2016 and 2024
(2016年と2024年)
We will be a fundamentally different country by the end of the next Administration. Indeed, we already are.
次期トランプ政権が終わる頃には、アメリカは根本的に別の国になっているだろう。実際、すでに以前とはまったく異なった国になっている。
By Jelani Cobb November 7, 2024
8 年前の大統領選の夜、取材していたノースカロライナ州の結果が届いた。私は慌てて友人に電話をかけた。私は彼に不安を伝えた。この国が半ファシスト( demi-fascist )の手に落ちていく恐怖を感じた。国外脱出計画を検討する時期なのかもしれない。私の世代の多くの黒人と同様、私の人生は 1950年代と60年代に人種隔離を根絶しようとした戦いの成功によって形作られている。そこは、人種隔離の残酷さによって形作られた両親の世代の人生とは異なっている。1 人の大統領候補が、白人至上主義者だけでなく、二大政党の 1 つの支持者と有権者のほぼ半数に支持されるかもしれないという見通しは、人類が成し遂げた進歩は脆弱で永続的ではないということを知らしめるものであった。きっかけがあれば、古い秩序が現代に復活する可能性があるという恐怖を感じた。
しかし、長くなった電話を切るころには、私たちの恐怖心は少し下火になっていた。ドナルド・トランプが何の束縛を受けないわけではないし、さまざまなチェック機能や制約があることに思い至ったからである。連邦政府の広大な官僚機構の利点は、何か重要なことを成し遂げるにはオーケストラの指揮者のような卓越した統率力が必要だということである。気まぐれで向学心の無い不動産開発業者にはおそらく備わっていないスキルである。共和党執行部は、臆病で旧来よりは短絡的になっているが、全体としては、間もなく指導者となる者よりも健全である。トランプの衝動を抑制し、少なくとも、彼が破壊的な目標に集中して取り組まないないようにするために、気を散らすものを彼の前にちらつかせるだろう。報道機関と司法制度は民主主義の砦であり、彼の暴走を許さないだろう。それらはそのために設計され存在している。
私たちのような会話が、2016 年の大統領選後の衝撃的な結果が出てから数日から数週間、アメリカ中で交わされた。その時の会話と火曜日( 11 月 5 日)の夜に始まった会話の違いは、もはやガードレール理論( guardrails theory:トランプが道を踏む外しそうになっても、共和党幹部がそれを思いとどまらせるという考え方)に頼ることができないということである。トランプの最初の選挙の時とは異なり、今回の選挙結果を、民主党の自信過剰、スイング・ステート 7 州の 10 万人の有権者の気まぐれな投票行動の産物として捉えるのは誤りである。今回、その 7 州全てで有権者はトランプを選択した。彼は独裁的( autocratic )で好戦的( belligerent )な性格を強め、今や公職に就くにはまったく不適格な人物である。にもかかわらず、人気投票で勝利している。彼は年を追うごとに狂気を増し、今や信任を得た狂人となっている。彼と私たちの前に広がる将来の風景を思い浮かべると背筋が凍る思いがする。
報道メディアは、その本質的な責任を果たすことにかつてないほど熱心であるが、財政難、信頼の低下、破壊的な新技術によって、その機能が損なわれている。さらに不吉なことに、ワシントン・ポスト紙( Washington Post )とロサンゼルス・タイムズ紙( Los Angeles Times )の億万長者のオーナーが、予定されていた大統領支持の取り消しを決定したことは、ジャーナリストがこれらの報道機関内でさえ複雑な障害に直面する可能性があることを示唆している。2016 年とは異なり、連邦司法は現在、あからさまに政治化された方法で選出された、200 人以上のトランプに任命された者で占められている。そして、共和党の有力者たちの自制心は、とうの昔に消え去っている。2 期目のトランプ政権では、行政府はトランプの最悪かつ最も行き当たりばったりの欲求に同調する信奉者たちで占められることになるだろう。カマラ・ハリス陣営が、反トランプの共和党員にアピールするために多額の資金を投じてリズ・チェイニー( Liz Cheney )の支持をアピールしようとしたのは、共和党上層部が完全に失われたわけではなく、少なくとも党内の有意義な少数派はトランプが象徴する危険性を認識し、理解している、という楽観的な考え方の産物であった。その考えは間違っていた。
他にも懸念がある。トランプは前回の大統領選で敗北して以降、クーデター未遂を起こし、4 件の刑事事件で被告となり、(これまでに)罪状 34 件で有罪となっている。この数カ月間、彼は以前にも増して誤った情報や人種差別的な嘘を広め、みだらな発言や身振りをし、攻撃的で卑猥な言葉を吐いている。これらの行為が彼の人気が拡大するのを妨ぐことはなかった。驚くべきことに、むしろ逆であった可能性もある。驚くべきことに、彼のニューヨーク市での支持率は 2020 年よりも上がっている。民主党が直面している問題は、巨大で本質的なものである。2008 年のバラク・オバマの当選後、民主党執行部で選挙の分析に携わった者たちは、前向きで平等主義的で、従来共和党支持であったが民主党の主張に共感する選挙民が増えているという仮説を立てた。2016 年と 2024 年の壊滅的な敗北は、この理想主義的な仮説に疑問を投げかけるものであった。オバマの成功が実際には単なるまぐれであることが浮き彫りになった。ヒラリー・クリントン( Hillary Clinton )もハリスも大統領にふさわしい資質を備えていた。しかし、どちらも完璧な選挙戦を展開したわけではない。選挙戦の戦略に問題があったことは確かであるが、敗因の一部は大統領候補のアイデンティティにあったことは間違いない。
今回の大統領選の結果は、過去の重要な瞬間にも新たなスポットライトを当てた。前回の大統領選終了時、トランプは選挙結果の認定を阻止するために連邦議会への攻撃を扇動し、それが 2 度目の弾劾につながった。トランプ支持者の暴徒が押し寄せた際に議事堂から安全に避難した上院共和党議員団は、トランプの有罪判決を下すことを拒否した。何とも臆病な行為で、責任放棄も甚だしい行為で、破滅的な行為であった。これがトランプ再選可能につながった。こんなことは決して起こるべきではなかった。
次期トランプ政権が終わる頃には、アメリカは根本的に別の国になっているだろう。実際、すでに以前とはまったく異なった国になってしまっている。ハリス副大統領は水曜日( 11 月 6 日)にハワード大学( Howard University )で演説し敗北を認めた。「暗黒時代に突入したように感じている人が多いのは承知しているが、アメリカ国民全員のために、そうならないことを願っている 」と彼女は述べた。ドナルド・トランプについて我々がすでに知っていることを考えれば、暗黒の時代になることは避けられそうにない。大統領選の翌朝、私は 1896 年の最高裁の「プレッシー対ファーガソン裁判( Plessy v. Ferguson )」を思い出して目が覚めた。「分離すれど平等」の主義のもと公共施設での白人専用等の黒人分離は人種差別に当たらないとし、これを合憲とした。以降、南部諸州で人種分離法が制定され、現実的に人種差別が固定、助長された。この歴史から得られる困難な教訓は、さらなる進歩は可能であるが、それを達成するのがどれだけ困難であるか、どれほど時間がかかるかを過小評価すべきではないということである。アメリカは人種差別の暗い歴史と決別したと信じていたが、実際には歴史が巻き戻って再び暗い時代に足をかけている。♦
以上
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