結.宇宙ゴミ回収技術の開発・確立が待たれる。
1979年、アーサーC.クラークは、未来では巨大なレーザー兵器が開発されるので、宇宙空間のデブリはそれによって焼き尽くされるだろうと予測していました。当時、NASAはレーザー兵器を使うことを検討したものの、実際に研究をすることはありませんでした。他にも選択肢がいっぱいあったからです。多くの企業が、宇宙空間に遺棄された機器類ををどのようにすべきか研究していました。遺棄されたものを除去する方法を考える企業がありましたし、再利用を検討している企業もありました。Nanoracks(ナノラックス)社は、軌道を周回するロケット本体を居住可能な宇宙ステーションに転換する技術を研究していて、既に宇宙空間で金属を切断してもデブリとなってしまうクズを出さない工作機械の実験をしていました。東京を拠点とするアストロスケール社は、ベンチャー企業ですが1億4,000万ドルを調達して、今年中に宇宙空間のデブリを掴んで除去する人工衛星を発射する予定です。
現在80歳のケスラーは、デブリを除去する技術で有効なものは今のところ無いと言いました。彼は言いました、「やはり、技術的な難易度が非常に高いのです。先は長いですが、地道な研究が積み重なっていつの日か技術が確立されるのを祈っています。」と。
数年前、ESA(欧州宇宙機関)はエンビサットを宇宙空間から除去するのは非常に難易度が高いと見なしていました。初めて宇宙空間から除去される物体として、エンビサットは相応しくないと考えられていました。それで、いくつかの宇宙空間に遺棄されている物体をリスト化して提示しました。それで、そのリストの内のどれかを除去する実験を行う事業者や研究機関を募集しました。13の事業体が応募しました。その中にはエアバス社やアストロスケール社も入っていました。2019年12月にESA(欧州宇宙機関)は事業者選定を終えましたが、結果は少し意外なものでした。スイスの小さなスタートアップ企業ClearSpace(クリアスペース)社が選ばれました。1億ユーロほどの費用でロケット本体1個の回収を請け負いました。まだ試されたこともない技術を使う計画でした。ロボットペンチを使用する計画です。ロボットペンチは何度も利用可能です。ESAの総裁は言いました、「歴史が始まってから現在までの間に壊れてしまった全ての船が海の上を漂流していると想像してみてください。海は邪魔なものばかりで、航海は非常に危険になるでしょう。それは、まさしく現在の地球周回軌道の状況と同じです。この状態を放置することは許されません。」と。
宇宙空間からデブリを取り除くということを最も強力に進めているのは欧州でした。一方、ケスラーがNASAで取り組んでいた実験ではあまり進捗が見られませんでした。2018年、リムーブ・デブリスが網を使った実験を行った直後、私はジャー・シー・リウと話をしました。彼は、現在はNASAのデブリ除去の研究に携わっています。トランプ政権は最近、NASAの新しい目標について言及しました。それは、再び月に人類を送り込むというものでした。非常にコストのかかるミッションです。リウは、以前の研究では宇宙空間からデブリを除去することは喫緊の課題であると主張していましたが、現実的に考えるとそれが優先して取り組まれることは無いだろうと言っていました。取り組むべきは、さらなるデブリの発生を防ぐこと、さらなる研究、実験だと言っていました。彼は、人工衛星を利用して1センチ以下の物体の調査をすることを許可されていました。今年、私はNASAのデブリ除去研究の進捗状況を確認しようとしましたが、研究は中止されていました。NASAは私がリウと接触することを禁じました。
しかし、リウがモデル化して推測していたように、地球周回軌道では重大な衝突事故が起こる可能性が高まるばかりです。現在、いくつもの衛星コンステレーション(特定の方式の基づく多数個の人工衛星の一群)計画が検討されています。中でもイーロン・マスクが計画している計画は規模が大きく、メガ・コンステレーション計画と呼ばれ、1,600個もの人工衛星を打ち上げる予定です。ある研究によると、現在のペースが続くと、今後10年間で5万個の新しいインターネットアクセス用の人工衛星が打ち上げられます。それでなくても、低周回軌道には宇宙ゴミが増え続けています。今年の1月には、ピッツバーグ上空で、遺棄された宇宙望遠鏡と故障した軍事衛星のニアミスがありました。約15メートルの距離まで接近しました。5月には、20トンの中国のロケットがニューヨークの上空を通過してからわずか15分後に大西洋に落下しました。ニューヨークには、非常に大きな物体が比較的低い高度をもの凄いスピードで通過したことを覚えている人が沢山いるのではないでしょうか。ほぼ同時期に、ロシアの衛星打ち上げ用のロケットがインド洋の数百マイル上空で爆発しました。確認がとれたものだけでも、その際に生まれたデブリは65個ありました。NORAD(北米航空宇宙防衛指令部)のカタログはまたアップデートされなければなりません。
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