As Gas Prices Dip, There’s Finally Some Encouraging News on Inflation
ガソリン価格が下落!ようやく、インフレ終息の兆しが見えてきた
Barring an escalation of the war in Ukraine or a deadlier new coronavirus variant, the rate at which prices are rising appears to have peaked.
ウクライナ戦争のさらなる激化、致死率の高い新型コロナの変異株が出現しなければ、物価の上昇は既にピークを打ったと推測されます。
By John Cassidy August 11, 2022
この1年余りの間に、インフレは制御不能になりつつあるという考え方がアメリカ人の間で定着しましたが、それは無理もないことです。7月までの12ヶ月間で、ガソリン価格は44%、燃料油価格は75.6%、食料品価格は13.1%も上昇しました。しかし、ようやく、窮地に立たされていた家計も少し楽になりそうです。
数ヶ月前に全米平均のレギュラーガソリン価格は5.10ドルに達していましたが、AAA(全米自動車協会)の発表によると3.99ドルまで下がりました。今週水曜日(8月10日)には、さらに1円下がりました。全世界規模での原油価格の大幅な下落を反映して、値下がりは58日間連続となりました。燃料油の価格も先月は大幅に下落し、航空運賃やホテルの宿泊料金など、これまでに価格が大きく上昇した他の品々やサービスの価格も下落しています。その結果、水曜日(8月10日)に労働省が発表した最新レポートでは、インフレ率が頭打ちした兆しが見受けられました。消費者物価指数(CPI)は、6月は9.1%だったのですが7月は8.5%まで低下していました。
その数字は、過去12ヶ月間の物価上昇率を示すものです。ですから、下がったとはいえ8.5%という数字は許容できるほど低いものではありません。しかし、その数字だけで、最近起こったことの意外性を十分に理解することはできません。実は、この7月には、物価がまったく上昇しなかったのです。エネルギー価格の下落が家賃と食料品のさらなる上昇を相殺したのです。ですので、季節調整済みの数値も調整前の数値でも、CPI(消費者物価指数) は横ばいだったのです。言い換えれば、7月の1カ月間に限ってはインフレは全く進行しなかったということです。これは、新型コロナによるロックダウンが始まったばかりの2020年5月以降では初めてのことです。ほとんどのエコノミストが予測していた結果ではありませんでした。
新型コロナが発生して以降ずっと続いていたインフレに頭打ちの傾向が見られたのは、消費者物価指数の数字以外にもたくさんあります。木曜日(8月11日)には労働省がPPI(生産者物価指数)を発表しましたが、それもエコノミスト予想と違って良いニュースとなりました。PPIは、生産者が出荷した製品や原材料などの販売価格の変動を調べた数値です。そのPPIが7月は0.5%の下落で、ここ2 年以上では最大の下落幅となりました。CPIが横ばいになったのと同様に、PPIが下落したのもエネルギー価格の下落が主因です。インフレ圧力がようやくいくぶんか和らいできたことを示すシグナルは、エネルギー部門以外でも散見されます。
先月、いわゆるコアCPI(CPI総合指数から変動幅の大きい食料品とエネルギーを除外している)は0.3%の上昇にとどまりました。ちなみに先々月は0.7%の上昇でした。インフレの圧力が緩和されたように見えるわけですが、これは、旅行部門など、これまで大きく価格が上昇していた一部の分野での価格の下落が反映したものです。航空運賃は7.8%、商用車やトラックのレンタル価格は9.5%、ホテルの宿泊料は3.2%下落しました。コンピューターやスポーツ用品などさまざまな耐久消費財の価格もわずかながら下落しました。それは、過去数年にわたって物価を押し上げてきた世界的なサプライチェーンの問題の少なくとも一部が、ようやく解決されつつあることを示唆しています。
