算出方法に異議を唱えていて、データの分析する方法は様々あるがルースの分析方法ではせっかくのデータが台無しだと非難しています。7月に、FacebookのNews Feedを運営しているジョン・ヘゲマンは次のようにTwitterに投稿しました、「ルースは被リンク数でランク付けしてますが、そうではなくてリーチ数でランク付けする方が良いのです。その方がより正確に人気度を測れるはずです。しかし、それ以前にルースが利用しているデータはFacebook社の社内向けのデータで彼が見て良いものではないんです。」と。♦
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