3.新型コロナでパラダイムが変わった。自分の身は自分の身で守らなければならない。
検査キットが不足する中、ファウチ博士はさまざまな発言をしていました。クリスマス直前に、ファウチ博士が「状況によっては隔離期間を短縮すべきかもしれない」と発言した際には、大きな混乱が起こりました。一昔前であれば、誰とも詰めていない独りよがりな発言をしても、メディアを通じて内部の人間にそれが伝わって、内部の人間もそれに対応して動いたかもしれません。しかし、今は、誰もそんなことでは動きません。学校はもうすぐ休みが終わりるので対応が必要になります。また、感染者は急増し続けています。その上、方針がコロコロ変わるようでは、現場は大混乱必至で、検査や隔離の方法はどうなるんだろうかという不安が渦巻いていることでしょう。1月4日、プサキ報道官はそうした混乱状況について質問されました。彼女は言いました、「混乱は避けられないことです。データと科学的知見に基いて行動していますが、未知なことが多いゆえに致し方ないことなのです。その発言は混乱を批判するマスコミへの言い訳のように聞こえました。しかし、あながち間違っているわけではありません。
ハーバード大学の疫学者であるウィリアム・ハネージは私に言いました、「バイデン政権の取り組みは決して悪くないのです。しかし、バイデン政権が発しているメッセージには、しばしば矛盾が見られます。先日には、既にご存知だと思いますが、バイデン大統領が全国民に家庭用迅速検査キットを送ると言及した直後に、プサキ報道官がそれを否定し、ホームページで要請した者のみに送ると言及し、矛盾が見られました。時には、メッセージそのものに問題があることもあります。ファウチ博士が、オミクロン株の影響は比較的小さいのではないかと発言したことがありますが、その発言は非常に問題があると思います。なぜ問題かと言うと、そのような発言するには十分なデータも出揃っておらず時期尚早です。また、たとえ感染しても重症化しないとしても、より早く人々に伝染することが分かっており、医療機関を逼迫させる可能性もあるのです。」と。
オミクロン株との戦いの中でバイデン政権が行ってきたことを見ると、ある意味で重要なことが見えてきます。前FDA(米国食品医薬品局)長官のスコット・ゴットリーブは、私に言いました、「本当は、社会全体で感染拡大防止策に取り組まなければならない事態なのです。しかし、そんな気配は全くありません。誰も会社や学校を積極的に閉鎖しようともしていません。現在の状況は、個々人がリスクの軽減に取り組むことを強いられ、その結果として社会全体のリスクが軽減されるという形になっています。新型コロナ禍にある現状では、これは致し方ないことで理のあることだと思います。」と。
ゴットリーブが指摘しているのですが、問題は、バイデン政権がそうした考え方に少し否定的なところがあったため、個々人や企業や組織が何をすべきなのかということが少し曖昧になってしまったことです。ゴットリーブは言いました、「公衆衛生当局は、このことを分かりやすく説明して、大々的に宣伝する必要があるのです。『政府は、ロックアウトのような全体を守るような対策を行うつもりはありません。ご自身や家族やコミュニティの安全を守るのは、あなたです。みんなを守るための行動を取って下さい。みんながあなたを頼りにしています。』と、声を大にして言うべきなのです。しかし、これまでのところ、バイデン政権はそれが出来ていません。ですので、多くの国民が新しくパラダイムが変わったことに気付いていないのではないでしょうか。」と。
バイデン政権がパラダイムが変わったことを明確に宣言しなかったか理由が何であるかを私はゴッドリーブに尋ねてみました。ゴットリーブは、理由は分からないが、完全にパラダイムが変わったと宣言するには時期尚早だと感じたのかもしれないと推測していました。彼は言いました、「もしかしたら、元のパラダイムに戻して社会全体を守るべくロックダウンする等の手段を選択肢として残しておきたいから、新たなパラダイムに変わったことを宣言したくなかったのかもしれません。」と。
以上