本日翻訳し紹介するのはthe New Yorker のOctober 25, 2021 Issueに掲載の記事で、タイトルは”How an Adoption Broker Cashed In on Prospective Parents’ Dreams”(金の亡者の養子縁組斡旋業者が養親の将来の夢を踏みにじった)です。
サブタイトルは”In just a few years, a Michigan woman took in millions of dollars, faking adoptions and ruining families’ lives along the way.”(わずか数年の間にミシガン州の女性は養子縁組斡旋に絡む詐欺で数百万ドルを得た。養子を迎えて充実した生活を送りたいという夢は台無しにされた)です。Sheelah Kolhatkarによる記事です。彼女はスタッフライターで、取材対象はかなり広範囲で何でも詳しいという感じです。
さて、この記事はアメリカで起きた養子縁組斡旋に絡んだ詐欺のことを実録として報じたものです。酷い斡旋業者がいて、斡旋の報酬欲しさにやりたい放題をしていました。悪事を列挙します。赤ちゃんを養子に出す妊婦の出産費用等の名目で養親になる者からお金を受け取っていたのに妊婦に渡さず懐に入れていた。架空の妊婦が居ることにして養子もらいたがっている者に養子縁組の仲介をして前受金を受け取り、流産したとか死産したとか妊婦が翻意したとかいって養子縁組を不成立とするも受取済みの前受金を返さず。1人の赤ちゃん(妊婦)しかいないのに複数の養子引受け希望家族に仲介を持ち掛け、前受金を受け取り、最後は流産した等で不成立も前受金を返さず。等々でした。
この記事では、被害にあった養子引き受けを希望するゲイカップルのことが中心に書かれています。米国では教会等も養子縁組の斡旋をしていますが(信者を増やすことになるし、中絶を防ぐことが出来る)、教会は同性のカップルへの養子縁組の斡旋はしていないのです。それで取材対象となったゲイカップルは、藁をもすがる気持ちで同性カップルにも斡旋してくれる業者を探し、詐欺的な行為をしている業者に斡旋を依頼してしまったのです。
さて、米国では養子を受け入れたいという家族は非常に多いのですが、一方で養子となる可能性のある赤ちゃんは比較的少ないのです。養親になりたい家族と養子になる可能性の赤ちゃんの比率は10:1くらいです。赤ちゃんが絡んでいるのに経済学的にたとえるのは憚られますがお許しいただきたいのですが、需要に対して供給が圧倒的に不足している状態です。ですので、養親になりたい家族は斡旋業者の言うままにお金を払ってしまうことが多いのです。そうしないと養子を迎え入れられないような気がするからです。日本でも養子縁組斡旋業者に問題があったというニュースがありました。やはり、供給が需要に対して圧倒的に少なく、しかも秘密裏に行われることも多く(未だに未婚の母親は罪であるという風潮がアメリカでも日本でも残っている)、多額のお金が絡むと不正が誘発されてしまうのでしょう。赤ちゃんの幸せが最優先されるべきですので、法規制等で斡旋が健全に行われるようになることを祈るしかありません。
では、以下に和訳全文を掲載します。