けれども、価格が横ばいでもなく、下落もしていないものもあります。家賃はさらに0.7%上昇しましたし、供給不足が続く新車価格も0.6%、食料品価格もさらに1.3%上昇しています。中でもパンの価格は2.8%も上昇しました。食料品価格が上昇を続けていることは特に顕著となってきました。どうして食料品価格だけが下落に転じないのでしょうか。実は、この2、3ヶ月の間に、食料品に関しても物価が下落に転じる兆しが見えたのですが、それを打ち消すような現象が起こっているのです。エネルギー価格と輸送コストは間違いなく下落していますので、小麦や大豆や砂糖など多くの農産物の価格は下がっているのです。しかし、クラフト・ハインツ(Kraft Heinz)社やモンデリーズ(Mondelez)社などの食品メーカーは、依然として価格を上げ続けています。
どうして原材料価格が下がっているのに食品メーカーは値段を下げないのでしょうか。こうした矛盾は、商品価格の変動が最終製品の価格に反映されるまでにそれなりの時間がかかることに起因するものです。一般的にはそのように理解されています。また、大手食品メーカーが利益を水増ししているという見方をする者もいます。いずれにせよ、原材料価格が持続的に下落すれば、いずれは食料品価格も下落に転じるでしょう。消費者にとって好ましい状況が訪れるでしょう。また、そのように食料品価格が下落する見通しがある上に、さらにエネルギー価格が下落すれば、総合インフレ率がさらに大きく低下することは間違いないでしょう。投資銀行ジェフリーズ(Jefferies)によると、7月末以降のガソリン価格の下落だけで、8月のCPIは0.6%低下する可能性があるそうです。EYパルテノン(EY-Parthenon:経営戦略コンサルティング会社)のチーフエコノミストのグレゴリー・ダコ(Gregory Daco)が私に言ったのですが、年末までに総合インフレ率は 7%台前半もしくは6%台後半になりそうだということです。ちなみに、FRBが最も重要視しているコア・インフレ率は 5%台前半もしくは4%台後半だそうです。
結局のところ、インフレ率が連邦準備制度理事会が目標とする2%まで直ぐに下がる見込みはほとんどないのです。ウクライナ戦争が激化して原油価格が再び高騰したり、より致死性の新型コロナの変異株が出現して世界中でロックダウンが続けられれば、直近で下落し始めた物価が再び上昇する可能性もあります。しかし、そのような大規模な災難が起こらない限り、アメリカのインフレは既にピークを過ぎたように思われます。ジェフリーズのアネタ・マルコフスカ(Aneta Markowska)とトーマス・サイモンズ(Thomas Simons)は顧客企業向けのレポートに記していました、「商品価格の高騰やサプライチェーンの問題や旅行の再開による価格上昇圧力はすべて薄れつつある。また、引き続き人件費の高騰の問題は続くでしょうが、いずれインフレ率は4%前後まで下がると予測しています。それが年内であるのか、来年にずれ込むかは現時点では見通せません。」と。
インフレ率が4〜5%である場合と9〜10%の場合では、何事にも大きな差異が出てしまいます。歴史を振り返れば明らかですが、非常に大きな物価上昇が長期間続くと、それに対応すべく人々の行動も大きく変容します。賃金上昇を目的としたストライキが増えますし、それなりに賃金も上昇します。実際、1970年代にはそういうことが起こりました。賃金と物価がらせん (スパイラル) 的に上昇しました。いわゆる、賃金・物価スパイラル(wage-price spiral)に陥りました。しかし、インフレ率がさらに低下していけば、人々の将来の物価上昇に対する期待も低下していくでしょう。実際、そうした現象は既に起きています。今週、ニューヨーク連銀が消費者のインフレ期待に関する最新の調査結果を公表したのですが、「3年後のインフレ期待は6月の3.6%が7月は3.2%に低下し、2カ月連続の低下となりました。1年後のインフレ期待は6.2%で、こちらも6月の6.8%から低下しています。」と記されていました。
ダコは言いました、「アメリカは、賃金・物価スパイラルに陥っているわけではありません。各種指標を見ても、多くの企業経営者と話しても、そんな感じは全くしません。」と。そうしたことも併せて考慮すると、インフレが既にピークを過ぎただろうという見通しは、決して突拍子のないものではないのです。昨年来の大きなインフレの波は去ったわけではありませんが、見通しは徐々に良くなっています。♦
以上
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