バイデンは、一般教書演説で何を訴求すべきか?経済が強いことを認識してもらえなければ、再選の目は潰える!

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What Biden Should Say About the Economy During the State of the Union
バイデンは一般教書演説で経済について何を語るべきか

With the President’s economic approval rating standing at just forty per cent, it’s imperative for him to highlight some of his substantive achievements and talk about the future.
バイデン大統領の経済政策に対する支持率はわずか 40% にとどまっている。バイデン大統領は類稀な実績を強調し、未来について語ることが重要である。

By John Cassidy March 5, 2024

 木曜日( 3 月 7 日)の夜、ジョー・バイデン大統領が一般教書演説を行う。先週末に各種世論調査の結果がリリースされた。浮き彫りになったのはバイデンが再選を果たすために対処すべき課題がいくつもあるということである。高齢懸念、移民大量流入、イスラエルのガザ侵攻、景気動向などである。リアルクリアポリティクス( RealClearPolitics )によるドナルド・トランプとの直接対決を想定した世論調査では 2 ポイント差をつけられている(それ以外の候補者を含めた調査では 2.8 ポイント差をつけられている)。調査結果を見てバイデン大統領が特に憂慮すべき点は、多くの有権者が生活費の上昇に注目していることである。彼の経済の手綱さばきはあらゆる面で優れているが、残念ながらその実績はあまり認識されていないようである。世論調査の平均値では、バイデン大統領の経済政策に賛成している有権者は 40.2% のみである。実に 57.4% が反対である。再選の可能性を高めるためには、この数字を改善する必要がある。今回の一般教書演説は、自身の経済政策の成果を有権者に知らしめる絶好の機会である。以下に、彼がどのような内容の演説をすべきかを提案する。彼のような親しみやすい構文でない点はご容赦いただきたい。

 皆さん、こんばんは。13 ヶ月前に私がこの神聖な民主主義の議場で最後にお話しして以降、アメリカ経済は新型コロナパンデミックから力強く回復し続けています。昨年の今頃はインフレ抑制のために FRB が利上げを決定したため、多くのエコノミストが景気後退局面入りすると予測していました。しかし、景気後退どころか、2023 年の経済成長率は前年を上回りました。前年の 1.9% が 2.5% に改善したのです。私の大統領就任後の 3 年間のインフレ調整後の GDP 成長率は平均で 3.4% となっています。ことさらに強調するわけではないのですが、過去の大統領では平均成長率が 1% にも満たなかった者もいるのです。

 そして、もう 1 つ比較したい事項があります。以前にも申し上げたことがあるかもしれないのですが、アメリカが他の先進国を経済面で上回っているということです。私の言葉を鵜呑みにするのではなく、経済協力開発機構( OECD )がどう評価しているかを確認していただきたい。OECD は、パリの緑豊かな素敵な地域にあり、さまざまな国から来た経済オタクが集っている機関です。数週間前に OECD が発表した最新の世界経済見通しによると、2023 年のアメリカの成長率は G7 の他の国々を大きく引き離しています。この数字に迫るのは日本だけでした。2024 年についても、我が国経済はユーロ圏の 3.5 倍、日本の 2 倍のスピードで成長すると予測されています。もし、新型コロナパンデミックからの立ち直りを競うオリンピックが開催されれば、チーム USA は金メダルを授与されることとなるでしょう。

 国内の話に戻しますが、過去 12 カ月間、雇用の伸びも堅調に推移しています。2023 年 1 月から 2024 年 1 月の間で雇用者数は 290 万人以上も増加しました。旺盛な労働需要のおかげで、失業率はわずか 3.7% にとどまってます。 2 年間も 4% を下回っているのですが、これは、ビートルズがまだ活動していた頃以来のことです。私がロースクールを卒業し、ウィルミントンで公選弁護人として働いていた頃以来のことなのです。

 仕事、仕事、仕事。私が長年にわたって口にしてきたことを覚えておられる方も少なくないでしょう。仕事とは給料以上のものであり、自らの尊厳と威厳に関わるものである、と私の父はいつも私に言っていました。現在、堅調な労働市場のおかげで、歴史的に不利な立場に置かれてきたグループに属する多くのアメリカ人が、その尊厳と威厳を取り戻し、そして安定的に給与を得られるようになっています。2022 年 9 月以降、黒人の失業率は 6% 以下となってます。労働省が 50 年以上前に記録を取り始めて以来、この数字がこれほど長期間にわたって低かったことはありませんでした。ヒスパニック系の失業率はわずか 5% です。障害者の失業率は 6.6% です。私が就任した 2021 年 1 月の 12% から大きく低下しています。

