本日翻訳し紹介するのはThe New Yorker のWeb版にのみ掲載のコラムで、タイトルは”How a Milder COVID Variant Is Creating a Health-Care Crisis”(重症化率の低いオミクロン株が、どのようにして医療崩壊を引き起こすか?)です。収束はまだ先かな?
1月21日(日本時間22日)に投稿されたコラムです。Clayton Daltonによる寄稿です。氏は、現役の医師で医療関係のコラムをしばしば寄稿しています。サブタイトルは、”Omicron may be less dangerous on an individual level, but hospitals are still overwhelmed, with dire ripple effects.”(オミクロンか株は個人レベルではそれほど危険ではないかもしれません。しかし、病院は依然として逼迫状態にあり、その影響が拡大しつつあります。)となっています。
このコラムの主旨は、次のとおりです(筆者は、米国の医療崩壊は近い。もう既に崩壊しているかもしれないと論じています)。
- オミクロン株は感染力は強いものの、重症化する率は低いという報告が多い。それを受けて、まもなく新型コロナはインフルエンザのような一種の風土病のようになる日が遠くないという期待が高まっている。しかし、それはいくぶん楽天的すぎると言わざるを得ない。
パンデミック以降、2年間も我慢しているので楽観視したい気持ちは分かるが、足元の現実をよく見なければならない。 - オミクロン株の重症化率が低いというのは、デルタ株と比較してのことであり、武漢で発生した初期のウイルスと比べたら重症化率は同等である。つまり、オミクロン株は武漢ウイルスと重症化率が同等のままで感染力だけ強まったものと言える。
オミクロン株は重症化率が低くても感染者数が多いので、入院患者は再び増えつつある。 - パンデミックが始まってからの2年間で、激務に耐えかねて離職した医療従事者が大量にいる。
人手不足で医療機関の受入れキャパが以前より小さくなっている。また、新型コロナ患者関連の入院者数が減らない上、それ以外の病気の入院者も増えつつある。
パンデミック以降で受診を控えていた患者で、2年経って重篤化してしまった者も多い。 - 医療現場では、気管内挿管用のチューブや輸血用血液や迅速検査キット等の必要物資も不足しつつある。
- 医療現場はかなり逼迫した状況である。楽天的にならず、ステイホーム、マスク着用、ワクチン接種率アップなど自分自身と周りの者を守る行動を続けるべきである。それが医療崩壊を防ぐことに繋がる。
以上が主旨です。
現場の状況をいろいろ知ると、楽天的になるのはまだまだ早いのかなと思いました。
さて、私が悩んだのは、 “endemic”という語の訳し方でした。辞書を引くと形容詞で「一地方特有の、風土性の、特有で、その土地特産の、特有で」という意味と、名詞で「風土病」という意味が載っています。でも、新型コロナがインフルエンザのように普通の感染症になることを、「もうすぐ新型コロナは風土病になる」という風に訳すと日本語として少し違和感があります。なので、その部分は文脈によって適当な日本語に訳してみました。このコラムには、 “endemic”という語の由来が記されていたので、訳す際にはその意味が伝わるようにしてみました(ちなみに、「“endemic”(風土性)という語は、”in people”もしくは”among people”を意味するギリシャ語が語源で、病原体と宿主が均衡状態を保っていることを意味します」と記されていました)。
では、以下に和訳全文を掲載します。