It Could All Depend on Arizona
すべてはアリゾナ州次第
One of the country’s most idiosyncratic electorates could determine control of the Presidency and the Senate.
この国で最も特異な州の選挙結果が大統領と上院の支配権を決定する可能性がある。
By Rachel Monroe October 4, 2024
1.前回に続いてアリゾナ州は激戦州である
フェニックスでは気温が華氏 100 度(摂氏 37.8 度)を超える日が 111 日連続で続いた。現地では天候について「ちょっと暑い」という者もいたが、「とてもすごし易い」とか「それほど暑くはない」という者も少なくなかった。そんな中、ロバート・F・ケネディ・ジュニア( Robert F. Kennedy, JR. )とトゥルシ・ガバード( Tulsi Gabbard )の 2 人が、グレンデール( Glendale )のアリゾナ・クリスチャン大学でドナルド・トランプのためにステージに立つことになった。2 人が揃ってステージに立つのは初めてのことである。イベント開始 1 時間前には、長い入場待機列ができていた。ギターをかき鳴らし、チップをもらうための箱を置いたワクチン反対活動家が 1 人いた。その横を通り過ぎて、列は数ブロックも伸びていた。物品を販売する出店がいくつもあった。商魂たくましい。トランプ暗殺未遂事件をモチーフにした品々がいろいろと売られていた。「ファック・ジョー・バイデン( Fuck Joe Biden )」とプリントされた旗を掲げた出店は、耳から血を流し拳を突き上げる元大統領の写真をプリントした T シャツを売っていた。写真の下には「しくじったな、間抜け( You Missed Me Bitch )」という文字が踊っていた。「アメリカを再び敬虔な国に( Make America Godly Again )」と書かれた T シャツも売られていた。1 人の男がゴルフカートに乗って人々を追い払っていた。「満員、満員、もう入れませんよ」と言って、彼はピンクの T シャツを着た女性を追い払っていた。女の胸には「トランプ挺身婦人会( Women for Trump )」との文言がプリントされていた。
会場となった体育館は満員盛況だった。空調を最大出力で稼働させていたが、人の多さで少し心もとなかった。それでも、集まった聴衆は元気いっぱいだった。彼らは、2 人の元民主党議員(ケネディとガバード)が共和党の大統領候補を支持するのを見たがっていた。「一票一票がこの州を、ひいてはこの国を変える」とガバードは訴えた。「これはこれまでで最も重要な選挙である」。
アリゾナではどこの交差点も選挙看板でごった返している。これなら選挙があることを忘れる者は 1 人もいないだろう。気温が暑いことで有名であるが、選挙戦もk負けず劣らず熱い。アリゾナに住んでいる者の多くはそんなことは気にしていないが、アリゾナ州は大統領選の最激戦州 7 州の内の 1 つである。また、上院議員選挙もあり、その結果は議会の支配権を左右しそうである。同時に中絶と移民に関する注目の住民投票も行われる。民主党は数十年ぶりに州議会の支配権を勝ち取るチャンスもある。「私たちは中絶を禁止する州法と戦っているが、有権者が投票を忌避する可能性を減らそうと努力している。何と言ったって投票用紙が 4 ページもあるわけで、有権者は見ただけで嫌になってしまう」と、クリス・ラブ( Chris Love )は言う。彼は超党派団体「中絶の権利を守る会アリゾナ( Arizona for Abortion Access )」の広報責任者である。
アリゾナ州の有権者の投票行動を予測するのは困難である。2015 年夏にトランプは最初の大規模集会の会場として同州のフェニックス・コンベンション・センター( Phoenix Convention Center )を選んだ。当時、アリゾナは強固なレッドステート( red state:共和党支持が優勢な州)と考えられていた。実際、同州の選挙人票(現在 11 票)は、60 年以上にわたってほぼすべての選挙で共和党が獲得していた。「 1985 年に私は初めてここに引っ越してきた。当時、選挙でジョン・マケイン( John McCain:共和党の重鎮)のスタッフとして働いたことがあったが、名前の横に 「共和党支持( Republican ) 」と書くだけでよかった」と、元共和党のストラテジスト、チャック・コフリン( Chuck Coughlin )は私に言った。
トランプの選択は正しかった。MAGA( Make America Great Again )の主張は、ここで確固たる地盤を築いた。たとえ人種差別的なポピュリズムやカメラを独占する権威主義をあからさまにする人物であっても、あるいはだからこそ、アリゾナ州民の多くは破天荒な異端者を好む。しかし、トランプが台頭した結果、共和党の長老議員の多くは、政界から引退したり、 MAGA 系の若手に議席を奪われた。その結果、共和党議員でトランプを応援しない者も増えてしまった。また、同州経済は急成長し、都市化が著しく進み、ハイテク企業が集積し、ラテン系人口が急増している。トランプが大統領に就任して以降、同州の有権者は民主党の知事候補を選んでいる。州長官も司法長官も民主党の候補が選出された。2 度の上院補選でもいずれも民主党候補が選出された。補選で選出された 1 人、キルステン・シネマ( Kyrsten Sinema )は離党して無所属となり、再選を目指さないことを選択した。
「今や状況は一変した」とコフリンは言う。「2016 年とは全く変わってしまった」。各種調査によれば、大統領選ではトランプが優勢で、シネマの後任は民主党のルーベン・ガレゴ( Ruben Gallego )候補が共和党のカリ・レイク( Kari Lake )候補をリードしているとされる。また、有権者は中絶禁止反対と移民排斥の両法案を承認する可能性が高そうである。アリゾナ州に 1 週間いたが、トランプ支持を明確に示すシャツを着た女性を見たし、反トランプのシャツを着た女性も見かけた。