本日翻訳し紹介するのはThe New Yorker のWeb版にのみ掲載のコラムで、タイトルは”Beyond the Booster Shot”(ブースターショットを超えて)です。Matthew Hutsonが2月8日(日本時間2月9日)に寄稿したコラムです。氏は、科学やテクノロジー関係の記事を書いています。
サブタイトルは、”Could a “broad spectrum” booster increase our immunity to many pathogens simultaneously?”(生ワクチン(弱毒化したウイルスが原料)を接種することによって、幅広い病原体に対する免疫力が高まります。その現象を「訓練免疫」と言います。)です。
さて、このコラムには、”booster shot”という語が出てきます。今現在、巷で”booster shot”(ブースター・ショット)という英語を目にしたら、ほとんどの方が新型コロナの3回目の接種だと思うでしょう。私もそう思いました。しかし、このコラムの”booster shot”は、そういう意味ではありませんでした。
結論を言うと、”booster shot”は、免疫力を高めるワクチン接種という意味でした(”booster”という語は、元々は「後押しする人(もの)」という意味です。”shot”は接種です)。
このコラムを読んで私が初めて知ったことを以下に記します。
- 特定の感染症に対するワクチンを接種すると、他の感染症に対する免疫力も高まることがある。
- 上記1の現象を「訓練免疫」と言う。
- 訓練免疫は、弱毒化したウイルスを丸ごと使っている生ワクチンで顕著にみられる。
- 対照的に不活化ワクチンは、ウイルスを切り刻んだ断片が使われており、訓練免疫が起こっても軽微である。
- ワクチン接種の元々の目的は、特定の感染症のウイルス等に対応する獲得免疫を備えさせることである。しかし、昔から、他の感染症に対する防御力も高まることは認識されていた。
- 上記5で認識されていたと記したが、それは観察的研究によって認識されただけであった。観察的研究では、サンプルの偏りを防ぐことが出来ないていないので、認識できたことが正しいとの証明はできない。
- その認識が正しいとお墨付きを与えるためには、ランダム化プラセボ対照実験を行う必要がある。
- 生ワクチンが対象となる感染症以外のウイルス等に認識して攻撃できるようになるのは、生ワクチンに含まれていた弱毒化したウイルスを認識できるようになるのだが、それに似ている広範囲の感染症ウイルスも認識できるようになるからであると考えられている。
- BCGワクチン(結核を防ぐ)を接種すると、新型コロナに感染する確率が下がるとの研究が多い。結核菌と新型コロナの共通祖先は30億年遡らなければならず、類似点は多くない。それでも訓練免疫が備わって、感染を防ぐ。
- 上記9は、1つのワクチンを接種することで、かなり広範囲の感染症に対する免疫力が強められる可能性を示すものである。
以上が、私が初めて知ったことでした。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をお読みください。