深刻化する宇宙ごみ問題!スペースデブリ対策はどこまで進んでる?現状と今後の課題

2.増え続ける宇宙ゴミ(スペースデブリ)

1957年の秋まで、ビッグバンが起きてから140億年の間、宇宙は手つかずの状態でした。その後、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)が地球周回軌道上の人工物のカタログを作成し、識別番号1と2が登録されました。その2つは、スプートニク1号(4本の棒状アンテナが付いたをアルミニウム合金の球体)と、ソ連がそれを打ち上げるために使ったロケットです。それらは、宇宙時代の幕開けを告げるものでした。スプートニク1号は楕円軌道で地球を周回しましたが、高度が非常に低かったため、空気抵抗の影響で3か月程で落下しました。翌年、NASAは識別番号 4となる、ヴァンガード1号を地球周回軌道のもっと高高度に打ち上げました。その後、1964年に交信途絶となりましたが、その後も軌道を維持しており現在も地球を周回しています。冷戦の最中において、スプートニク1号とヴァンガード1号は、明るい未来の到来を告げる象徴でした。しかし、現在では、それらは宇宙ゴミの象徴となっています。
 1957年以来、人類は1万個近くの人工衛星を打ち上げてきました。現在、それらの内、約2,700個が機能していないか、故障しています。それらを合わせると、数十億ドルのコストが掛かっています。元々維持し続けるよりも遺棄してしまった方が安上がりであるという前提で、発射されたものです。いくつかの人工衛星はスプートニクのように燃え尽きました。数千個もの人工衛星がバンガードと同様に何十年、何百年も軌道上を周回し続け、宇宙ゴミとなります。それらは、宇宙飛行士や無人宇宙船にとって非常に危険なものです。
 宇宙ゴミとなるのは、人工衛星以外には、数千もの使用済みロケット本体(上段)があります。また、無数の小さな物体があります。それは、摩耗や衝突や爆発によって生み出される浮遊物で、ボルトや他の小さな金属片などです。中には奇妙なものもあります。識別番号43205は、イーロン・マスク が2018年に打ち上げたテスラ・ロードスター(操縦席にマネキンを乗せていた)です。セレスティス社は、人間の遺灰を詰めたカプセルを軌道に投入し、それを約250年間軌道に留まらせるサービスを提供しています。映画「スタートレック」のプロデューサーのジーン・ロッデンベリーの遺灰は、識別番号24779として打ち上げられました。スペースシャトルでは、宇宙飛行士が生活していますのでし尿の処理が問題となります(宇宙空間では、尿は出た瞬間にかすかな雲状となります。誰もがとても美しいと感じるようです)。2007年、スペースシャトルは14,000ポンド(6.3トン)のアンモニアが入ったタンクを投棄するミッションを実行しました(そのタンクは後に南太平洋上で燃え尽きました)。宇宙飛行士が、宇宙遊泳中に誤って物体を軌道に落としてしまうこともあります。カメラ、ペンチ、手袋、鏡、10万ドル相当の工具が入ったバッグなどです。
 大きさにかかわらず、誰の所有物かにかかわらず、宇宙空間で何かを回収するということは非常に困難です。それが出来る機会はそうそうありませんでした。米空軍は地球を周回する約26,000個の人工物を追跡しています。しかし、米空軍がカタログ化しているのは、10センチメートル以上のもののみです。されに小さいものを含めた総数は膨大でしょう。ある推定によると、1ミリメートルサイズのデブリは、1億個ほどあり、1ミクロンサイズのデブリは100兆個あるそうです。まさに宇宙空間はゴミだらけの状態なのです。