フォード社の復活は近い!アメリカで一番売れているピックアップトラックF-150のEV版に予約殺到中!

7.

 フォード社から私はマスタング・マッハEを数日間貸し出してもらいました。私はそれを駆ってツーリングに出かけてみました。息子のハリー(23歳)も誘いました。私は、ブルックリンでその洗練された4ドアスポーツカーを借りました。目的地はバーモント州の農場で、距離は160マイル(256キロ)もありました。マッハEの航続距離は、カタログ値では300マイル(480キロ)となっていますし、宣伝でもそう謳われています。しかし、途中でカーナビを見ると、充電が必要であるという警告が出ていました。EVの中で最も高価なパーツであるバッテリーのほとんどは、平均すると8年から10年しか持たないと評価されています。バッテリーの寿命を伸ばすために、フォード社はバッテリーセルが過熱しないよう、80%充電される前に充電を止めることを推奨しています。

 何百回も走ったことのある道だったので、私はガソリンスタンドやファーストフード店などがどこにあるかはカーナビを見なくても分かっていました。州間高速道95号線沿いには、私がよく行くサービスエリアの奥にテスラ社の充電ステーションがあることを知っていました。しかし、テスラが持つ特許の関係で、その充電ステーションでは私が乗っていたマッハEの充電はできませんでした。テスラ社以外のEVは充電できないようになっていたのです。フォード社のEVが利用可能な充電ステーションには、提携しているだけなのでフォードの看板はありません。また、カーナビで探すことができません。フォードパスというアプリを使わないと探せないのです。しかも、その多くは州間高速道の近くにはないのです。

 私はツーリングに出発してしばらくすると、悪名高いニューヨーク市内の午後の渋滞に巻き込まれてしまいました。パンデミック以降、それはますます悪化しているように思えます。スタンフォードまで来たところで、ようやく渋滞がなくなったので、少しスピードを出すことができました。EVは、ガソリン車のように長く出力を上げ続けることができません。というのは、モーターに蓄積される熱を放散するのが難しいためです。しかし、モーターにはギアを切り替えることなく加減速をこまめに行うことができるという利点があります。ガソリンエンジンと違って、モーターはローギヤからいきなりハイギヤにスムースに切り替えることも可能です。私は、ツーリングの際には、ずっと同じ速度で走り続けるよりも、適度に加減速を繰り返して走ります。その方が刺激が有って運転を楽しめるような気がするからです。しかし、マッハEを運転していて思ったのは、アクセルを踏んだ時に物足りなさを感じるということでした。そこで、モードを「高出力」に切り替えて、疑似排気音が出る設定に変えてみました。かなり運転が楽しくなりました。やはり、マッハEという接尾語が付くにせよ、マスタングであることには変わりないのですから、ブンブンいう音がしないと物足りなく感じてしまいます。ハリーは言いました、「いい音だね!」と。

 カーナビには、マサチューセッツ州西部のチコピー・マーケットプレイスというショッピングモールにあるエレクトリファイ・アメリカ社が運営する充電ステーションが一番近いということが表示されていました。カーナビには、そこに辿り着いた時のバッテリー残量も表示されていて24%でした。9時過ぎに到着したため、ショッピングモールの巨大な駐車場にはほとんど車が停まっていませんでした。マッハEのGPS機能が、ホーム・デポの隣にある緑色に光を放っているガソリンスタンドにある4つの充電スポットへと導いてくれました。誰も充電していなかったので、本当にここで充電できるのか、少し不安になりました。

 私は、充電スポットで車からコードを伸ばしてプラグを差し込みました。充電スポットのモニター表示を見ると、充電率74%に達するまでに32分かかると表示されていました。目的地の農場までは、まだ119マイル(190キロ)もありました。バッテリーの容量を24%残したまま、そこまで行けるのか少し心配になりました。私たちはアップルビーズ(全米に展開するファミリーレストラン)の灯りが遠くに見えたので、そこまで歩き、親子でおしゃべりをしながら、リブステーキを食べました。私はスマホで随時バッテリーの充電状況を確認しました。今思うと、目的地までバッテリーが持つか否かわからない状況で、よく平気で飯が食えたなと思います。

 しかし、北上するにつれて気温は一気に華氏40℃(摂氏4℃)を下回りました。その結果、予想走行可能距離もどんどん短くなっていきました。カーナビは天候の変化までは計算に入れていなかったようです。マッハEの宣伝の謳い文句には、「シームレスな楽しい体験を提供する」という言葉があったと記憶していますが、私にはちっとも楽しくない経験でした。しばらくすると、雨も降ってきました。目的地には午後11時30分に到着しましたが、私も息子もずっと航続距離を気にしていたので、すっかり疲れきっていました。まるでバッテリーがほとんど空になったような状態でした。暗闇の中、納屋にあるコンセントに接続して充電をしました。

 マスタング・マッハEは、一般家庭用の120ボルトのコンセントでは一晩かかってもあまり充電できませんでした。カーナビでは、一番近くにあるエレクトリファイ・アメリカ社の充電ステーションを探すことができませんでした。スマホでも電波の届きにくいエリアだったので無理でした。州境を越えてニューハンプシャー州に入ったところにエレクトリファイ・アメリカ社の充電ステーションがありました。そこに向かった際には、フォードパス・アプリを使って経路を確認しようと思ったのですが、安全上の理由から、走行中はそれを使用することができませんでした。フォード社の充電ステーション網は、EVの販売数が増加するに連れて、必然的に充実していくでしょう。その日の私は散々でした。私はやっとの思いで西レバノンにあるウォルマートの駐車場にある充電ステーションを見つけました。しかし、不運なことに、機器に不具合があって使用中止となっていました。何台も車が停まっていて、何人かが車の中から苦情の電話を顧客サービス部門にかけていました。まだ雨が降っていて、充電スポットの周りの窪みに水たまりができていました。150キロワットの電力が流れている充電スポットのコンセントに、車からコードを伸ばしてプラグを差し込もうとした際には、私は全身びしょ濡れでした。しかしながら、感電することもなく、思っていたほど危険ではありませんでした。

 ブルックリンに戻って、私は息子のハリーに、車を購入する際にはEVを選ぶか否かを聞いてみました。すると、彼は、「僕はずっと街中で暮らしてきたから、あまり車の必要性を感じたことが無いんだ。」と、言いました。彼はその代わりに、E-bike(電動自転車)を購入しました。