本日翻訳し紹介するのはThe New Yorker のDecember 20, 2021 Issueに掲載の記事です。タイトルは”Can “Distraction-Free” Devices Change the Way We Write?”(「気を散らさない」ワープロが開発されたら、もっと上手く書けるのか?)です。
サブタイトルは、”The digital age enabled productivity but invited procrastination. Now writers are rebelling against their word processors.”(ITテクノロジーによって生産性は上がったが、書き物の能力は高まっていません。現在、書き物をする者は、ワープロに全然満足していない。)です。Julian Lucasによる記事です。氏は、スタッフライターです。年に4〜5本の記事が誌面に掲載されています。翻訳してみるのは今回が初めてです。
さて、この記事はワープロソフトとかライティングツール、ライティングアプリに関する記事です。大まかに趣旨を記しますと下のとおりです。
- マイクロソフトのワードは使いにくい
- ワードには、紙にペンで書くのと違う不便さが有る
書いている付近しかディスプレイに現れず、全体が俯瞰できないので、文章の全体像を理解しづらい
容易に削除や修正が出来るので、ついつい延々と推敲を続けてドツボにはまってしまう
書き物中にネットで調べ物が容易に出来る等、気が散る要素が多い - ワードを使わなくても済むような、書き物に集中するための様々なライティングツール、プログラム、アプリが市場に溢れている
“iA Writer”、”Freewrite”、”reMarkable”などの製品が該当する。”iA Writer”、”Freewrite”の2つはマイクロソフトワードの機能を劣化させたような(機能を絞った)製品。要は、機能を減らしたら、気が散らないだろういうコンセプトに基づいて開発されている。”reMarkable”タブレットは、方向性が違う。紙とペンの使い勝手を出来る限り忠実に再現し、デジタルの便利さをプラスした製品。 - ライティングツールはいろいろあるが、結局のところ、文章のクオリティは書き手の能力に依存する
当たり前のことですね。紙とペンの時代、タイプライターの時代、ワープロ・パソコンの時代のいずれにおいても、能力の劣った書き手が良いライティングツールのおかげで素晴らしい文章を書き上げることはありません。
以上がこの記事の趣旨でした。
私が疑問に思ったのは、ワープロソフトってそんなに不便とか便利とか使いやすいとか使いにくいとか考えるものなのか?ということです。日本だと、ほとんどの人は会社ではマイクロソフトのワードを使っていると思います。だから、不便だから他のソフトを使いたいとか、もっと使いやすいソフトを使いたいと言う人は皆無ではないかと思います。会社のパソコンに勝手に入っているのだから、それを使うという選択肢しかないわけですから。むしろ、個人で買ったら結構な値段がしますから、私なんかはありがたいと思って使っているくらいです。
日本人と違って、米国人にはマイクロソフトのワードが使いにくいと考えている人が結構多いようです。違いの原因は2つあると思います(すいません、この意見は私の個人的な意見で、記事とは全く関係ありません)。
1つは、国民性の違いです。日本人だと、マイクロソフトのワードが使いにくいと思っても、それは自分が使いこなせていないだけだと考える人が多いのではないでしょうか。それで、本屋に行ったり、Amazonで「できる・・・」とか「サルでもわかる・・・」とか「ワンコインでわかる・・・」という本を買ったりする人が多いようです。
もう1つは、日本人の場合、ワープロを使うことで得られる恩恵が米国人より大きいということがあると思います。それで、不満が少ないのだと思います。日本人の場合、ワープロを使うとひらがなを入力するだけで漢字が表示されるというメリットを享受出来ます。この恩恵ってとても大きいですよね。実際、読めるんだけど、書くことはできない漢字ってたくさんあると思います。もし、ワープロが無かったら仕事の際には辞書が手放せなくなると思います。もちろん、米国人もワープロを使う際にスペルチェッカーでミススペルとかのチェックを出来るわけですから恩恵を享受しています。それでも、日本人が受けている恩恵と比べたら小さいと思います。それで、日本人は米国人よりワード等のワープロソフトに対して不満が少ないのだと推測します。
また、この記事を訳し終わった後、気になったので、日本で”iAWriter”、”Freewrite”、”reMarkable”などを使っている人がいるのかを調べてみました。”Freewrite”は結構使っている人がいるみたいです。プロの物書きの方や研究者やブロガーで使われている方がいるのが確認できました。物書きの能力が高い方が、さらに良い文章を書くために使われているようです。この記事の著者は、ツールよりも書き手の能力の方が重要であると断じています。しかし、プロほどツールにこだわるということもあると思います。物書きをする機会の多い方で、興味のある方は、利用してみてはいかがでしょうか。私の経験では、スポーツを始める際にギアにお金をかけると長続きするし、上達も早いような気がします。ですので、お金が少しかかりますが、物書きを楽しんでおられる方は利用を検討しても良いのではないかと思いました。
話がそれてしまいましたが、記事の詳細は和訳全文をご覧ください。以下に和訳全文を掲載します。