 ここで私が申し上げたいのは、私や民主党のおかげでこうした状況になったと賞賛しているわけではないということです。賞賛すべきは、多くの起業家精神に溢れたアメリカ人です。昨年 1 年間で 550 万もの新規事業が立ち上げられました。記録的な数字です。そして新型コロナパンデミックが収まってから労働力に加わった、あるいは再び労働力に加わった数え切れないほどの勤勉なアメリカ人たちも賞賛されるべきです。常々申し上げてきましたが、アメリカの労働者ほど協調性と勤勉さを併せ持つ者はいないのです。どこの国を探してもいません。

 しかし、健全な経済成長には、民間部門と公的部門の両輪が噛み合うことが不可欠です。私は大統領就任後、景気を押し上げ、長期的にアメリカ経済を強靭にするための前例のない措置を数多く講じてきました。議会と協力して、アメリカ救済計画法、インフレ削減法、超党派のインフラ投資・雇用法、CHIPS 法(半導体・科学法)などを成立させました。これらの法案は機能したでしょうか?多くの成果が特に製造業で出ています。昨年、アメリカの製造業は新工場やその他の施設への投資を 60% 以上増やしました。商務省の統計によれば、ハリー・トルーマンが大統領在任して以降で最大の増加です。

 一方で、このような状況下でも多くのアメリカ人が食卓に食べ物を並べるのにも苦労しています。そうした事実を無視するわけにはいきません。誰もがご存知のとおり、過去数年間、生活必需品の価格が上昇し続けています。食料品、自動車保険料、家賃に至るまで、あらゆる価格が上昇しています。インフレが世界的に広がっており、その影響からアメリカも逃れることができない状況です。多くのアメリカ人が、購買行動を変えたり、休暇をキャンセルしたり、新居を探す計画を延期したりしなければならない状況に陥っています。

 ありがたいことに、過去 1 年半の間にインフレ率は急激に低下しました。現在は 3.1% で推移しています。卵、重油、ガソリン、中古車など、2021 年から 2022 年にかけて高騰した品目の価格はかなり下がりました。それでもまだ高すぎます。さらに、インフレ抑制法のおかげで、何十万人もの高齢者が、インスリン代を以前より大幅に減らせています。旧来はメディケア受給者の自己負担の平均月額は約 63 ドルでしたが、現在では 35 ドルに抑えられています。固定収入のある高齢者にとって、この負担軽減策の意義は大きいでしょう。負担軽減の対象となるのは、メディケア受給者だけではありません。昨年の一般教書演説で私は、年齢や保険加入の有無にかかわらず、すべてのアメリカ人に月額 35 ドルの上限を拡大するよう求めました。本日報告できることは喜ばしい限りですが、今年に入って多くの大手製薬会社がこの方針を受け入れ、場合によっては 70% 以上の値下げを行ってくれました。これはとても良いニュースです。

 しかし、まだやるべきことがたくさんあります。多くの日用品の価格は依然として高止まりしています。もし私が大統領に再選されれば、勤勉なアメリカ人のコスト負担を軽減するために、できる限りの努力を続けることをアメリカ国民に約束します。場合によっては、既存の法律に頼ることになるでしょう。例えば、2025 年からはメディケア受給者全員の処方薬費用の上限が年間 2,000 ドルになります。また、利益を水増ししている企業にそれを顧客に還元するよう圧力をかけたり、独占禁止法を利用して競争を促進するなど、他の政策も総動員するつもりです。先週、連邦取引委員会が大手スーパーマーケット・チェーン 2 社の合併を阻止するよう提訴しました。商品価格の上昇につながる可能性があるわけで、とうてい容認できるものではありません。また、中低所得者層がより少ない負担で大学を卒業できるようにしなければなりません。人種間の貧富の格差も是正しなければなりません。初めて住宅を購入する人の支援も強化しなければなりません。これら、国が取り組むべき長期的で大きな課題に取り組むための新たな方策を今後も模索して参ります。

 まだまだやるべきことがたくさんあります。多くの人たちが世論調査会社に対して、景気回復が自分たちにまで浸透していないと回答するのも理解できます。しかし、決してそんなことはありません。その点で少し良いニュースをお伝えしたい。12 月にウォール・ストリート・ジャーナル誌が行った世論調査によると、去年 1 年間で自分の経済状況が正しい方向に進んだと考えるアメリカ人はわずか 34% でした。日曜日( 3 月 3 日)に発表された 同誌の世論調査では、この数字が 43% に上昇しています。2 カ月で 9 ポイントも改善しています。もちろん、私はこの数字が 50% を大きく上回るように取り組んでいきますが、確実に正しい方向に向かって進んでいるのです。ここ数年の皆さんの努力が報われつつあるのです。私は皆さんを、アメリカ国民を信じています。共に行動すれば、私たちにできないことはないのです。♦

以上