本日翻訳して紹介するのは、the New Yorker のFebruary 10, 2020 Issueに 掲載された記事です。5月4日みどりの日ですので、環境に関する記事を探して訳しました。英題は、”Can We Have Prosperity Without Growth?”(経済成長無しの繁栄は可能か?)です。
スタッフライターJohn Cassidyによる記事です。彼は主に政治関連の記事が多いです。本日の記事は、経済成長なしに繁栄を維持することが可能か否かということが記されています。世界各国の政府、企業のほとんどは、経済成長することを前提に政策や計画を組んでいます。しかしながら、経済成長を優先することの弊害によって、環境破壊が加速しているとか、貧富の差が激しくなったと指摘する経済学者もいます。結論として、Cassidyは、グリーン成長を目指すべきと示唆しています。グリーン成長とは、OECDの定義によれば、「自然資産が今後も我々の健全で幸福な生活のよりどころとなる資源と環境サービスを提供し続けるようにしつつ、経済成長および開発を促進していくこと」です。ただし、Cassidyは「グリーン成長」のグリーンばかりを重視しすぎてはいけないとも主張しています。経済成長ばかりを重視する旧来からの経済運営もダメで、大切なのは、グリーンと成長のバランスをとることです。
では、以下に和訳全文を掲載しますが、非常に長い記事ですので、要旨を記した後に、掲載します。
要旨
- 世界中の経済政策立案者は経済成長率を最大化することを重視している。
- しかし、「degrowth(脱成長)」論を説くエコノミストも出てきた。
気候変動やその他の環境問題に対する警戒感の高まりによる。 - 経済成長のみを追求することの問題は、環境負荷以外にもある。富の分配が不公平である。
実際、サッチャー以降の英国、レーガン以降の米国では経済成長をやみくもに追求してことで、不平等が拡大し、政治が二極化した。成長の恩恵が一部にしか行き渡らない場合、悲惨な結果を招く可能性がある。 - 2019年ノーベル経済学賞受賞のバネルジーとダフロによれば、経済成長自体が悪いのではない。
各国のGDPが増え、人々の収入が増えれば、貧しい人たちへの所得の移転が起こる。 - 先進国で経済成長率が低いのは問題ではない。適切なこと。
それは個々人の選択の結果である。個々人の選択の結果は正しいという考えは経済学の根幹。 - 近年の先進国のGDP拡大鈍化は、労働力の増加率の鈍化、サービス産業の構成比アップの影響が大きい。
豊かになった国では、労働時間が減り、出生率も下がり労働力が増えない。また、豊かになった結果、サービス業の構成比が高まるが、サービス業は工場と違っての生産性の伸び率が低い。 - 解決策として、米民主党などがグリーン成長を提唱している。
経済成長の為に、急速な技術革新、持続可能なインフラ投資、資源の有効活用の3つを重視。 - 脱成長は問題が多い。
脱成長で経済成長が無くなると、全体的な生活水準が低下する。その際には富者と貧者の対立が激しくなる。政治も二極化する。また、先進国が脱成長したら、現在先進国市場と繋がることで成長しているバングラディシュ、インドネシア、ベトナム等が作っている衣服や雑貨は誰が買うのか? - グリーン成長が唯一の選択肢になる。
経済成長率が低い世界で不可欠なのは、成長の果実が公平に分配されることである。
以上、要旨でした。以下に和訳全文を掲載します。