An Exhausting Year in (and Out of) the Office
オフィス内でもオフィス外でも疲れ果てた 1 年
After successive waves of post-pandemic change, worn-out knowledge workers need a fresh start.
パンデミック以降いくつもの著しい変化があったが、それに疲弊した知識労働者のために大きな変革が必要である
By Cal Newport December 27, 2023
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新型コロナのパンデミックによって知識労働者( knowledge workers )は 4 年にわたって変化と浮き沈みの激しい困難な状況に耐えてきた。まず 2021 年初頭に大きな変化の第 1 波が訪れた。いわゆる大退職時代( the Great Resignation )である。多くの労働者が職場を去った。ピーク時には毎月何百万人ものアメリカ人が仕事を辞めた。そして、2022 年にはリモートワーク戦争( the Remote-Work Wars )が勃発した。これが第 2 波である。在宅勤務を続けたい社員と、それはあくまで一時的な措置と認識し、現場で顔を突き合わせて仕事することが重要と考えている上司との対立が顕著になった。2022 年 8 月にはアップルのCEOであるティム・クック( Tim Cook )が、9 月から全従業員に週に 3 日以上はオフィスで勤務するよう要請した。同社は 5 年前に巨額( 50 億ドル)を投じて最新鋭の新社屋を完成させていたので、彼がそこに従業員を再び呼び寄せようとしたことは理のあることである。しかし、多くの従業員はずっと家に籠もっていたいと考えていた。クックの指示に不満を抱いた従業員の団体は、「いつどこにいて、どんな宿題をするべきか指示して従業員を小学生のように扱うのは止めろ。」と記した書簡を同社の経営陣に送りつけた。
多くの組織でリモートワーク戦争が勃発したが、しばらくして一時休戦状態となった。というのは、ハイブリッドワークスケジュール( hybrid schedules:リモートワークとオフィスワークを組み合わせた柔軟なワークモデル)という妥協案が登場したからである。しかし、第 3 波が昨年の夏に来た。あるフォローワーの多いティックトッカーが、「最近、静かな退職( quiet quitting )という言葉を知った。」という語りで始まる動画を投稿した。彼は、「仕事を辞めるのではなく、必要最低限のことだけをこなす」べきだと提案した。多くの若い知識労働者がこの提案を素晴らしいものと考えた。SNS 上にはこの提案への共感を示す投稿が溢れた。そうした投稿に批判的な者も少なくなかった。この激動の数年間を振り返って私が強く感じたのは、知識労働者の職場は混乱し崩壊しかけているということである。何とかして、それを再構築すべきである。どんな環境で、どんな形態で、何をどうやって行うべきか等々すべてを見直す必要がある。
今現在、つまり 2023 年末時点では、知識労働を根本的に変えるようなプロジェクトは存在していない。さまざまなニュースサイトを見て目に入ってくるのは、AI かストライキに関するものばかりである。知識労働者の働き方の改革に関するニュースは皆無である。多くの知識労働者は、声高に何かを主張するわけでもなく、疲労で引きこもっているようである。「働くことに疲れてしまった。」という投稿がレディット( reddit:アメリカの掲示板型ソーシャルサイト)の知識労働に関するスレッドにあった。「決して終わりのない課題のために、延々と会議、ブレーンストーミング、打合せを続けてるんだけど、これって全く無駄だよね」。知識労働者にとって新型コロナパンデミック以降の数年間で最も大きな変化は、在宅勤務に多くの時間を費やせるようになったことである。しかし、在宅勤務は決して万能ではなかった。やはり在社して業務をこなすのと違う点があるような気がするし、理由は分からないが仕事がはかどらない時もある。リモートワークをしている誰もが疲れているように見える。パンデミックの最中に大退職時代( the Great Resignation )が来て、次に来たのは大疲弊時代( the Great Exhaustion )である。