本日翻訳し紹介するのは The New Yorker の Web 版に 2 月 15 日に投稿された Keith Gessen のエッセイでタイトルは、”Can Ukraine Still Win?”(ウクライナが勝つ可能性?)となっています。
Keith Gessen は作家で、雑誌を創刊したり、大学等でライティングを教えていたりします。育児に関する本も出しています。モスクワ出身なので、ロシアに関する寄稿も多いようです。スニペットは、” As Congress continues to delay aid and Volodymyr Zelensky replaces his top commander, military experts debate the possible outcomes. ”(連邦議会が支援を遅らせ続け、ヴォロディミル・ゼレンスキーが最高司令官を交代させる中、軍事専門家の多くは起こり得る結果について議論している。)となっています。
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一口コメント
さて、今回翻訳したエッセイは、ウクライナとロシアの戦争に関するものでした。ウクライナはつい先日アウディーイウカから完全に撤退するなど、苦境に陥っています。現時点では、ロシアが勝利する可能性が高まったと感じている人が多いのではないでしょうか。このエッセイのタイトルは、「ウクライナはこの戦争に勝利することはできるか?」で、最後まで読んで分かったのですが、ウクライナが勝つとも、負けるとも記されていません。予測不能だとしています。ただ、勝つ確率を上げる方策があると指摘しています。今は一時的に戦線を縮小してでも体制を再構築した上で、2025 年に万全の体制で反撃に出るのが良いそうです。いやはや、なかなか気の長い話です。こんな状態がまだまだ続くのかと思うと、目眩がします。
このエッセイの主旨は、戦争の行く末を予想するのは不可能であるということです。そんなこと無いだろう、予測できるだろうと思う人がいるかもしれません。でも、予想は本当に難しく、ほぼ不可能です。ウクライナ戦争の予想を例に挙げます。まず、プーチンはこの戦争の予想を完全に誤りました。彼は、短期で終結させられると考えていました。実際には違いました。彼は当事者だから、客観的に冷静な予想ができなかったのかもしれません。でも、当事者でなく冷静な分析ができるはずの傍観者の予想も大きく外れていました。アメリカ統合参謀本部議長マーク・ミリーは、ロシアが侵攻する前に、侵攻したら 72 時間以内にロシア軍はキエフを占領するとの予測を議会指導者たちに説明していました。あらゆる情報を収集して分析しているアメリカの軍制服組トップでさえ、予想できないものなのです。おそらく、ロシアがウクライナを侵攻し始めた時点で、何年も戦争が続くと予想した人は 1 人もいなかったのではないでしょうか。
私なんかは、自分なら正しく予想できるし、予想できていたと思ったりします。でも、そんなはずはありません。特殊な能力があるわけではありませんから。思いおこせば、ロシア軍が侵攻開始した際には、ロシア軍の能力が低いことを示すニュースをたくさん目にしました。それで、ウクライナ勝利を予想しました。ウクライナ軍の 2022 年秋以降の反転攻勢に勢いがあった時には、ウクライナの勝利は近いと予想しました。そして、今現在は、ロシアの勝利が確定的という予想に転じています。つまり、私は予想したわけではなく、その時々の戦況を見て、その時点で勢いがある側が勝つと感じただけなのです。兵員数、装備、軍トップの統率力、戦闘遂行能力、国力、地形、気候、支援国等々に鑑みて予測したわけではないのです(それらに鑑みて予想したとしても、正しい予測は不可能だが)。
現時点では、ロシア軍の攻勢をウクライナ軍が押し返せなくなっており、ロシアの勝利を予想している人が多いのではないのでしょうか。でも、上で記したとおり、そもそも戦争の行く末は予想不可能なのですから、その予想が当たる確率が高いわけでもないのです。半年後、1 年後には、ウクライナ軍が突破口を開いて反転攻勢に出てロシア軍を蹂躙しているかもしれません。
さて、詳細は和訳全文をお読みいただきたいのですが、歴史を紐解くと戦争に勝利する確率は、民主主義国家の方が独裁国家より高いそうです。これは、ウクライナにとっては朗報です。理由は、民主主義国家は勝てないような戦争に突入する確率が独裁国家よりも低いからだそうです。もう 1 つ歴史が証明している事実があるのですが、それはウクライナからすると朗報ではありません。民主主義国家は、戦争が長期化すると独裁国家よりも脆いということです。うーん、知らない方がよかったかも。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をお読みください。