本日翻訳し紹介するのは The New Yorker の June 23, 2025, issue, に掲載された Siddhartha Mukherjee による記事で、タイトルは” The Catch in Catching Cancer Early “(癌を早期発見することの落とし穴
)となっています。
今回翻訳した英文記事を書いた Siddhartha Mukherjee は、スタッフライターではありません。現役医師で 1 年に 1 本程度記事を寄稿しています。私が過去に彼の記事で読んだのは、新型コロナや癌に関するものでした。今回翻訳した記事は、癌のスクリーニング検査に関する記事です。この記事を読んで驚いたのですが、早期に癌を発見するための各種検査はそれほど意味が無いのです(これが、この記事の主旨ではありません)。
現状では、そうした検査を必死にやることで、おそらく放置しても問題ない良性の腫瘍が膨大に見つかります。それらは、身体の中にあっても悪さをしない腫瘍なのですが、成長もせずに長期間体内に存在しています。それ故、各種癌検診( 1 年毎実施)とかで見つかることが多いのです。逆に侵襲性が高く死に至る可能性が高い癌は、症状が急激に現れることが多いのです。それで検査を受けることとなり、そこで見つかるわけで、1 年毎の検査の間に見つかることが多いのです。
各種癌検診をすることによって処置する必要のない良性の腫瘍ばかりが大量に見つかる。何の問題も引き起こさないように思いますが、実はこれが大問題なのです。良性腫瘍でも大量に見つかれば追跡調査が必要になります。定期的な検査を何度もすることになり、切除して組織を調べる、外科的手術をする等が為されます。検査をせず、それらが見つからなかったら、それらはすべて発生しないことです。したがって、これらの作業が増えることで医療機関の施設や人的資源が無駄使いされるのです。
私がこの記事を読ん意外に思ったのは、早期に癌を発見する目的で行う各種癌検診はほとんど効果が無いということです。ここで効果が無いと言っているのは、各種検査を受けても癌死亡率を減らることはできないという意味です。意外でしょ?癌死亡率を下げれるでしょ、と思う人もいるかもしれません。しかし、そんなことはこれまでに一度も証明されていません。
そもそもある検査が癌死亡率を下げること証明するためには臨床試験をする必要があります。しかし、そんなものはこれまで一度も行われたことはないのです(ある検査が腫瘍を発見できるという臨床試験は行われているが、死亡率を下げることを証明する臨床試験は行われたことがない)。それを証明しようとすれば、厳格なランダム化臨床試験が必要ですが、膨大な数の被験者を集めて、継続して検査を実施して、厳格な分析をする必要があって、膨大な資金が必要な上に、10 年以上の年月を要します。こんなことに耐えられる企業があるはずはないのです。
さて、各種癌検査が癌死亡率を下げるわけではないのですが、では、どうすべきなのか?私見ですが、酒やタバコを控えて、出来るだけストレスを貯めないようにするくらいしか思いつきません。それが効果があるかどうかはわかりません。酒やタバコを我慢するとストレスが溜まるだろっとおっしゃる方がおられるかもしれませんが、そういう方は思いっきり飲んでプカプカしてください。ストレスが一番悪いようです。あと、癌で亡くなる方が多い家系があります。皆様の周りにもそういう方がいるはずです。この記事と矛盾しますが、自分の家系がそうだという方は毎年欠かさず癌検診を受けるべきと思います。
話がそれましたが、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧ください。