How to Prevent Gun Massacres? Look Around the World
銃乱射事件を防ぐ方策は無いのか?米国以外の銃規制の状況は?
Australia, Britain, Canada, and other countries have enacted reforms that turned mass shootings into rare, aberrational events rather than everyday occurrences.
オーストラリア、英国、カナダ、およびその他の国々では、銃規制強化によって、銃乱射事件を日常の出来事ではなく、非常に稀な出来事に変えることができています。
By John Cassidy May 26, 2022
1996年4月28日、学生時代に虐められた経験があり精神に異常をきたしていた28歳のオーストラリア人マーティン・ブライアントは、タスマニア州のかつて流刑植民地があった地区で現在は囚人遺跡群の1つとしてユネスコの世界遺産に登録されているポート・アーサーにあったカフェに入りました。彼は、ダッフルバッグからコルトAR-15ライフルを取り出して、おもむろに射撃を始めました。彼は、そのカフェと隣接するギフトショップで20人以上を殺害しました。さらに、銃に弾を再装填してから敷地内を歩き回って無差別に銃を乱射しました。その後、彼はカージャックをして、運転していた者を人質として連れ去りました。彼は、逮捕されるまでに35人を殺害し、23人に傷を負わせました。
オーストラリアは、米国と同様ですが、英連邦の一員で、かつてはイギリスの植民地でした。古くから無骨で個人主義的な国として知られています。狩猟や射撃がとても盛んです。しかし、米国と違って、オーストラリアには民衆の意見が反映される政治体制が整っています。オーストラリアの国会では、制度上、米国のように少数派の議員が特定の法案の成立を阻止させることを目的としてフィリバスター(議事妨害)をすることが許されていません。オーストラリア史上最悪の事件となったポート・アーサー事件からたったの2週間で、オーストラリア連邦政府は、全州でセミオートマティックとポンプアクションの銃器の使用を禁止しました。連邦政府は、同時に他にもいくつかの対策を実施しました。使用禁止となった銃器の所有者からそれを買い取る制度も導入しましたし、銃の所有者の登録情報の一元化も進めました。また、新法に関する啓蒙活動を大々的に行いました。
オーストラリアでポート・アーサーの乱射事件に関連してさまざまな変革が行われてから26年が経ちました。オーストラリアの人口は約2,700万人ですが、個人所有の銃の数はまだかなり多く、2020年時点で推定350万丁です。しかし、大量射殺事件、銃によって4人以上が殺害された事件の件数は、急激に減少しています。ポート・アーサー事件以前の10年間には、その件数は11件でした。それが、ポート・アーサー事件後の25年間では、3件しか発生していません。その中で最も凶悪な事件は、西オーストラリア州の農夫が自分の家族6人を殺害したものでした。
オーストラリアにも、米国と同様ですが銃規制に反対する強力なロビー団体が存在しています。1996年までは、ロビー活動が奏功し、銃規制強化の取り組みは幾度となく頓挫していました。当時、首相であったジョン・ハワード(自由党)がポンプアクション等の銃の使用を禁止しようとしたのですが、狩猟愛好家や銃の所有者の反抗は激しく、ハワード首相は彼らと議論する際に防弾チョッキを着たほどでした。しかし、大多数のオーストラリア人は、ハワードを支持しました。昨年、ハワードは当時のことを回想して、オーストラリア放送協会に述べていました、「ポート・アーサー事件が起きて、すべてのオーストラリア人は悲しみと恐怖を共有しました。それで、しなければならないことに一致団結して取り組むことができたのです。銃規制には、非常に強力な支持がありました。目標は、オートマチックやセミオートマチックの銃の所持を禁止することでしたが、それを実現することができました。この国はより安全な場所になったのです。」と。
私は、オーストラリアの事例を見て思ったことがあります。それは、健全な民主主義は、どんなに強力なロビー活動が繰り広げられても、それに屈せずに明らかに国の利益になる合理的な政策を導入することができるということです。オーストラリアの成功事例と比べると、米国の政治は異常であることがよく分かります。民意が全く反映されません。学童が被害者となる陰惨で忌まわしい銃乱射事件が起こり、誰もが悲嘆に暮れている中でも、銃規制が強化される気配は全くありません。
衝動的に教育施設に集まっている学童や若者を射殺する事件は、米国以外でも起こっています。イギリスでは、1996年3月13日に43歳の元ボーイスカウト指導者のトーマス・ハミルトンが、合法的に所有していた4丁の拳銃を持ってスコットランド南部のダンブレーン小学校に押し入りました。彼は16人の生徒と教師1人を射殺しました。カナダでは、1989年12月6日にモントリオールのエコール・ポリテクニーク(理工科学校)で、女性を蔑視していた25歳の男マーク・レピーヌがスターム・ルガー社製のセミオートマチック・ライフルのミニ14(Ruger Mini-14)1丁で14人の女性(学生と職員)を射殺しました。この2つの事件の残虐さと残忍さは、米国で起きた事件(テキサス州ユバルディの小学校で起きた銃乱射事件)に匹敵します。しかし、いずれの事件でも米国と違う点があります。それは、事件後にイギリスとカナダの政府は正しい対応を行ったという点です。
米国に比べれば、英国には元から厳しい銃規制法が存在していたのですが、スコットランドでの銃乱射事件後、さらにその規制を強化しました。保守党のジョン・メージャー政権は1年以内に、22口径のピストルを除くすべての銃火器を禁止しました。その後、トニー・ブレア率いる労働党が政権を奪回しましたが、厳しい銃規制は継続されました。モントリオールで起きた虐殺事件に対するカナダの立法措置は、英国ほど迅速ではなく、大がかりでもありませんでした。しかし、最終的には、銃の購入に28日間の待機期間が設けられることとなり、身元確認の厳格化が為され、全国統一登録制度が導入され、オートマチックの銃火器に大型弾倉を装着することを禁止するなどの措置がとられました。近年、カナダ政府は銃規制をさらに強化しています。2020年に51歳の歯科技工士ガブリエル・ワートマンがノバスコシア州でミニ14で22人を射殺するという事件が発生したことを受けて、ジャスティン・トルドー首相はAR-15やミニ14を含む殺傷能力の高い1500種類の銃火器の使用を禁止すると発表し、即時発効しました。
米国の銃愛好家の多くは、イスラエルは銃の所持に関して比較的寛容な国であるとしばしば言います。しかし、米国と比べれば、イスラエルははるかに厳しい銃規制法が存在しています。イスラエルで銃を買うには、所持免許が必要になります。所持免許を取得するためには、最低年齢制限(兵役や国家公務員の経験がない人は27歳)を満たすこと、銃取扱安全技能テストに合格すること、心身ともに健康であるという医師の証明書を取得することなどが必須です。イスラエルでは多くの所持免許申請者の申請が却下されています。また、申請が許可されても、ほとんどの人が取得できるのは拳銃1丁と銃弾50発までです。テキサス州ウバルデで銃を乱射したサルバドール・ラモスは、18歳の誕生日のわずか数日後にAR-15ライフル2丁と375発の銃弾を合法的に購入していました。
それらの事実から明確に導き出される結論は、米国も銃規制をもっと強化すべきであるということです。他の国でも銃乱射事件が完全に無くなったわけではありません。しかし、銃乱射事件の発生件数を減らすべく銃規制を強化した国々では、米国では日常茶飯事のようになってしまった銃乱射事件がまれで異常な出来事になりつつあります。米国以外の国々に住む人のほとんどは、米国で銃が野放しにされている状況は異常だと感じているでしょう。諸外国の例を見れば、米国も銃規制を強化すべきなのです。冷静に分析すると、米国で本当に問題なのは銃乱射事件が多いということではないのです。それよりも、銃規制の強化が為されないことが問題なのです。世論を反映して銃規制強化をしようとしても、議事妨害(フィリバスター)等の手段によって現状の固定化ができてしまうことが問題なのです。問題のある政治制度を変えない限り、何も変わらないでしょう。
以上
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